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経済産業省 久米氏「オープンソースソフトウェアはIT産業の構造を変える」

~LinuxWorld C&D/Tokyo 2004 特別講演

 9月29日~30日に都内で開催されている「LinuxWorld C&D/Tokyo 2004(株式会社IDGジャパン主催)」において30日、「オープンソースソフトウエアの取り組みと市場への期待」と題し、経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課 課長補佐 久米孝氏による特別講演が行われた。久米氏は本講演で、今年から来年にかけて経済産業省が取り組むオープンソースソフトウェア関連施策の概要と、オープンソースソフトウェアの普及によって期待される市場の変化について語った。


経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課 課長補佐 久米孝氏
 基本ソフトやビジネスアプリケーションなどで市場を独占しているベンダーがいる場合、久米氏は「OSSの普及でユーザーに選ぶ権利を与えるとともに、多くのベンダーが市場に参入するチャンスが生まれ、市場全体に良い影響を与える」と語る。また、仕様が明らかでないブラックボックス化したソフトウェアの組み合わせだけでは、真のエンジニアは育たないとも指摘した。

 経済産業省が現在取り組んでいるOSS関連の事業には、その足りない機能を補完する開発基盤整備事業、教育現場におけるOSS活用に向けての実証実験、アジア地域におけるシンポジウムなどの国際展開や法的問題分析などがある。ちなみに経済産業省が推進するOSS関連事業の中核を担っている基本ソフトウェア(プラットフォーム)はLinuxである。

 Linuxは基幹システムのプラットフォームとしてのシェアは拡大している一方、デスクトップ環境では、プリンタなどのデバイスドライバや、ワープロや表計算といったビジネスアプリケーションが不足している問題があり、なかなか普及していないのが現状である。そこで経済産業省では、OSSの機能を補完する開発基盤整備事業を展開している。これまでの実績として久米氏は、Linux環境で高性能プリンタを利用できるようなシステム(ベンダ数社の共同開発)を例に挙げた。

 教育現場でのOSS活用は、コストを抑えるだけでなく、ソースを読んで内容を理解するという教育的な目的がある。初中等レベルの若者が、日頃からITに興味をもって高度な技術に接することができる環境を与えることで、優秀な人材を継続的に創出できる仕組みだ。「囲碁や将棋の世界のように、将来を担う優秀な若い世代を育てる仕組みを確立することが大事である」と久米氏は指摘する。

 経済産業省はOSSに関する国際展開として、アジアでのシンポジウムや日中韓の連携を通じて、情報交換、標準化、人材育成、産業への適用などを行っている。これは、各国のOSSの利用や開発を促進することを目的としているが、その成果をオープンにすることで、OSSの発展にも貢献できるとしている。

 最後に久米氏は「OSSはIT産業の構造を変えるため、利益を受ける人も、不利益を被る人も出てくるでしょう。いつも世の変化の本質に早く気づいた人が有利です。日本はハードウェアでは世界でもトップレベルですが、ソフトウェアに関してはまだまだです。早く優秀なエンジニアを輩出して、OSSの世界でもイチローや中田が出てきて欲しい」と述べて話を締めくくった。



URL
  LinuxWorld C&D/Tokyo 2004
  http://www.idg.co.jp/expo/lw/
  経済産業省
  http://www.meti.go.jp/


( 北原 静香 )
2004/09/30 16:42

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