アドビシステムズ株式会社は、米国本社のAdobe Systemsが9月20日(米国時間)に行った第3四半期決算を受け、企業向けの国内事業戦略に関するプレス向け説明会を9月28日に開催した。
■ 米Adobeの第3四半期はPDF関連とCreative Suiteが好調
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米Adobe Systems アジアパシフィック地域担当バイスプレジデント 兼 アドビシステムズ株式会社 代表取締役会長 トニー・ネメルカ氏
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米Adobeの四半期売上推移
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米Adobe Systemsが発表した2004年度第3四半期(6~8月期)決算では、売上高が4億370万ドルで前年同期比27%増、営業利益が1億4030万ドルで前年同期比62%増、純利益が1億450万ドルで前年同期比59%増、1株あたり利益が0.42ドルで前年同期比62%増となった。
過去2年の四半期実績を見ると、2003年第4四半期からの拡大傾向は続いている。米Adobe Systems アジアパシフィック地域担当バイスプレジデント 兼 アドビシステムズ株式会社 代表取締役会長のトニー・ネメルカ氏は「3Qは季節要因を受けて伸び悩むことも多いが、良い実績といえる」とし、その成長の要因としてはAdobe Creative SuiteとAdobe Acrobatを挙げた。
売上を地域別に見ると、アジアは21%を占め、アメリカが48%、ヨーロッパ・中東が31%となっている。ネメルカ氏は「ヨーロッパの高い成長によりアジアの比率は下がっているが、アメリカ以外が半分以上を占める傾向は今後も続いていく」と皇帝的な見方を示した。OS別に見た場合は、Windows73%、Macが27%となっている。
製品種別で見た場合には、Actrobatやサーバー製品などのPDFを中心としたIntelligent Documentが34%で2%の増となる。このほかInDesignやIllustrator、GoLiveなどで構成されるクリエイター向けのツール「Creative Suite」を中心としたCrieitive Proは37%。Digital Imaging&Videoの24%については、「米国では発売間もないPhotoshop Elements 3.0、Premiere Elementsが売上に貢献するのは来四半期からになる」とした。
■ PDFを中心としたサーバー製品群「Adobe IDP」と「Adobe LiveCycle」
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IDPを基盤に、LiveCycleの構成コンポーネントからなる企業向けサーバー製品群のアーキテクチャ
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「なぜアドビが企業向けビジネスを手がけるのか?」米Adobeに入社して1年余りのネメルカ氏は、こうした問いを投げかけられることが多いという。以前はIBMでERPやCRMなどの企業向けビジネスを担当していたころは、自身も同様に考えていたそうだが、「入社してみて、デスクトップ向けのAcrobatを全社的に展開したいとの顧客のニーズがあることがわかった」という。
企業で重要なビジネス情報の80%は文書として保管されているとした同氏は、PDFを中心としたサーバー製品群の技術基盤であるAdobe Intelligent Document Platform(IDP)によりERP、CRM、コンテンツ管理といったバックエンドシステムとシームレスに接続し、各種のドキュメントサービスを提供する「Adobe LiveCycle」により一元的なドキュメント管理、セキュリティ管理、コラボーレーションといった機能を提供するとした。
ネメルカ氏は「紙の文書を電子化し、標準化されたプラットフォームで一元管理するだけでも、ドキュメント管理のコストが削減できる」と述べた。IDPの機能として、ほかにもPDFに入力されたデータをXMLを介してバックエンドへと受け渡すことで、ほとんどの顧客情報の入力などを自動化するなどのフォームの自動処理、またPDFドキュメントを介して部門間はもちろん、パートナーまで含んだワークフロー、さらにユーザー情報に基づいて、PDFファイルへのアクセスコントロール、特定の日時以降のデータ消去といったセキュリティの機能についても触れた。
同氏は「Acrobatの性格はここ数年で大きくは変わった。現在のAcrobatは、単に静的な印刷情報をPDFとして生成するだけでない。PDFはインテリジェントドキュメントに発展し、そして「標準化されたアーキテクチャで、部門単位ではなく全社的に情報の価値を最大化する」と語った。
■ 国内では企業向けの直販事業を開始
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アドビの国内市場での事業戦略
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アドビシステムズ株式会社 代表取締役社長 石井幹氏
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今後アドビでは、金融、官公庁などの重点分野や、グローバル展開のメーカーといった大手組織へ向けた直販の事業を開始する。同氏は「SIとの関係はドキュメントサービスの展開では重要なもの」とし、グローバルではIBMやAccenture、国内でも日立ソフトウェアエンジニアリング株式会社をはじめとしたSIとの関係を続けていく一方で、これまでの4~5年間はSIとの連携による事業展開を図っていた30人体制のプロフェッショナルサービス部門が、コンサルティング業務を通じて直販を行っていく。
「直販の割合は多くとも2割程度になるだろう」としたネメルカ氏は、「売上の拡大よりも、顧客と直接の接点を持ち、要件を反映してプロダクトの構築に生かすことを考えている」とその意図を説明した。
アドビシステムズ株式会社 代表取締役社長の石井幹氏は、公的認証基盤と連携する埼玉県や、出生にまつわる申請をワンストップサービスとして提供する八戸市での事例を取り上げ、「IDPは内部での情報活用だけでなく、一般市民との申請やり取りや、情報開示にも有用」とした。そして「今後はLiveCycleのコンポーネント製品群を中心に、大々的に力を入れていく」と語った。
■ URL
アドビシステムズ株式会社
http://www.adobe.co.jp/
プレスリリース
http://www.adobe.co.jp/aboutadobe/pressroom/pressreleases/200409/20040928q3.html
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( 岩崎 宰守 )
2004/09/28 18:48
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