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日本IBM、エバンジェリスト第2陣の8名を任命


 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は、Javaやデータベースといったオープン標準テクノロジーの先進技術分野について、その有用性を社内外に伝道していく役割を担う「エバンジェリスト(伝道師)」として、5月1日付に任命した9名に続き、対象をグリッドや情報コンプライアンスの分野まで拡げ、10月1日付で新たに以下8名のエバンジェリストを任命した。(カッコ内は専門分野)


第1陣のエバンジェリストを含め、総勢は16名となる
 丸山宏氏(コンプライアンス・テクノロジー)
 浅井信宏氏(ソフトウェア・アーキテクチャ)
 若尾正樹氏(Webツール)
 石井宏和氏(コンテンツ・マネジメント)
 小椋隆氏(インフォメーション・インテグレーション)
 小倉弘敬氏(ビジネスプロセス・インテグレーション)
 関孝則氏(グリッド・コンピューティング)
 大内二郎氏(オートノミック・コンピューティング)

 エバンジェリスト各氏は、エンジニアの中心としてのコミュニティ活動のほか、講演や取材への協力、雑誌への寄稿などを通じて、専門分野のオープンなテクノロジを業界に広めていく。


日本IBM ソフトウェア事業担当執行役員 三浦浩氏
 日本IBM ソフトウェア事業担当執行役員の三浦浩氏は、「IBMではオープンの世界に長い間コミットしており、これは今後も変わらない」と述べた。

 Software Center of Competency(SWCOC)の役割も、IBMのソフトウェアを利用していない顧客へ向けた従来の位置付けから、エバンジェリストを中心としたソフトウェアコミュニティの活動の場として、その性格を変えつつあり、現在では月1回開催の「エバンジェリストDay」など、交流会やセミナーなども定期的に開催されている。

 エバンジェリストについては、まず専門分野を絞り、そこから担当部門の責任者などを通じて「IBMの技術だけでなく、業界全体を語れる人材、そしてすでに業界内での実績が確立した人材」を選んでいるという。5月にはソフトウェアグループ内から選ばれたが、今回その対象をソフトウェア開発研究所やエマージェングビジネス(新規事業)担当に広げた。

 日本IBMでは未来のエンジニアへ向け、大学生や専門学校生を対象としたIBMミドルウェア認定技術者試験の無償/割引での提供、大学向けの特別ライセンスプログラム「Rational SEEDプログラム」などを提供している。三浦氏は「Lotus技術者は多いが、業界では多くのWebSphere技術者を必要としている」との現状を述べた。そして今回のエバンジェリストの人員増などの取り組みとあわせ「今後も業界に貢献していきたい」とした。


日本IBMソフトウェア開発研究所 WebSphereツール/Webツール担当エバンジェリスト 若尾正樹氏

WebSphere StudioはJSFに対応、ドラッグアンドドロップでのUI開発が行える
 エバンジェリストに任命された若尾正樹氏は、日本IBMソフトウェア開発研究所でWebSphereツールに所属し、WebSphere Studioやホームページビルダーの開発に携わっている。

 そして開発ツールの動向として、部品をドラッグアンドドロップで配置するだけで、WebアプリケーションのGUIを作成できるJava標準フレームワーク「JSF」、データアクセスを統一する「SDO」、またWebサービスのインターフェイスを定義するWSDL、ビジネスプロセス記述を定義する「BPEL」など、標準化された技術やフレームワークを挙げ、「これらサポートする開発ツールを組み合わせた新しいテクノロジで、複雑さを隠してより早く簡単に開発できる」とした。これにより、「これまで実行環境の付属物として扱われてきた開発ツールは、コンポーネント指向とEoD(Ease of Development)の流れの中で、その重要性が高まっている」とした。

 「Eclipse」は、2001年にIBMがオープンソースとしてコミュニティに提供した開発ツール。若尾氏は「2000年まではJDKをメモ帳で、コードをガリガリ書くのが主流だった」というが、WebSphere Studioなどの開発ツール、そしてEclipseの登場でその流れも変わりつつある。2004年に最新版のEclipse 3.0が公開され、徐々にデファクトとしての地位を占めつつあり、IBMでも今後、WebSphere Studioの一部機能をオープンソース化するなど、コミュニティへの貢献を続けていくという。

 別の側面からは、これまではJavaコード、HTML、JSPそれぞれの記述や、モデリング、プロセスなどの役割に応じて別のツールが使われ、連携ができなかった点に触れ、「統合開発環境では現在、Eclipseをベースに緩やかな連携が実現しているが、今後はプラグインで機能を実装できるIBM Software Development Platform上で、モデリングからコーディング、テストといった流れでのデータ連携をシームレスにしていく」とした。


最新版「Eclipse 3.0」のトップページ。目低に応じたリンクが配置されている Eclipse 3.0の新機能である「Cheat Sheet」 開発全体をシームレスに統合するIBM SDP

日本IBM グリッドビジネス事業部 技術理事/グリッド・コンピューティング担当エバンジェリスト 関孝和氏

オープン標準により仮想化技術を実現するグリッドコンピューティングのアーキテクチャ

グリッドを実現する前提となるWebサービスの標準技術
 日本IBM グリッドビジネス事業部 技術理事の関孝和氏も、今回エバンジェリストに任命された1人だ。異機種混在環境での稼動を前提としたグリッドコンピューティング技術の標準化について語った関氏は「企業が市場の変化に柔軟に対応していくためには、ビジネスの柔軟性を実現するオンデマンドなIT環境が必要になる」とグリッドへの取り組みの目的を述べた。

 このためには「複雑化したITインフラを簡素化して見せて、企業をまたがったITリソースの利用を可能にするためには、仮想化技術が必要になる」とした。この異機種分散環境下での仮想化技術の点が、科学技術のグリッドに概念的に近いことから、IBMではGlobusと協議を重ね、ビジネス利用で重要となる一定のサービス品質なども盛り込み、2002年には共同でOSGA(Open Grid Service Architecture)をGGFに提案している。

 その後システムが共通にアクセスするインターフェイスとして、Webサービスを強化するための標準技術を2004年1月にGGFとWSに提案、現在OASISで最終案の策定が進められている。関氏は「HTTPさえあれば、異機種分散環境からコンテンツにアクセスでき、アプリをキックもできる」と表現。アーキテクチャの上では、OSGAはこうしたWebサービス標準を土台に、現在では富士通も参画するなど大きな流れとなっている。

 関氏は「最終的なフレームワークに至るまでには、まだ1~3年程度の時間が必要だろう」との見方を示したが、科学技術分野はもちろん、証券ポートフォリオの資産予測などのビジネス解析でも、こうしたグリッド技術を適用した先駆けとなる事例がすでにある。「標準化はこれからになるが、機能的にはすでに実現し始めている。機能をいち早く届けることがビジネス上の付加価値になる」とした。

 IBMではメインフレームの時代に、すでに仮想化技術を実現しており、「リソース最適化に寄与することを実感している」という。今後はまずデータセンターレベルで、不足分のリソースをサーバープールから自動的に追加するシステムを実現していくことになる。「ダイナミックにインフラをコントロールできることから、ゲームやコンテンツ配信をはじめ、急激なサービス対象の増加をサポートできる標準技術になり、最終的には市場を形成するだろう」と語った。



URL
  日本アイ・ビー・エム株式会社
  http://www.ibm.com/jp/
  エバンジェリスト活動
  http://www-6.ibm.com/jp/software/swcoc/evangelist/


( 岩崎 宰守 )
2004/09/30 19:53

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