10月7・8日に日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)とアイ・ビー・エム ビジネスコンサルティング サービス株式会社(以下、IBCS)の主催で開催された「IBM Rational Software Development Conference」において、IBCS取締役の福井隆文氏が「Software runs the World」をテーマに基調講演を行った。
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IBMビジネスコンサルティング サービス株式会社 取締役 福井隆文氏
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1企業が世界50位以内にとどまる平均期間は短縮している
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IBCSは、米IBMが2002年7月に買収した米PwC(Price waterhouse Coopers)Consultingを統合し、コンサルティングサービス事業を手がける企業として2002年に設立された企業。2000人のコンサルタントが所属しており、福井氏は「Application Innovation」を統括、経営戦略からIT活用を踏まえた事業を展開している。
市場環境の変化の激しさは、企業の経営者にとってすでに自明のことになりつつある。外資系企業の資本参加や、銀行数の減少などもそうした背景を受けたものだ。一企業が世界50位以内に滞在できる平均期間は、10年前の6.7年から4.9年へと短縮されているとの調査結果を示した福井氏は「売上に貢献するビジネスモデルのライフサイクルは、この半分の2年半程度と考えられるため、システムの構築に2年半を費やしていたら意味がないことになる」とした。ビジネスモデルの適用期間は、業種によっては10年続くこともあるとする一方で、「Rationalを積極活用するような業界だともっと短い。そのときITが足かせになってはいけない」と語った。
こうした背景を受けたITの世界では、システムの構築手法“SOA(Service Oriented Architecture)”に注目が集まっている。1980年代のITは、業務・生産の効率化に主眼が置かれ、90年代にはこれがERPパッケージを中心とした全社レベルでの統合、最適化へと進展してきた。これが2000年に入り、企業ではコアコンピテンシーとなる強みを残し、「1社ですべて持つのではなく、一部業務をアウトソースやパートナーへ移管する」方向性が表れている。こうして企業の存在形態を変えることで、「強い企業同士が手を組んで、さらに強い市場へ向かっていく」メリットを生み、「よりよいパートナーを切り替えて事業を構成する」ことも可能となる。
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1980年代から2000年代にかけてのIT適用の進展
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粒度の細かいソフトウェア部品を組み合わせるSOAの手法
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企業構造をコンポーネント化して分析するCBMの考え方
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その場合、システムが密に結合されていると移行コストが増加するばかりとなる。福井氏は「SOAの中核には、こうしたシステムをいかに構成するかという発想がある」と語った。SOAは、標準化されたシステムを基盤に、粒度の細かいソフトウェア部品を組み合わせて、サービスを提供するシステム構築の手法。これにより業務機能をコンポーネント化することで、ビジネスに必要なITを明確化でき、モジュール化された再利用可能な機能群を用いることでシステム導入をより短期化できる。またサービスバスの考え方により複雑性も排除されるため、コストも低減できる。
「SOAのもとでは、これまでの技術が整理され、その基盤のなかでアプリケーションを作りこむ。このため、標準化の進展により今後のシステム構築はよりアプリケーションに集約されていく」とした福井氏。今後こうした環境が実現していけば、標準的な機能をつなぎ合わせて開発の大部分が行えるようになるため、「これまでのようにヒアリングする発想では間に合わず、要件を提案できる必要がある。エンジニアには業務を知り、アプリをデザインできるマルチタレント性が必要になるだろう」との考えを示した。
一方でビジネスとITを結びつけるという意味でも、「SOAは大きなインパクトを与える」という。企業を機能の集団ととらえ、コンサルタントが業務プロセスを整理する考え方を企業構造そのものに適用する、こうした考え方はコンポーネントビジネスモデル(CBM)と呼ばれており、アウトソースの広まりにも対応している。例えば企業のコールセンター部門をアウトソースする場合にも、顧客情報をタイムリーに委託先に渡す業務上の必要もあるため、ITがあって初めて成り立つものだ。そして優先順位の高いコンポーネント(部署)に新たなビジネスモデルを定義し、SOAの手法で構造変革をしていくことになる。
CBMの考え方に立ち、経営の側から企業構造をみる際には、個々の業務プロセスをとらえる指標が必要になる。バランススコアカード、KPIなども、その意味で機能する側面がある。こうした指標の元になる数値を、システムが吸い上げて管理者に提供し、戦略指標としてすべての管理職に普通に使われる世界を実現するためには、「生産のレスポンドをデータとして吸い上げ、これをいかに分析に結び付けていくかが課題になる」とした。
最後に福井氏は「会社の戦略を構造に反映していく企業の変革と、SOA化へのステップは同時に起きている。企業構造の変革が欧米は進んでおり、世界の動きに目を向ければ、日本の来年再来年の姿が見える」として講演を終えた。
■ URL
IBM Rational Software Development Conference
http://rsdc.seminar.co.jp/
アイ・ビー・エム ビジネスコンサルティング サービス株式会社
http://www-6.ibm.com/jp/services/bcs/
( 岩崎 宰守 )
2004/10/12 00:03
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