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年内に日本語版が発売されるマイクロソフト純正のVMソリューション「Virtual Server 2005」

~Windows Server World Conference 2004 セッション

 Windows Serverマイグレーションの可能性を検証することを目的に、株式会社IDGジャパンが9月22日に開催したイベント「Windows Server World Conference 2004」において、「NT4.0アプリケーション移行ソリューション~Virtual Server 2005~」をテーマに、マイクロソフト株式会社 プロダクトマーケティング本部 Windows Server製品部 プロダクトマネージャの井尾慎之介氏が講演した。


Virtual Server 2005のアーキテクチャ

マイクロソフト株式会社 プロダクトマーケティング本部 Windows Server製品部 プロダクトマネージャの井尾慎之介氏

ホストOSからゲストOSのイベントログやリソースを確認できる
 米Microsoftでは、顧客からのフィードバックに基づいて、ハードウェア環境をソフトウェアでエミュレートする仮想マシン(Virtual Machine、以下VM)ソリューション提供のため、2003年2月20日にConnectixから「Virtual PC for Mac」「Virtual PC for Windows」、そして「Virtual Server」の3製品を買収、VM開発チームをWindows Core OSチームに統合して開発を進めてきた。Virtual PC for Macについては2003年8月に、またVirtual PC for Windowsは2004年5月に製品として提供されている。

 サーバー環境向けのVMソリューションである「Virtual Server 2005」は、ホストOSとなるWindows Server 2003/Windows Small Business Server 2003で最大64の仮想環境を作成できるVMソリューション。4CPUまでに対応するStandard Editionと、32CPUまでのEnterprise Editionがラインアップされ、10月1日より英語版が発売される。日本語版についても年内に発売の予定となっている。日本語版の価格は未定だが、英語版はStandard Editionが499ドル、Enterprise Editionが999ドルと発表されている。

 Virtual ServerでサポートされるゲストOSは、Windows NT 4.0/2000 Server/Server 2003といったサーバーOSのみとなる。エミュレーションされるハードウェア環境はマザーボードがIntel 440BX、NICがIntel 21141、グラフィックがS3 Trio64となっており、「NT 4.0が販売されていた頃、最も使われていたハードウェアをエミュレートしており、OS自体がドライバを持っている」とのこと。ひとつの仮想環境あたり、メモリは最大で3.6GB、NICは4枚まで仮想的に構築できる。またサポートはされないものの「原理的にはx86 OSであれば動作は可能」とのことだ。またホストOSからは、VMのゲストOSを単なるひとつのファイル(.VHD)として扱えるため、障害時には容易に環境を移して稼動を継続できる。

 VMソリューションは他社からも発売されているが、「カーネル、スケジューラとのハードビートや、ユニバーサルドライバによりすべてのWindowsデバイスをサポートする点など、OS環境との高い親和性が優位点」とした。ゲストOSのCPUやメモリ利用率、イベントログについても、ホストOS標準のパフォーマンスモニタや管理ツールから閲覧できる。一方でUSBデバイスだけは仮想環境でサポートされておらず、これについては次期バージョンで対応予定とした。


環境に応じてマイクロソフトの提唱する6つの“サーバー統合”
 マイクロソフトでは6つの方法による“サーバー統合”を提唱している。Virtual Serverはこのうちのひとつとなる。大規模環境では、Windows、System Resource Manager(WSRM)を用い、ハードウェアパーティショニングとクラスタ環境を併用することで環境を統合する方がメリットがあるほか「SQL Server 2000ならマルチインスタンス機能を活用した方がパフォーマンス面で有利」とし、「VMで効率的なのは小拠点や部門でのNT 4.0環境の統合」と述べた。

 仮想マシン上でNT 4.0を稼動することにより、すでに稼働しているアプリケーションをリライトせず移行できる。またNTの稼動するサーバーは旧式であることがほとんどで、ファイルサーバーやデータベースサーバーといった例えば部署単位で存在するような複数台のサーバー環境を1台に統合することも可能になる。

