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“ファイアウォールベンダ”米SonicWALLが主張するIPSの有効性


 米SonicWALL,Inc.(以下、SonicWALL)は、統合セキュリティアプライアンス「SonicWALLシリーズ」を手がける企業だ。日本でも4万台以上を出荷するなど、積極的に展開を行っている同社の事業戦略・製品戦略について、今回はProduct Line Manager High End Products and Firmware、Scott Lukes氏にお話を伺った。


2系統のSonicOSで「細かな」サポートを提供

Product Line Manager High End Products and Firmware、Scott Lukes氏
 SonicWALLの主力製品は、今も昔もステートフルインスペクション方式のファイアウォールを軸に、VPN、コンテンツフィルタリングなどの機能を備えたSonicWALLシリーズであることは間違いない。このアプライアンスに対し、同社は2003年の末から2004年にかけて「TZ170シリーズ」「PRO 4060/5060シリーズ」など、第4世代の製品を追加してハードウェアの性能強化を図ってきた。しかし同社が行った最近の施策はそれだけではなく、大きく2つのことが今までと変化している。

 そのうちの1つは、アプライアンス用OSを2本立てのラインアップにしたことだ。これは2003年10月に発表された「SonicOS 2.0」から導入されたシステム。従来は1種類だけのOSを提供したきたのだが、「8割のユーザーはシンプルな環境で、2割のユーザーは複雑な環境で」SonicWALLを運用していることから、それぞれに適したソフトウェアを用意したのである。同社では次期バージョン「SonicOS 3.0」の早期リリースを予定しているが、新版に関してもこの流れを継続し、異なるニーズに対して柔軟に対応できるようにする。

 そのSonicOS 3.0(Standard版)ではDDNS(Dynamic DNS)に対応するほか、SYN Floodに対する防御法「SYN Cookie」の拡張などが行われる。またSonicOS 3.0 Enhancedではこれらに加え、さらにタグVLANのサポート、OSPF/RIPの両ダイナミックルーティングプロトコルサポート、Active Directory/LADP認証への対応のほか、アンチスパム機能も実装が予定されるなど、さらなる機能の充実を目指す意向だ。この2系統のリリースも発表から1年ほどがたち、ユーザーの認知も進んできたようで、「製品によって異なるが、2割~5割程度のユーザーが上位版のEnhancedを利用している」(Lukes氏)という。


パケットの奥深くまで検知する「ディープパケットインスペクション」で効果的な防御を

 また2つ目は、第4世代のアプライアンスへIPS(Intrusion Prevention Service、不正侵入防御システム)機能を搭載できるようにしたことだ。このIPSでは、シグネチャベースの「ディープパケットインスペクション(DPI)」技術を用いて、パケットの奥深く(ペイロード部分)までを検査し、それが正常なものかどうかを判断する仕組みを用いている。その判断の基準となるシグネチャファイルは、同社のWebサイトより最新のファイルをアップデートする仕組みで、これを同氏は「ファイアウォールもデータベースと直結していないと、どうしようもないということ」と評した。

 Lukes氏はこのDPIを採用した理由について、「現在のウイルスから身を守るためには、パケットのヘッダ部分だけをチェックするステートフルインスペクション(SPI)だけでは限界」と断言したが、これは業界全体の流れでもあり、現在では各ベンダがこぞってDPIを導入しはじめている。たとえば、NetScreenシリーズを擁する大手ベンダJuniper Networksも、Screen OS 5.0(現在は同5.1)からこの技術を導入した。

 しかしLukes氏によれば、DPIを採用しているからといって、必ずしもその製品が優れているとは限らないという。同氏は「DPIの仕組みを導入しても、パケットの中から何を探し出すか、ということがわかっていないとうまく働かない。1つのパケットのみを見ても防げない攻撃があり、そうしたものは全体の流れを見ないと検出できないのだ」と述べ、競合に対して、同社の技術は優位にあるとした。

 なお、シグネチャベースの技術に関しては、どうしても事後の対応にまわってしまうため、「すべての攻撃には対処できない」という点を問題視し、別のアプローチを採用しているベンダもいる。これに関してLukes氏は、「事前防御ではヒューリスティック、アノーマリ検知の両技術が主に使われるが、これらは複雑なもの。それだけでは誤検知などを起こして、検知が正確にできない可能性がある」と主張。

