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米IBMブーチ氏、「新しい技術の押し付けは、反発で導入に失敗する」


 10月7日・8日に開催された「IBM Rational Software Development Conference」(日本アイ・ビー・エム株式会社、アイ・ビー・エム ビジネスコンサルティング サービス株式会社主催)のために来日した米IBM Rationalソフトウェアグループ IBMフェロー グラディ・ブーチ氏は、報道関係者を中心とするラウンドテーブルを都内で開催した。


米IBM Rationalソフトウェアグループ IBMフェロー グラディ・ブーチ氏
 ブーチ氏は世界中に10万人ほどのエンジニアを擁するIBMの中で、数えるほどしか任命されていないIBMフェローの一人である。「IBMは私を管理しきれないとあきらめてフェローにしたようですが、てっとり早くフェローになるにはノーベル賞を受賞することです」とジョークを交えてのラウンドテーブルとなったが、ブーチ氏はオブジェクト指向による設計手法である「Booch法」を提唱したメソドロジスト。OMT法のジェームス・ランボー氏とOOSE法のイバー・ヤコブソン氏とともにRational3アミーゴと呼ばれ、UMLの統一化に大きく貢献した人物の一人として知られている。

 現在ブーチ氏はIBMフェローとして、主に「アーキテクチャの構築を支援」「アーキテクチャパターンの研究」「Rational Softwareへの支援」「IBMの長期的な戦略の策定」という4つの仕事に取り組んでいるという。特に興味をもっているのがアーキテクチャパターンの研究だ。「詳細は私のブログを見てください」と語る通り、実際ブーチ氏のブログは毎日のように更新(場合によっては1日で何度も更新)されており、同氏が非常に熱心に活動していることがうかがえる。

 開発にUMLでのモデリングなどの新しい手法を導入する場合、ブーチ氏は、「学習する時間を与えられず、新しい手法だけを無理やり押し付けるというのは、よくある失敗のパターンです。技術者は学習する時間を与えられなければ、その反発でフラストレーションがたまって離れていってしまいます」と述べた。その上で「プロジェクトが問題を抱えた場合、その解決方法として新しい技術を導入するというのが、最も多い成功パターンです」として、技術を開発者に性急に押し付けることなく、十分な学習時間を確保することの重要性を指摘した。

 「IBM Rational Software Development Conference」でも発表されたように、今後IBMの開発プラットフォームは「Rational」ブランドで提供され、「WebSphere Application Server」がミドルウェアとして提供されていく予定である。Rational Softwareへの支援、あるいはIBMの長期戦略を策定する立場にあるブーチ氏は「今後IBMの事業は、Microsoftのようにアプリケーションを販売していく方向には向かわない」と語り、今後のIBMのソフトウェア事業は開発基盤やミドルウェアといったプラットフォーム提供にビジネスを展開する予定であることを表明した。



URL
  IBM Rational Software Development Conference
  http://rsdc.seminar.co.jp/
  日本アイ・ビー・エム株式会社
  http://www.ibm.com/jp/
  ブーチ氏のBlog
  http://www.booch.com/architecture/blog.jsp


( 北原 静香 )
2004/10/12 11:11

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