インテル株式会社は10月19日、企業や大学、政府研究機関で技術開発や標準化策定に携わるユーザーを対象にした技術セミナー「Intel R&D Day」を開催し、米Intel システムテクノロジーラボ シニアフェロー兼シニアディレクターのジャスティン・ラトナー氏が「インテルのプラットフォーム関連研究開発~携帯からサーバーまで~」をテーマに講演した。
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米Intel システムテクノロジーラボ シニアフェロー兼シニアディレクター ジャスティン・ラトナー氏
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「今後はCPUではなくプラットフォームのレベルでイノベーションを実現していく」
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ラトナー氏は「何年もの間、動作クロックによる性能向上ばかりがクローズアップされていた。しかしこの数年で状況が変わり、ユーザーは純粋なパフォーマンスだけでなく付加価値を重視するようになった」と語った。
Intelでは、これまでクロック周波数の向上に加え、MMXやSSEといった拡張命令により性能向上を果たしてきた。しかしこうした状況を受けて、クロックと電圧を可変する拡張技術“Speedstep”をPentium Mプロセッサに実装している。またマルチコアによる処理効率の向上といったアプローチも手がけ始めている。「今後は不必要な電力を避けることが重要になる。複数コア実装による動作結果を分析し、効率とパフォーマンスのトレードオフに基づいて、コアの数と処理効率の最適な組み合わせを提供していく」とした。
チップセットの分野でも、PCIやAGP、最近ではPCI Expressなどの導入や、統合グラフィックの分野でIntelは大きな役割を担ってきた。こうしたI/Oレベルでは、「今後はこうしたバスベースのインターフェイスから、ポイントトゥポイントのよりハイスピードなインターフェイスへと移行していくだろう」との見通しを示し、Intelでは光ベースのインターフェイスへの投資を行っているとした。
ラトナー氏は、こうしたチップセットにコミュニケーションを統合した“Centrino”の提供を代表的な例として挙げ、「プロセッサも重要ではあるが、今後はより広範なプラットフォームの一部になる。今後はプロセッサではなくトータルなプラットフォームのレベルでイノベーションを実現していく」と語った。
「現在では、パフォーマンスからパワー効率のゲームへシフトが見られる」としたラトナー氏。サーバーの設計で課題となる冷却効率の問題を解決した物理的パッケージを、通常のサーバー向けのほか、より熱対策の問題がクローズアップされるブレードサーバー向けにもデザインし、「ビルディングブロックとして供給していく」と語った。
パワー効率という面では、同氏の所属するシステムテクノロジーラボはIDFで公開された「Ultra Mobile PC」のプロトタイプ開発も行っている。ラトナー氏によれば、「現在ではプロセッサがパワーの集中するシステムでは必ずしもない」と語った。このPCでは「ディスプレイやストレージともコミュニケーションして電源を管理する革新的なフォームファクタ」が採用されている。ディスプレイサイズは3×5インチで、総消費電力は7~8W程度となっているとのことだ。「数年後には5W以下を目指す」という。
こうしたモバイルデバイスとして、IntelではIEEE 802.11bでのVoIP通話が可能な“Universal Communicator”の開発も手がけている。これらのデバイスなどにより、「容易にネットワークに接続でき、必要な情報へいつでもアクセスできるモビリティ環境を提供していく」とした。
また、ラトナー氏は「コンピューティング環境は常に信頼できなければならない」と述べた。シリコンレベルでトランジスタの変化をコントロールし、管理できる。また迅速な障害回復も可能な「電源を入れるとネットワーク環境を理解し、最新のソフトウェアバージョンやパッチを認識できる」ようなシステムの実現を目指すとした。
さらに「ネットワークデバイスは返品が最も多い」としたラトナー氏。ネットワークプロトコル、DNS、ゲートウェイといった設定の技術的な敷居の高さがその原因だという。そして「プラットフォームレベルでの技術開発により、こういう経験を変えていく」とした。またウイルス侵入などに対しても自動的に管理でき、システムのトラブルシュートなども可能となる仕様を2005年春のIDFで発表する予定だという。「シリコンを問題解決の基盤にしたセルフマネジメントが可能なプラットフォームレベルのイノベーションを実現する」と語った。
■ URL
インテル株式会社
http://www.intel.co.jp/
( 岩崎 宰守 )
2004/10/19 19:25
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