日本ヒューレット・パッカード株式会社(以下、日本HP)と株式会社エヌ・ティ・ティ ファシリティーズ(以下、NTTファシリティーズ)は、ブレードなどの高集積サーバーによる大規模システム導入と、電源・空調システムなどのファシリティ構築をあわせたサーバーシステム環境構築トータルソリューション事業で提携し、コンサルティングから設計、施行、保守、運用までのワンストップサービスを8月27日より共同で提供する。
今回両社では、日本HPの「HP Proliant BL40p/BL30p/BL20p Generation 2」などのブレードサーバーを中心にしたサーバー統合のシステム構築ソリューションをはじめとしたサービスの提供のほか、共同マーケティングやプロモーションの展開、米HP本社も含めた両社技術者間での連携強化、専用共同コールセンター開設などの具体的な施策を行っていく。
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日本ヒューレット・パッカード株式会社 常務執行役員 テクノロジーソリューション事業統括 石積尚幸氏
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日本ヒューレット・パッカード株式会社 テクノロジーソリューション事業統括 常務執行役員の石積尚幸氏は、「80年代以降のオープンシステム化は、サーバー台数の増加で結局は運用コスト減にはつながらなかった」とし、現在TCO削減のニーズに対しては、サーバーコンソリデーションのアプローチを提供しているとした。そして次のステップとして、「統合サーバーを仮想化して複数のOSを運用できる環境を思い描いている」とした。
また大手企業のデータセンターなどでは対策済みの場合も多いが、「急激に業績の伸びた中小企業などで、ビルの建設や電力といったシステムの下のレイヤーであるファシリティに対するニーズが広がりはじめている」とし、「こうした顧客にもトータルサポートを提供したい」とした。
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株式会社NTTファシリティーズ 常務取締役 池辺裕昭氏
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NTTファシリティーズでは、電源・空調・建物のインフラを総称したファシリティの事業を、これまでおもに通信分野に提供していた。株式会社NTTファシリティーズ 常務取締役の池辺裕昭氏は「CPUの能力向上に伴い、CPUあたりの消費電力と発熱量は増大している」のが現状とし、「ITの分野でも、ファシリティの信頼性とコスト最適化が図られるべき」とした。
そしてビル設計などの耐震、空調や設置による発熱対策のほか、雷などのノイズや停電対策、防火・防水といったファシリティでの各項目について「これまでのノウハウを生かして、専門家の目から信頼性を体系的な評価・検討することが重要」とした。また「より高集積なブレードサーバーの出現で、DC Powerのメリットがクローズアップされる」との考えを示した。
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日本ヒューレット・パッカード株式会社 エンタープライズストレージ・サーバ統括本部 プロダクトマーケティング部 部長 正田三四郎氏
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日本ヒューレット・パッカード株式会社 エンタープライズストレージ・サーバ統括本部 プロダクトマーケティング部 部長 正田三四郎氏は、CPUあたりの発熱量について「2000年からは約5倍と、性能向上に伴って消費電力も同じかそれ以上の上昇がある」とした。また「タワー、ラック、ブレードといったサーバーの形状につれて、よりCPU数も増加するなど高密度化されている」点を挙げた。1ラックあたりの比較では、2001年のラックマウントサーバーと比べ、CPU数で84に対して最新のブレードサーバーを搭載したラックでは160に増加、また総消費電力は8,316Wに対して40Aの一般家庭7軒分となる28,479Wに、また発熱量でも7,155Kcal/hから、6~8畳用の石油ストーブ10台分に匹敵する24,510Kcal/hと、ともに約3倍になっているという。重量面でも、610kgから890kgへ約45%増加しており「高集積することでさらに問題が顕在化しやすくなっているのが現状」とした。
こうしたファシリティ面の問題は見落としやすく、「電力設備コストの予算オーバー、空調コンサルを行わなかったために能力不足で温度が下がらない、また床の荷重が足りないなどの問題が、導入寸前に判明するケースもままある」という。これに伴うサービスの遅れはビジネス面にも影響を及ぼしかねない。両社ではこれまで個別提供されていたサーバー、空調、電源設備などをワンストップで提供することで、こうしたニーズに応えたい考え。
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Pentium III 800MHz搭載の2001年のラックマウントサーバーと、最新のブレードサーバーとの比較
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CPUの消費電力は2000年から現在までに約5倍へと上昇している。
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株式会社NTTファシリティーズ エネルギー事業本部 副本部長 中村公雄氏
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株式会社NTTファシリティーズ エネルギー事業本部 副本部長の中村公雄氏は、「電力供給、冷却、荷重の3つがファシリティ面での現実的な課題となる」とした。通常の電源供給では、AC/DC変換がラック内の各電源装置に分散し、UPSを導入する場合には4回も切り替えが行われる。そしてこのたびに電力損失と発熱が発生しているという。同社では交流で供給される電力を一元的に直流変換する「DC Power」システムを提供しており、「これを用いることで、電力を約23%節約できる」という。これによりコストの削減のほか、環境面への配慮にもなるとした。
また空調面でのメリットにもつながり、スペースも節約できる。空調設備では「部屋全体より部分的熱溜まりの処理が課題になる場合が多い」とし、同社ではこれまでのノウハウを用い、サーバーなどの機器配置の検討から、これにあった形で空調設備を設計することで、効率を最適化するという。
UPSについては、「短時間に大量の電気を供給する新たな鉛蓄電池を開発し、コストを削減する」とした。このほか3つの広域監視センターと、全国180カ所のサービスセンターによる監視サービスも提供する。
同社では、ファシリティ関連の潜在リスクを定量的に評価し、上記の施策などを用いて、1)電源空調システムコンサルティング・構築サービス、2)耐震診断・対策サービス、3)雷害・EMC対策サービス、4)セキュリティシステム診断・構築サービス、5)保守・監視サービスの5つのメニューにより設備の改善提案やリニューアルを含めたサービスを日本HPと共同でワンストップ提供する。
なお両社では、日本HPのブレードサーバー「HP Proliant BL40p/BL30p/BL20p Generation 2」の導入を検討するユーザーに、建物、設備などのファシリティに関する簡易リスク診断サービスを10月末まで無償提供するとのことだ。
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AC/DC変換を一元化することで、約23%の節電とここのサーバーからの電源システム削減による発熱減が可能となる
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NTTファシリティが提供するコンサルティングサービスの評価シート例
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■ URL
日本ヒューレット・パッカード株式会社
http://www.hp.com/jp/
株式会社エヌ・ティ・ティ ファシリティーズ
http://www.ntt-f.co.jp/
ニュースリリース(日本HP)
http://www1.jpn.hp.com/info/newsroom/pr/fy2004/fy04-161.html
ニュースリリース(NTTファシリティーズ)
http://www.ntt-f.co.jp/news/h16-0826/index.html
( 岩崎 宰守 )
2004/08/26 19:02
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