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米Sunの技術担当上級副社長、SPARCやSolarisのロードマップを解説


 米Sun Microsystems(以下、Sun)の上級副社長兼CTOのグレッグ・パパドポラス氏とスケーラブル・システム・グループ上級副社長のデビット・W・イェン氏が10月13日・15日と相次いで来日し、記者らとのディスカッションの席でSPARC系CPUやSolarisのロードマップについて説明した。


SPARCに各チップ機能を統合「5倍~10倍速くなる」

米Sun Microsystems 上級副社長兼CTO グレッグ・パパドポラス氏

スケーラブル・システム・グループ上級副社長 デビット・W・イェン氏

CMTのイメージ
 SunではSPARCのロードマップとして、メモリ遅延を利用して1つのコアで複数のスレッドで同時処理するCMT(チップマルチスレッディング)技術の搭載を特徴としたCPUのリリースを予定している。発表されているのは、(1)すでに出荷が開始されている「UltraSPARC IV」、(2)10月5日に正式発表された90nmプロセス・デュアルコア採用の「UltraSPARC IV+」、(3)8つのコアを内蔵、それぞれが4つのスレッドで同時処理し、Webサーバー向け“ネットワーク集約型”の「Niagara(開発コード名)」(2006年リリース予定)、(4)アプリケーションサーバーやデータベース向け“データ集約型”とネットワーク集約型の二つの側面を兼ね備えた「Rock(開発コード名)」(2008年リリース予定)だ。なお、NiagaraやRockは単一CPUではなくファミリ名を指す。

 また2006年から2008年の間には、Sun・富士通の共同開発によるサーバー製品群「APL(Advanced Product Line)」に搭載されるCPUとして、富士通の「SPARC64 V」がデータ集約型CPUとして入ることになる。ただしRockが登場する2008年以降、このSPARC64 Vがどうなるかについては「現時点ではわからない」(イェン氏)とのこと。

 すでにPCのCPUでは電力や発熱などの問題からクロック周波数の上昇において限界もうわさされ、今後はマルチコア化が進むと予想されている。パパドポラス氏によると、より大きな処理能力が求められるサーバー向けCPUではマルチコア化に加え、これまで別々のチップで行っていた処理をCPUに統合し、より緊密にすることでオーバーヘッドを減らし「5倍・10倍といった飛躍的な能力向上」がもうすぐ実現するという。さらにイェン氏によると、Niagaraではネットワークチップと暗号化/復号化処理機能をCPU内に統合する予定であることを明かす。「まずGigabit Ethernet、将来的には10Gigabitインターフェイスの統合を目標としている」(イェン氏)。

 このNiagaraはネットワーク集約型CPUとして、SPARC64 VやRockとは「コンピューティングのパラダイムが変わるまで」(イェン氏)共存する予定としている。イェン氏は「今後はハイエンド・ローエンドなどではなく、利用方法によって区分けされることになる」と主張する。

 そしてRockは、CMTのほか“革新的な技術”を新たに搭載し、データ集約型の用途を主としてネットワーク集約型にも対応するという。詳しい内容については「話すには時期が早すぎる」と明らかにされていないが、イェン氏は「Rockという開発コード名にも意味がある」とだけ述べている。

 なお、これらSPARC系CPUは一貫してソフトウェア互換が保証されるため、現在利用しているアプリケーションはNiagaraやRockでも動作するという。ただしハードウェアコンポーネントは大きく異なるため、導入にはサーバーの変更が必要とのこと。同社ではUltraSPARC IIIとIVのように奇数と偶数のシリーズ名でハードウェアの互換性があり、CPUカードを差し替えるだけでそのままサーバーの稼働が可能であったが、今後もこの流れを継続するとしている。


Solarisのオープンソース化、「考えている」

 一方、SPARCと同様に注目されるのがSolarisだ。パパドポラス氏・イェン氏とも「ハードとソフトを共に提供するシステムベンダーであることが、Sunの最も大きな強み」と、強調している。まもなくのリリースが予定されているという新バージョン「Solaris 10」は、セキュリティ面での強化や、仮想的に複数のOSを同時に稼働できる「コンテナ」、さらに新しいファイルシステムを搭載するなど大きなバージョンアップとなる。イェン氏は「Rockを搭載した大規模サーバーでは、Webサーバー、アプリケーションサーバー、データベースといったサーバー群を1台に集約することが可能になるだろう」と述べ、さらにRockリリース時には「Solaris 10より先のもの」の登場を示唆した。

 また、一部で話題となっているSolarisのオープンソース化についてパパドポラス氏は「ライセンスの契約内容などは明らかにしていないが、検討している」と認めた。

 SunはITバブル崩壊以降、ほかのベンダーと比較して売上の減少が長く続いたが、研究開発への投資は売上の約13%、年間20億ドルを維持。10月14日(米国時間)には、四半期決算において2期連続の増収を発表しており、ようやく上向き始めた。パパドポラス氏は「成果は確実に出てきている。我々のプロダクトフォリオは最強だ」と大きな自信を示した。



URL
  米Sun Microsystems
  http://www.sun.com/
  サン・マイクロシステムズ株式会社
  http://jp.sun.com/
  プレスリリース(2005会計年度 第1四半期の業績)
  http://jp.sun.com/company/Press/release/2004/1015.html

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( 朝夷 剛士 )
2004/10/15 19:57

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