 「シグネチャベースの技術は完全なものではないが、その範囲では正確だし、簡単に導入できることから、利用している顧客も多い。今後は、これを完全に捨て去るのではなく、シグネチャベースの技術にインテリジェンスを付加する方法で進めていきたい」とした。

 加えて、「ファイアウォールゲートウェイだけでは、ネットワーク内部のウイルス伝搬を抑えられない」(同氏)とし、エンドポイントでのセキュリティ向上が必要との見解を示した。同社ではこのため、パーソナルファイアウォールソフトの「グローバルセキュリティクライアント(GSC)」も積極的に展開していく意向だ。


セキュアな無線LANソリューションも継続して提供する

TZ170 Wireless
 また、無線LANに関しての取り組みも進められているという。現在の企業向け無線LAN製品では、ノンインテリジェントタイプのアクセスポイントと、インテリジェントな無線LANスイッチの組み合わせて、集中管理型のソリューションを実現しているものが多く見受けられる。

 こうしたアプローチに関してはSonicWALLも同様だという。1つだけ異なるのは、無線LANスイッチのかわりにSonicWALLアプライアンスを利用すること。同社では、アクセスポイント製品「SonicPoint」を6月にリリースするとともに、SonicWALLアプライアンスへ管理機能を搭載させ、無線LANスイッチがなくても無線LANの集中管理を行えるようにした。また、小規模拠点や企業の支社などのために、ファイアウォール一体型のアクセスポイント「TZ170 Wireless」を10月に発売。顧客の規模を問わず、無線LANソリューションの導入が可能なようにしている。

 これらの同社製品に共通する特徴は、セキュアな無線LAN構築が可能なことだ。従来は「IPsec VPNを無線LAN区間に利用することで、安全に無線LANが展開できる」としてきた同社だが、「WPA/WPA2/IEEE 802.11iなどのアプローチで十分ではないかと考える顧客が増えてきた」(Lukes氏)ことから、そちらもきっちりとサポートし、柔軟に対応できるようにしているという。なお、WPA2/IEEE 802.11iでは新たに暗号化アルゴリズムとしてAESもサポートされるようになったが、SonicWALLアプライアンスではIPsec VPNですでにAESをサポートし、ハードウェアでのアクセラレーションを実現している。


SSL-VPNは2005年、検疫ネットワークは検討中

発売が予定されている「コンテンツセキュリティマネージャ 2100 CF」
 一方、今後の製品展開に関してはどうなのだろうか。Lukes氏はまず、2005年の第1四半期に2つの新ハードウェアを投入するとした。そのうちの1つは、コンテンツフィルタリング専用のアプライアンス「コンテンツセキュリティマネージャ 2100 CF」だ。同社では長年にわたって、SonicWALLアプライアンスにコンテンツフィルタオプションを提供してきたが、より大規模な環境にも対応できるようにするため、新アプライアンスを発売することにしたという。

 もう1つは、SonicWALLアプライアンスと100BASE-TX対応レイヤ2スイッチ(24ポート)を統合した「SonicWALL PRO 1260」。同製品を利用することで、ユーザーはより容易にネットワーク管理を行えるようになるという。なお、同製品では各ポート間を流れるトラフィックの制御までは行わないが、これに関してLukes氏は「今回の製品はエントリークラスのもの。ハイエンド製品が登場するのであれば、そうした機能も含まれるかもしれない」と述べ、今後の展開に含みを持たせた。

 一方、2004年には発売されるとしていたSSL-VPN製品は、「2005年の中盤には出す」(Lukes氏)とコミットした上で、多少早くなる可能性もあると述べた。提供形態としては「eコマースなどでは単体製品が必要となるだろうし、小規模向けには既存製品にアドオンする形がよいだろう」と語ったように、SonicWALLアプライアンスにアドオンする形と、専用の新アプライアンスの両形態でリリースされる見込みだ。

 さらに、業界の関心が高まっている検疫ネットワークに関しても、投入を検討しているという。検疫ネットワークを実現するためには、PC側に入れ込まれたエージェントと、ルータやスイッチ、ファイアウォールなどのネットワークインフラ、認証サーバーの連携が必要となるが、「当社ではすでに、(エージェントとして使える)GSCとSonicWALLアプライアンスを持っている」とし、ポイントソリューションしか持たない他社よりも優位な立場にいると述べた。



URL
  米SonicWALL,INC.(日本語)
  http://www.sonicwall.com/japan/

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( 石井 一志 )
2004/10/29 00:01

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