 また井尾氏は「ハードウェアの購入やリースによる入れ替えのタイミングと、アプリケーションのライフサイクルが一致しないケースが多い」との例を挙げ、こうした場合でも、アプリケーションを2003ネイティブ対応にする際の変更や、ハードウェアのアップグレードをユーザーの都合に応じて自由に選択できるようになる。

 物理的なサーバー環境を仮想環境へ移行するツールとして、マイクロソフトでは「VSMT(Virtual Server Migration Toolkit)」をVirtual Server 2005の発売後にWebダウンロード提供する予定だ。これはWindows Server 2003に標準で付属する「Automated Deployment Service(ADS)」をVM用に改版したもの。IT管理者向けのためユーザーインターフェイスはコマンドラインとなるが、移行前環境のHDDをイメージとして保存し、仮想環境に展開できるツールとなっている。Microsoftでは1時間以内に環境移行できるとしているが、井尾氏がアメリカで見たデモでは「約15分ほどで移行が完了していた」そうだ。将来的には「仮想環境ではパフォーマンス不足となった環境を物理的なサーバー環境に展開できるルールも提供する予定」とのことだ。

 複数アプリケーションがNT 4.0上で稼働する物理サーバー環境では、仮想環境を用いてメモリリークを起こすアプリケーションを分離することで、システムが安定するメリットもあるという。またVirtual Server 2005では、COMのAPIをサポートしているため、管理に必要となるほとんどの作業を自動化できる。また仮想2ノード間のフェイルオーバー機能も備える点がVirtual PCとの違いともなる。

 管理面を見ると、複数の仮想環境をWebベースの管理コンソールからリモートで管理できるほか、Win32ベースのアプリケーションである「Virtual Machine Remote Control Client」からも、「ターミナルサーバーのような感覚で」仮想環境に接続できる。また「Virtual Serverと同時期にローンチする」予定となっている運用管理ソフトウェア「MOM2005」用の管理パックが製品に同梱される。MOMでは、複数のサーバー製品をひとつのコンソールで管理できる。


開発中の日本語版によるデモも行われた。仮想環境はサスペンドのような保存/復元も可能 Webコンソールから仮想環境の操作と管理が行える 「ターミナルサーバーのように」仮想環境に接続できるVirtual Machine Remote Control Client

ディスク領域の履歴を差分として別ファイルで保存できるため、パッチ適用などで活用できる

仮想環境のネットワークは3つの方法で構成できる
 CPUリソースの管理では、複数の仮想環境に対して相対的なウエイトを数として割り振ることで、最適に配分できる仕組みとなっている。また最低レベルに割り当てられた仮想環境では、リソースが枯渇しないよう自動的にワークロードを管理する機能も備えている。メモリについては割り当てる物理メモリを仮想環境ごとに絶対数で配分する仕組みで、動的な追加はできない。また割り当てたメモリ領域については、ホストOSから利用できなくなる。

 ディスク領域は、2TBまで動的に拡張することが可能なドライブタイプがデフォルト設定となっている。また事前の設定により固定した領域も割り振ることが可能で、「容量を固定するとパフォーマンスが向上する」という。さらにドライブ構成に対する差分を別ファイルとして保持するモードも用意されている。パフォーマンスは劣るものの、OS起動時には、元環境と差分適用後の環境のいずれかを選んで起動することもできるため、ロールバックも容易だ。さらに1つの環境から分岐した差分環境を2つ持つこともできる。また最終的には差分を破棄して環境を統合することも可能なため、サービスパックやパッチの検証用として威力を発揮するといえそうだ。

 仮想環境でのネットワーク接続は、1)仮想NICを物理NICにマッピングして、そのまま外部ネットワークに接続する、2)仮想DHCPサーバーとイーサーネットエミュレーションにより仮想環境同士を接続する、3)Loopbackアダプタにより仮想環境とホストOSを接続する、の3つのタイプにより構成可能となっている。こうしたネットワーク環境を組み合わせることで、「標準的な3階層モデルをはじめ、柔軟なテスト環境が構築できる」とした。



URL
  Windows Server World Conference 2004
  http://www.idg.co.jp/wswc/
  Microsoft Virtual Server 2005
  http://www.microsoft.com/japan/windowsserversystem/virtualserver/

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( 岩崎 宰守 )
2004/09/22 19:37

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