ミラクル・リナックス株式会社は10月26日、2004年1月に発表された中国のLinux大手RedFlag Softwareとミラクル・リナックスのアジア標準Linuxの共同開発プロジェクト「Asianux」へ、韓国企業のHaansoftが参画すると発表した。
現在Asianux 1.0は、「Asianux Inside」のパッケージロゴとともに、サーバー向けのLinuxディストリビューションとして、ミラクル・リナックスより「MIRACLE LINUX V3.0」として、RedFlagからは「RedFlag AS 4.1」の名で提供されている。今回の共同開発では、2005年1月より3社共同で、次期バージョンとなるAsianux 2.0を、北京オラクル研究センター内のAsianux開発センターにおいてに開発する。
Asianux 1.0の動作プラットフォームとしては、6月発売のIA32版に加え、9月にItanium環境で動作するIPF版の提供が開始されている。EM64T/AMD64環境で動作するx86-64版は2005年1月の発売予定となっている。Asianux 2.0では、この3つの環境向けのバージョンを2005年9月に同時リリースし、韓国でも「Haansoft Linux 2005」として提供される予定。
|
ミラクル・リナックス株式会社 代表取締役社長 佐藤武氏
|
|
ミラクル・リナックス株式会社 戦略事業推進室室長 児玉崇氏
|
今回のHaansoftのAsianux参加に際し、韓国では10月21日に調印セレモニーとセミナーが、韓国でIAサーバーを販売するサムソン電子と韓国IBMの協賛により行われていた。ミラクル・リナックス株式会社 代表取締役社長 佐藤武氏は「Haansoftの参加は、Asianuxが真のアジア標準Linuxになる上で意義が大きい」と語り、「韓流ブームに乗って」、北米中心のRed Hat、ヨーロッパのSUSEに続くグローバル標準を視野にプロジェクトを進めたいとした。
ミラクル・リナックス株式会社 戦略事業推進室室長 児玉崇氏は、国内のLinuxディストリビューションの売上シェアで、ミラクルは2003年度実績で第3位ながら、調査資料を基に「国内ではTurboを抜いて2位になり、今後も成長率ではトップの伸びになると予測される」とした。
今回のプロジェクトについては、「こうした企業連携は、OSSがなければ成り立たなかった」と語る。オープンソースであることは、企業でソフトウェアソースの著作権に基づいたビジネスモデルが展開できないことを意味していることがその理由だ。
3社の位置付けとしては、サーバー向けに強みを持つミラクル、デスクトップLinuxでは中国で56.3%のシェアを持ち、政府関連機関である中国科学院軟件研究所を母体にするRedFlagに対し、今回参画したHaansoftは、「MS Wordをしのぐ世界で唯一のワープロソフト」であるハングル対応のワープロソフト「Hangul」で韓国内シェア70%を誇る。またMicrosoft Office互換のJavaオフィススイート「Thinkfree Office」や、企業向けのグループウェア「Workdesk」なども発売し、アプリケーション分野に強い。
Asianuxのプロジェクトでは「各国のニーズを吸い上げて、反映させるのがビジョン」とした。また製品はもちろん、ファーストラインから提供されるサポートも同一レベルになるという。「OSSの企業ユースではサポートが非常に重要だ。日本がもっともサポート要求が厳しいため、2社にはこの点がメリットにもなる」と述べた。この他各国政府の推進するOSS推進プロジェクトにも、3社それぞれがコミットしており、「官民並行してアジアでのOSSを推進していきたい」とした。
製品としてのAsianuxには、RedFlagの管理ツールがすでにインプリメントされているが、2.0では、設定機能をさらに強化してユーザビリティも向上する。さらに企業サーバー向けの障害対応などに関する開発も継続し、スケーラビリティとアベイラビリティの向上も図っていくとした。またデスクトップの仕様、提供形態についても現在協議中としたが、「Haanによりオフィス製品を含めた形にできる」とした。
|
韓国Haansoft バイスプレシデントのTae-Jin Kang氏
|
韓国Haansoft バイスプレシデントのTae-Jin Kang氏は「現在韓国でのLinux市場は非常に小さい」とした。これは「今後市場が立ち上がれば、大きな成長が望める」ことでもある。Haansoftでは、教育・公共分野を中心に市場を創出し、今後は企業向けLinux事業も手がけるとした。
現在、韓国ではMicrosoftの技術が市場へ浸透している一方、「政府ではその代替としてのLinuxを推進し、国内のソフトウェア産業を拡大したいと考えている」という。このため他の外資系ディストリビューションであるRed Hat、SUSEではなく、Haansoftが共同開発に加わるAsianuxが優位になる可能性が大きいとした。また「顧客が買うのはOSではなくアプリケーション」と述べ、「オラクルの強いサポートノウハウを生かせる」点もメリットに挙げた。
そして「アジア諸国は自動車、鉄鋼、船舶を世界中に輸出しているが、ソフトウェアはアメリカ、ヨーロッパからの輸入ばかり。こうした状況を変えるには単独ではできない。時間がかかるかも知れないが、中国や日本と協力して成功を目指したい」と語った。
■ URL
ミラクル・リナックス株式会社
http://www.miraclelinux.com/
中国Red Flag Software
http://www.redflag-linux.com/
韓国Haansoft
http://www.haansoft.com/
プレスリリース
http://www.miraclelinux.com/pressroom/details/2004/1026_1.html
■ 関連記事
・ 「Asianuxでアジアンスタンダードを実現する」ミラクル・リナックスの戦略(2004/05/28)
・ ミラクル・リナックス、マルチバイト対応を強化したLinuxサーバーOSを6月に発売(2004/05/11)
・ ミラクル・リナックスと中国Red Flag、「Asianux」ベータ版開発終了と動作認定プログラムの開始を発表(2004/03/31)
・ ミラクル・リナックスと紅旗、“Asianux”を共同開発(2004/01/15)
( 岩崎 宰守 )
2004/10/26 17:36
|