日本BEAシステムズ株式会社は10月15日、米BEA Systems CTO(最高技術責任者)マーク・カージス氏の来日に伴い、プレス向けのラウンドテーブルを開催した。
カージス氏は、退社した前任のスコット・ディッゼン氏に代わり、この8月よりCTOに就任した。もともとはAT&Tベル研究所でTuxedoの開発に携わっており、BEAには1996年に入社している。その後BEA WebLogicプラットフォーム製品を担当するエンタープライズフレームワーク部門の責任者を経て、グローバル企業顧客に対する戦略プログラムを担当するストラテジックグローバルアカウント担当バイスプレジデントを務めていた。
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米BEA Systems CTO(最高技術責任者)マーク・カージス氏
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Liquid Computingでは業務担当者自身によるビジネスプロセスの変更を可能とする
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BEAの市場における強みを「ITを簡素化することで、他社にできないものを提供する」としたカージス氏。ゼロから始まったBEAが10億ドルの売上に達した現在、そして将来的にもこの点は変わらないとした。
カージス氏は今後のITに求められる要件として「個別に最適化されたシステムでも、これからは適合性が求められる。また障害発生時の自己治癒力を備えるダウンタイムのないシステムにより、ユーティリティとして常に利用できるメリットを享受できる位置付けになっていく」との見通しを語り、BEAでは“Liquid Computing”でこれを実現するとした。
Liquid Computingは、相互接続性、変化対応、生産性向上の3つを柱としたコンセプト。これを実現するのが、開発コードネーム「Diamond」と呼ばれる次世代プラットフォームとなる。「システムの統合は難しく、コストも要するが、現有資産を生かすためには不可欠」としたカージス氏は「SOAは統合のアプローチと経済性が変える。これまで考えられなかった相互接続性が実現する」とした。
Diamondは、SOAを実現するための「WebLogic Platform」の新バージョンとなるプラットフォーム。WebLogic Server、Quicksilver、WebLogic Portal、WebLogic Integration、WebLogic Workshopといった同社のプラットフォーム製品群を包括する位置付けとなる。カージス氏によれば、2005年中にもこのうちの一部がロールアウトされるという。
SOAでは「アプリケーションのボリュームと利用範囲が大きくなる」としたカージス氏。このため24時間のサービスも求められ、運用管理の負担も増すとした。このため、CPUやアプリケーションダウンさせずにクラスタ、ドメインの一部のみを変更できるなど、スケーラブルと信頼性が重視された開発が進められているという。またコード記述に依存せず、業務担当者によるコンフィギュレーションの変更で、ビジネスプロセスの変化に即座に対応できるため、ダウンタイムを削減できる。
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ESBとWSMを融合した新プロダクト「Quicksilver」
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QuickSilverは、BEAが新たに開発しているプロダクトで、ESB(エンタープライズサービスバス)とWSM(Webサービス管理)が統合されている。Webサービスをモニタリングして、障害時の対応やサービスレベルを保証するSLAの実行状況、さらにサービスそのもののバージョン管理も行える。またセキュリティなどの機能についても「Webサービスの各パーツにコードとして入っていると、変更が難しい」ため、こうした構成情報をQuicksilverの側で持つことで、変更を容易にするという。またアプリケーション間にパイプラインを構築することで、ポリシーやルーティング、セキュリティなどの機能のほか、データ変換なども行うことができる。
カージス氏は「企業では、SOAそのものをプロジェクトの目的にすることはありえない」とし、あくまでプロジェクトの中に属性として追加するアプローチとしてSOAを位置づけた。その上で「セールスオートメーションのアプリケーションを構築した後、サービスオートメーションの構築で70%のコンポーネントを再利用して低コストを実現した事例もある」と述べた。SOAのもとでは、システム構築を重ねるごとに共有コンポーネントが増え、コストが下がっていくといえる。
「Webサービス間連携や、サービスの管理については、Quicksilverで技術的な解決策を提供できる。しかし企業のガバナンスがSOAの導入を阻んでいる」としたカージス氏。企業では各部門が縦割りなため、Webサービスを共有した場合のコストをどうするのか、また先に構築した部署が、後から構築してメリットを受ける部署から予算をチャージバックされるのか、といった問題があるという。カージス氏は「SOAを実現する上で、企業では意識変革が必要になるだろう」と語った。
■ URL
日本BEAシステムズ株式会社
http://www.beasys.co.jp/
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( 岩崎 宰守 )
2004/10/15 18:38
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