インテル株式会社は10月19日、企業や大学、政府研究機関で技術開発や標準化策定に携わるユーザーを対象にした技術セミナー「Intel R&D Day」を開催し、米Intel CTO兼バイスプレジデント パトリック・ゲルシンガー氏が「イノベーション@インテル」をテーマに基調講演を行った。
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インテル株式会社 代表取締役共同社長 吉田和正氏
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米Intel CTO兼バイスプレジデント パトリック・ゲルシンガー氏
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講演に先立って挨拶を行ったインテル株式会社 代表取締役共同社長の
吉田和正氏は、「標準化への取り組みでは、インテル1社だけでなく、多方面の協力がなければ多くのことが進まない。産学官が一体となったコラボレーションが必要」とし、昨年に引き続き2回目となる技術セミナーの開催について「今後の交流につながるアクティビティにつなげていきたい」とした。
Intelでは、2004年にはR&Dへ48億ドルの投資を行っている。ゲルシンガー氏は「技術革新が業界を駆動していく」とし、今後も投資を継続していくとの姿勢を示した。Intelでは世界各地に研究施設を持ち、「これらワールドワイドの研究所を結ぶネットワークを重視している」という。
一方で、研究成果を製品・サービスとして提供するにあたっては、パートナーとの連携を重視している。ゲルシンガー氏は「適切な研究開発は科学より芸術と呼ぶべきもの」と述べ、「研究開発に力を入れる企業は成功しないとも言われており、研究開発に対する評価は非常に難しい」とした。
Intelでは、「大学、企業、業界のエコシステムにより、新分野を効果的に普及採用する」方針で研究開発を進めている。このため標準化団体とのかかわりも多く、「現在までに300以上の機関に、何らかの形でかかわっている」という。
さらに「新しいイノベーションを提供するためには、規制機関、政策決定者との話し合いも必要」とした。ゲルシンガー氏はコンテンツ保護、スペクトラム割当などの例を挙げ、「テクノロジの方向性を理解してもらうため、先日も日本の総務省とも話し合いを行った」ことを明かした。そしてこうしたエコシステムにより「互いに影響を与え合って1+1=3になる効果を生む活動を目指していく」と語った。
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「ムーアの法則を継続する」今後のIntelの開発ロードマップ
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次世代インターネットの実験プロジェクト「PlanetLab」
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Intelが研究開発の柱として掲げているのが“コンピューティングとコミュニケーションの融合”。ゲルシンガー氏は「いつでもどこでも、どんなデバイスでもネットワークに接続できる時代がやってくるだろう」との見通しを語った。
同社の基礎となる半導体開発についてゲルシンガー氏は、18~24カ月で倍になるというムーアの法則を取り上げ「この法則の正しさを継続するために、シリコンの上で活用できる新たな取り組みを続けている」と語った。そして「45nmプロセスでの生産は2007年のスタートが予定されるほか、24nmプロセスのプロトタイプシリコンでの研究開発も動き出している。マーケットに出すまでの作業は別として、次の10年に中核となる革新はすでに行われている」と述べた。
続いてゲルシンガー氏は、DNAやたんぱく質を解析するバイオテクノロジー分野、極小のセンシングノードでダイナミックに情報収集を行う“Senser Networks”での取り組み、コンピュータ自身が過去の統計情報を元にプロアクティブな自己修復を行うハードウェアベースのインフラ技術などの、新規分野への投資について触れた。
さらに次世代コンピューティングについて、今後はマルチコアによる処理向上だけでなく、5年10年のスパンで見れば、周波数はもちろんクロックあたりの性能も向上していくとした。そうしたときに「数Tフロップスもの性能に何の意味があるのか」との質問を受けるとしたゲルシンガー氏は「386 CPUの頃にも同じような質問を受けた」とし、将来的には、人間の認識しやすさを高めるためのインターフェイス、データマイニング、映像の合成などの分野にこうしたコンピュータリソースが使われていくとの見通しを示した。
コミュニケーションネットワークの将来の形については、「インターネットの基本的な部分は、35年前に生まれたIPのアーキテクチャによる。複雑なネットワークを越えるオーバーレイを果たしたという意味で大きな役割があったが、現在ではさまざまなひずみが生じており、次世代には対応できないのではないか」との考えを示した。
そこでIntelでは、「新しいオーバーレイネットワーク」としてのPlanetLabの取り組みにコミットしている。「分散したさまざまなコンテンツやファンクションを効率よく発見、接続し、有効なサービスを提供することが、これからのネットワークの課題になる」とした同氏によれば、PlanetLabではメディアサービスの効率的な分散、またスパムの検出や、事前に問題を取り除くためのネットワークレベルでの隔離などにすでに成功しているという。
■ URL
インテル株式会社
http://www.intel.co.jp/
( 岩崎 宰守 )
2004/10/19 18:11
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