9月16日、東京コンファレンスセンター品川においてIDG Japanが主催した「Japan IT Infrastructure Vision 2004」において、「Windows Server Systemが導くITインフラストラクチャの進化」と題し、マイクロソフト株式会社 サーバープラットフォームビジネス本部 Windows Server製品部 部長 高沢冬樹氏が講演した。
■ 共通のエンジニアリング要件で統合されたWindows Server System
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マイクロソフト株式会社 サーバープラットフォームビジネス本部 Windows Server製品部 部長 高沢冬樹氏
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米Microsoftより9月13日に「30日以内の発売」がアナウンスされたVirtual Server 2005
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セキュリティ強化と信頼性向上で高い売上を示したWindows Server 2003
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Windows Server 2003を中心とした各種のサーバー製品群で構成されるWindows Server Systemは、「単なる呼称ではなく、共通のエンジニアリング要件に基づいた統合性の高い製品群」だという。こうした共通のサーバープラットフォームでの稼動により、アプリケーション開発基盤と、情報活用のインターフェイスを統一するとともに、運用管理のコストを削減できる
運用面では、2005年の発売が予定されているシステム管理ソリューション「Microsoft Operations Manager(MOM)2005」に利用できる、アラートの収集やメッセージ解析といったルール要件からなる「管理パック」をあらかじめサーバー製品にパッケージとして導入し、これを共通のモニタリング環境から運用できる。
また先ごろ発売開始がアナウンスされた「Virtual Server 2005」では「すべてのサーバー製品で仮想環境での稼動をサポートすることを目指す」とのことだ。これによりサーバー統合による運用コスト削減が実現する。また運用次第では、3階層モデルのWebアプリケーション開発テストを1台のサーバーで行うことも可能となる。さらに仮想環境でWindows NTを稼動することで、「よりセキュアな環境下でのNT稼動が可能となり、業務アプリケーションを移植するコストも不要になる」と、環境移行ソリューションとしてのメリットも強調した。
IT環境の複雑化を低減することを目的にしたキャッチフレーズ「Do More with Less(より少ない投資で、より大きい効果を)」を掲げて登場したWindows Server 2003は、2003年6月発売からの9カ月間で、Windows 2000 Serverと比較して2倍の売上を示している。この要因としてはセキュリティの強化と、信頼性の向上を挙げた。
セキュリティ面では、デフォルト設定の見直しにより必要なサービスのみを利用者が選択して利用可能とすることで、ネットワークから見えているアタックサーフェスを平均して60%程度削減したほか、出荷後に発見された脆弱性の数についても、Windows 2000の42、Red Hat Linux 9の84に対して13となっている。これについては「開発テスト段階で出荷を2カ月半遅らせ、コードと仕様を見直した成果」とした。信頼性の面では「ダウンタイムがWindows NTの1/8、Windows 2000の1/4に軽減した」点を取り上げた。
■ Windows Server 2003 SP1/R2の新機能
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Windows Server 2003 SP1ではVPN接続時の検疫LAN機能、x64環境のサポートなどが追加される
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Windows Server 2003 R2では検疫LAN機能の対象をLANに拡大
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続いて6~9カ月以内のリリースが予定されているWindows Server 2003 Service Pack 1での新機能について触れられた。「XP SP2の機能を統合し、サーバーで求められる追加機能を加えることで、よりセキュリティレベルが高くなる」という。具体的には、さらにアタックサーフェスを削減できるウィザードベースのツールが追加される。またインストール中のアタック保護機能も備えられる。このほか「VPNで接続するクライアントPCがセキュリティポリシーを満たさない場合に、パッチやパターンファイルをアップデートできる検疫LANに一時的に隔離する検疫ネットワーク機能を提供する」という。
Windows Server 2003 SP1にあわせ、米IntelのEM64T、米AMDのAMD64を総称した「x64」環境を正式にサポートする「Windows Server 2003 for 64-bit Extended Systems」もリリースされる。同社が行ったベンチマークでは「64ビット環境で、32ビットアプリが従来の32ビット環境と同等かそれ以上のパフォーマンスで動くことが確認できている」という。またOS自体のパフォーマンスも向上し、「Active Directoryでの対応アカウント数が拡大するほか、ターミナルサービスのサポートユーザー数も50%以上増加する」という。
さらに来年後半以降にリリースされるWindows Server 2003 R2(Release 2)では「拠点に展開するブランチサーバーの運用を効率化する」機能が追加される。これは「センターサーバーで管理するコンテンツをキャッシュして、ブランチ側でのアクセスをスムーズにする」といったものになる。またSP1ではVPN環境のみが対象となる検疫LANの機能を、LANにまで拡大するという。さらにWebブラウザとHTTPプロトコルを用い、VPNで接続することなくイントラネット内にあるファイルサーバーの共有フォルダにアクセスできる機能も追加する予定とのことだ。
2005年第1四半期に発売予定の「Microsoft SQL Server 2005」については、「Visual Studio 2005との統合により、ストアドプロシージャを.NETやC#を用いて開発可能になる点を取り上げた。また「クラスタリング、2/4ノードのクラスタリング機能と、データのミラーリングによる数秒以内のフェイルオーバーにより、「ユーザーレベルで見れば事実上止まらないサービス提供が可能になる」とした。
■ 開発段階から運用を考慮するシステム運用管理構想「DSI」
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システム運用管理構想「Dynamic Systems Initiative(DSI)」
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システムの運用管理を中心として、同社が掲げる構想「Dynamic Systems Initiative(DSI)」についても、その詳細の一部が語られた。高沢氏は「ITライフサイクルにおける開発から展開、利用の流れにおいて、アプリケーションの開発者、IT運用管理の担当者、そしてエンドユーザーの3者間での共通言語がない」点を問題とし、「ユーザーの期待するサービスレベルや仕様が開発に伝わらず、また運用環境が開発の想定する要件を満たさない場合などには、結果としてITの価値が低下してしまう」とした。
こうした問題の解決策となるのが「System Definition Model(SDM)」だという。SDMでは、「アプリケーションの設計段階で運用管理を考慮し、必要なリソースを自動的に構成でき、要求するサービスレベルを自動監視することで、運用要件までを一貫して提供できるモデルとして、開発を進めている」という。
これは開発段階で、運用での設計をSDMに埋め込むことで、情報を伝達していく仕組みといえる。この情報をサーバー構成やメモリ配置、ストレージのプロビジョニングなどインフラの配置設計に生かすことで、「アプリケーションのデザインレベルから運用を考慮し、ポリシーやサービスに沿ってリソースのアロケーションを自動的に行う」モデルとなる。
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開発、運用、ユーザー間での共通理解の欠如が、ITの価値低下を生み出す
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アプリケーションの開発段階で運用を想定して情報をSDMに埋め込む
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SDMの情報に基づいて、適切なシステムリソースへ展開できる
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DSIのロードマップ
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高沢氏は「DSIの取り組みはマイクロソフト1社では実現しない」とし、「現在多くのパートナーとデザインプレビューを進めている」とした。DSIとSDMにより運用管理を反映した情報システムのデザインが実現するのは、「Longhornが市場に投入される2007年以降の段階になる」とし、今後はDSIを実現する機能を段階的に製品群に実装していくとした。
■ URL
Japan IT Infrastructure Vision 2004
http://www.idcjapan.co.jp/Seminar/infv04spinv/
マイクロソフト株式会社
http://www.microsoft.com/japan/
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( 岩崎 宰守 )
2004/09/17 15:13
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