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マイクロソフト、広島大学と提携-セキュリティ人材育成などで協力関係


マイクロソフト代表執行役社長のマイケル・ローディング氏

広島大学学長の牟田泰三氏
 マイクロソフト株式会社と国立大学法人広島大学は10月13日、情報アクセシビリティ分野および情報セキュリティ分野において、協力関係を確立することで合意した。

 今回の提携では、情報セキュリティ分野における人材育成、トレーニングの実施、情報アクセシビリティ分野における情報バリアフリーに向けた協力などが含まれる。

 マイクロソフトのマイケル・ローディング社長は、「今後のインターネット社会における問題は、セキュリティに関する人材育成であり、教育機関とともにこの問題に取り組むことには重要な意味がある。またアクセシビリティについても、広島大学は多くの経験を持っており、業界のリーダーである当社との協力によって、社会に大きなメリットを還元できる」とした。

 一方、広島大学の牟田泰三学長は、「大学の使命は、知的文化の維持にある。知的文化を創造するという点では研究、開発があり、知的文化を継承するという点では教育がある。そして、知的文化を活用するという点では社会貢献などがあげられるだろう。だが活用の面ではまだまだ手薄な部分が多い。今回のマイクロソフトとの協力関係の確立は、社会貢献という点から、知的文化の活用に貢献できる新たな取り組みだと考えている。広島大学が得意とする教育のユニバーサルデザイン化によって、高齢者や障害者にも教育の機会を均等に提供するという点でマイクロソフトと協力し、一方で、不得意とするセキュリティに対してはマイクロソフトの支援を得たい」と提携の狙いを説明した。

 広島大学は、朝日新聞による大学ランキングで、障害者支援ナンバーワンと位置づけられるなど、アクセシビリティの分野では先進的な取り組みが高く評価されている。

 「次期OSであるLonghornでも、アクセシビリティの観点からβテストに参加していただき、製品化にフィードバックしたいと考えている」(マイクロソフト・眞柄泰利執行役常務)としている。


提携の内容
 今回の具体的な提携内容は、大きく情報セキュリティ分野と、情報バリアフリー分野に分かれる。

 情報セキュリティ分野では、人材育成として、広島大学の約150人のネットワーク管理者をセキュリティリーダーとして育成し、学内のセキュリティレベルを強化するのをはじめ、全学生、全教職員を対象にMCA(マイクロソフト・サーティファイド・アソシエイト)セキュリティのトレーニングを実施。さらに、2005年4月には、マイクロソフトから講師の派遣や、コンテンツの提供によってMCAトレーニングセンターを開設する。

 「これまで理系の人たちに対象がとまっていたMCAセキュリティが、文系を含めた幅広い人たちに広がることになり、社会のセキュリティ全体の底上げが期待できる」(眞柄執行役常務)としている。

 また、次代セキュリティ教育のカリキュラム研究も共同で行っていく予定。

 一方、情報バリアフリー分野では、障害を持った人に対して効果的にITスキルを伝授できるアクセシビリティリーダーの育成を実施。これに合致した教育カリキュラムや育成プログラムの開発を共同で行うほか、将来的には資格制度も開発する予定。

 「アクセシビリティリーダーの育成では、対象となる人たちをサマーキャンプの形で集め、最新支援技術の体験や情報提供、人材交流などを行いたい。すでに11人を対象にパイロットキャンプを実施しており、来年度以降、定期的に開催したい」(眞柄執行役常務)という。


 なお、今回の会見には、初代IT担当大臣を務めた中川秀直衆議院議員が、広島4区選出という背景もあって、特別に参加。「e-Japanを推進する上で、いつも指摘されるのがセキュリティリーダー不足や、人材育成の問題。その点で、今回の提携による取り組みは、日本のため、そして広島のためにも、大きなものになると期待している」と話した。



URL
  マイクロソフト株式会社
  http://www.microsoft.com/japan/
  広島大学
  http://www.hiroshima-u.ac.jp/index-j.html
  プレスリリース
  http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=2071


( 大河原 克行 )
2004/10/13 18:06

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