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開発担当VPが語る、Notes/Dominoの今後の方向性


 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は10月22日、IBM Lotus Notes/Dominoの開発責任者である米IBM ロータスメッセージング開発担当バイスプレジデントのケビン・キャバナー氏を囲むラウンドテーブルを開催し、Notes/Dominoの最新動向と今後の方向性について明らかにした。


米IBM ロータスメッセージング開発担当バイスプレジデント ケビン・キャバナー氏
 この15年来Notesの開発を担当しているキャバナー氏は、「1989年の製品リリース以来、Notesは市場に合わせて進化してきた」と語る。1996年には、NotesクライアントとDominoサーバーを分離する大きなアーキテクチャの変更を行った。2004年に発表されたJ2EEとの統合は、これに匹敵するものとの位置付けだ。

 「96年当時には、インターネットの進展がNotesのビジネスを破壊すると言われていたが、実際はこの技術を取り入れることで、以前より急速にビジネスが発展した」としたキャバナー氏。「J2EEやオープンソースプラットフォームの技術の進化により、再びマーケットは変化する局面になっている。こうした新たな技術トレンドをNotesが受け入れ、96年と同じくテクノロジを進化させる」と語った。

 国内ではグループウェア黎明期からの導入が多く、シェアも高かったバージョン4.6のサポート切れなどにより、Notes/Dominoの環境移行はひとつのトレンドとなっている。Notes/Domino 6/6.5を採用するメリットとして、キャバナー氏は「TCOをより下げ、新機能で日常業務の生産性を向上できる」点を挙げた。

 アメリカでの企業顧客のアップグレード率は、8月末の段階で73%に達している。このほか13%は現在システムを移行中なため、あわせて86%が6.0/6.5への移行を決定していることになる。キャバナー氏は「日本市場はおよそ9~12カ月ほど遅れている」とした。これは移行済みユーザー37%、移行中ユーザー19%、あわせて約半数程度の数字となる。


15年間のNotesの歴史。国内向けの提供はNotes R5から 米国ユーザー企業の環境移行状況

今後のNotes/Dominoロードマップ
 キャバナー氏によれば「今後はメール、IM、ドキュメント管理などが統合プラットフォームに集約される形になるとの見方が大きい」という。Notes/Domino 6.5で、Dominoのコアである単一プラットフォームに、メッセージングやワークフローなどの拡張機能を取り込み、IBM WebSphere Portalとも統合してWebブラウザで利用できるようにも変更が加えられているのもこのためだ。そして「メールやIMが他のアプリケーションと連動する使い勝手の改善は今後も続けていく」とした。

 Notes/Domino 7.0では「スケーラビリティを従来と比べ50%改善し、CPU利用効率も25%向上している」という。データストアについては、これまでのNFSが標準として採用されるが、大規模環境向けにDB2の活用にも新たに対応する。さらにLotus Workplaceのクライアントとして動作可能なNotes用プラグインにより、Webサービスの利用にも対応する。キャリバー氏は「Dominoアプリケーションを数多く保有している企業も、これをSOAアーキテクチャで活用できる」とした。

 このようにNotes向けだけではなく、Eclipseで開発されたアプリケーションが手直しを加えずに動作することで、「ISVによるソフトウェア開発が容易になる」ことを挙げ、「ユーザーが選択できる幅が広がることで、コスト効率とパフォーマンスの向上につながる」とした。そして「ポータル製品でも、多くのビジネスプロセスを1画面にまとめる方向性は顕著になる。こうした方向性は共通するといえる」とした。IBMでは2年前からNotes開発チームとWebSphere Portalチームを合併している。

 キャリバー氏は、NotesをWebブラウザを用いたグループウェアと比較した場合、「クライアント側ソフトウェアの保守が必要な点はデメリットといえるが、Webアプリケーションでは重要なステートの管理が難しい。魅力あるUIをWebブラウザで実現するためには大量のダウンロードが必要になり、結局シンクライアントのはずがファットクライアントになってしまう。Webブラウザのみのシステム運用では、能力的に限界に突き当たるだろう」とした。


 またクライアントベースのソフトでのメリットとして、オフラインでも作業可能で場所を選ばない点も取り上げた。さらに「他社の動向は常に気にしているが、MicrosoftがLonghornとOfficeで打ち出している戦略は、Web連携するUIとして考えられる」との見方も示した。そして「クライアント側の高い処理能力を使わない手はない。最終的なメリットは高いと考えている」と述べた。

 Notes/Dominoのバージョンアップサイクルについては、「5.0から6.0へのバージョンアップは3年半を要した。今後は12~18カ月周期でクライアントとサーバーを交互にリリースするよう方針を変更する」とし、「時間をかけて大幅に変更を加えるより、小規模の変更を積み上げる形にすれば、企業でも柔軟に選択できる」とした。交互リリースは「互換性をより高められ、リリースを飛ばした場合の問題も少なくできる」ためとのことだ。

 さらに将来的な追加機能については「ハードウェアでのオートノミックの考え方を取り込み、Dominoドメインのパフォーマンスをモニタして、よりパフォーマンスが向上するようネットワークの再構築案を示すような形を考えている」とした。またフル機能を実装した製品を、一部機能を制限した形で出荷し、必要に応じて利用できるハードウェアでのキャパシティオンデマンドの考え方をソフトウェアにも取り込んでいくとした。



URL
  日本アイ・ビー・エム株式会社
  http://www.ibm.com/jp/

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( 岩崎 宰守 )
2004/10/22 14:01

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