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デル株式会社 北アジア地域CIO 山田祐治氏
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デルのビジネス概況
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デル株式会社北アジア地域CIOの山田祐治氏は、9月3日に都内で行われたプライベートカンファレンス「“Enterprise” Dell Days」の基調講演の中で、企業においてIT部門が経営戦略と深く結びつくべきとする考えを、自社の成功例と失敗例を交えながら示した。
Dellのワールドワイドにおける社員数は全世界で5万人を超え、2003年の売上高は4兆6000億円に達するなど創業から20年で世界でも屈指の大企業となっている。同社の強みとしては世界7カ所に生産拠点を置き、顧客から受注後部品を2時間ごとにサプライヤーから調達し4時間以内の工程で製品を完成させて出荷をするという確立されたサプライチェーンにより、完成品や部品の在庫を持たないことが有名だ。
さらにセキュリティやコンプライアンスなど全社員共通・必修のeラーニングプログラムや、マイケル・デル会長やケビン・ローリンズCEOらによる会社方針や戦略、目的などのメッセージングをビデオストリーミングによって全社員に配信するなど、すべての社員の意識向上に並々ならぬ力を入れている。「社員全員が同じレベルの意識を持たないと企業の健全性は維持できない」(山田氏)。
このように徹底したヒトとモノの管理によって成長を続ける同社だが、「2000年ごろは失敗を重ねていた」と山田氏は明かす。2000年より数年前からDellは米国から日本や欧州などに展開を開始し各地域に拠点を構えたのだが、各地で縦割りの組織と独自のシステムが確立した。その結果、地域ごとに似たような業務アプリケーションが違ったプラットフォームで構築されデータの整合性がとれなくなり、「経営層が全社の情報をタイムリーに得ることができなかった」という。さらに、各地域のIT部門も連携できず「言われたことだけをこなす」非効率な業務を続け「全社員の1/10をIT部門が占めるまで肥大化した」という。山田氏は「現在でも日本にはこのような状況の企業が見受けられる」と指摘する。
そんな中マイケル・デル会長は「No.1になるには全世界で同じ製品・同じ品質・同じサービスレベルを提供できる真のグローバル企業を目指す必要がある」とし、各地域の業務の標準化を推進。IT部門は、全世界でアーキテクチャやフレームワークなどを共通化するビジョン“=1”をかかげ、グローバル化に向けた経営戦略とIT戦略を結びつけワールドワイドでITの標準化、合理化を進めることになった。
また、2001年から5年間で“アプリケーションのITリソースの75%を新規開発に充てる”“アプリケーション開発のサイクルを9カ月以内とする”など無駄を省く目標をグローバルで開始。さらに各プロジェクトに対し目標期間やコスト、売上などに対する監査を実施するなど、投資に対する回収の明確化を徹底しているという。「経営戦略を理解し、ビジネスに貢献してこそIT部門としての意義がある」と山田氏は強調する。
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ITチームビジョン“=1”
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IT部門の2001年から5年間の目標
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同社は「売上の50%を占める」というインターネットを通じたBTO生産“デルモデル”が以前より有名だが、同社が進めるインテルアーキテクチャへの標準化戦略と同様に、IT部門をはじめとした全社員への意識の共通化とグローバル展開への注力が、成長の継続と各国でシェア上位を獲得する原動力となっている。
■ URL
デル株式会社
http://www.dell.com/jp/
( 朝夷 剛士 )
2004/09/03 18:20
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