11月1日、日経ソフトウエア/日経バイト主催によるイベント「次世代開発ツールフォーラム Autumn」が都内で開催された。その中で「どうなるこれからのソフトウエア開発」と題し、マイクロソフト株式会社(以下、マイクロソフト)、日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)、ボーランド株式会社(以下、ボーランド)、日本オラクル株式会社(以下、オラクル)の代表者4名によるパネルディスカッションが開催された。
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ボーランド、マイクロソフト、日本IBM、オラクルの代表者4名が参加
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司会である日経ソフトウエア編集長の真島馨氏は、パネリストへ事前にQ&A式のアンケートを実施した上で、このディスカッションに臨んだ。最初の話題は「開発ツールで大切なものは?」というものであったが、各ベンダーとも表現は異なるものの、開発環境の統合化やEoDの推進を重要な問題としてとらえているようだ。
開発環境の統合化は、単にツールとしての統合ではなく、データの共有化、チームやユーザーとのコミュニケーションの促進といった広い領域をカバーする統合環境により、アプリケーションのライフサイクル全体を管理する方向性を持っている。また、開発者の裾野を広げるという意味でも、EoDは今後もますます推し進められるだろう。
「今後MDA(Model Driven Architecture:モデル駆動型アーキテクチャ)開発は主流になるか?」という質問に対して、比較的前向きな回答を寄せたのは日本IBM ソフトウェア事業 SDPテクノロジー エバンジェリストの藤井智弘氏と、マイクロソフト デベロッパーマーケティング本部 プロダクトマーケティング部プロダクトマネジメントグループ マネージャーの磯貝直之氏。
日本IBMの藤井氏は、「MDAかどうかは別にして、モデルによる開発は主流になる」とし、マイクロソフトの磯貝氏は「モデルは使うことにはなるでしょう。しかしそれがUML 2.0とは限らない」と回答している。どちらも、モデルによる開発は主流になるが、現在、ソフトウェア標準化コンソーシアムのOMG(Object Management Group)が提唱しているMDAが、モデリングの主流になるとは限らないとした。また、他の2社もモデルは重要としながらも、すべてがモデルによる開発にはならないと慎重に回答している。
「オープンソースとは?」という微妙な問題に対する回答は、各ベンダーともオープンソースが業界に果たした役割は大きいという認識は持っているものの、それぞれの立場によって回答が微妙に異なった。日本IBMの藤井氏が「オープンソースは実験室」としたのに対し、マイクロソフトの磯貝氏は「ライセンスフリーとは別に考えるべき」との慎重論を展開した。しかし、最も率直な意見を述べたのはオラクル プロダクトオペレーションズサーバーテクノロジー部プロダクトテクノロジーグループ担当シニアマネージャーの杉達也氏である。「オープンソースはもろ刃の剣。共存できれば大きな利点となるが、競合するには大変」というオラクルの杉氏の意見は、多くのソフトウェアベンダーの正直な感想ではないだろうか。
「10年後にも通用する言語は?」という質問に対して、ボーランド株式会社 マーケティング本部 本部長の藤井等氏は「COBOLとC」と回答している。これは過去の数多い資産を、これからも維持していく必要から。「Javaも今後は同様の位置づけとなるだろうが、COBOLやCと比較すると若い言語」と語る。同様な意見としてマイクロソフトの磯貝氏は、「すべての言語には必然性があり、今後もすべての言語は残る」と述べていた。また日本IBMの藤井氏は「Java」、オラクルの杉氏は「Javaの進行形+スクリプト言語」と回答している。
「これからのソフトウェア技術者がどうあるべきか、またどのようなスキルを身に付けるべきか」という2つの質問に対して、各ベンダーとも共通しているのが「コミュニケーションのスキルを身に付ける」ということである。ユーザーにインタビューするスキル、そしてレビューするスキルというのは、結局のところコミュニケーションの技術である。
今後の技術者は、ただシステムや言語に精通していればいいわけではなく、本当に必要なのがシステムを形にしていくことであるのは、各ベンダーとも一致した見解のようである。
■ URL
次世代開発ツールフォーラム Autumn
http://ac.nikkeibp.co.jp/nsw/ktf2/
マイクロソフト株式会社
http://www.microsoft.com/japan/
日本アイ・ビー・エム株式会社
http://www.ibm.com/jp/
ボーランド株式会社
http://www.borland.co.jp/
日本オラクル株式会社
http://www.oracle.co.jp/
( 北原 静香 )
2004/11/02 13:55
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