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携帯電話への対応で「モバイル同期プラットフォームのデファクトになる」


 PCや携帯電話などのプラットフォームや、LANやWiFi、Bluetoothといった通信方式を問わず、ワイヤレスでのデータ同期を行うためのXMLベースの標準プロトコルが「SyncML」。

 元々はEricsson、IBM、Lotus、Motorola、Nokia、Psion、Palm、Starfish Softwareの8社により2000年に設立された標準化団体により策定された標準技術で、現在では2億5000万台のデバイスに採用されている。そして米IntellisyncではSyncML関連の特許を60以上保有し、「Intellisync SyncML Server」をプラットフォームとして製品を展開している。

 アメリカにおいてYahoo!やMSNのオンラインPIMといった一般ユーザー向けサービスのプラットフォームとしても採用されているほか、SiebelやSAPといった企業向けアプリケーションにも対応しており、データ同期製品としては、すでにデファクトに位置づけられている。

 SyncMLは、IrDAでの同期ソフトウェアとしてもWindowsをはじめ広くOEM採用されているため、国内ユーザーも意識せずに利用している場合も多いだろう。このSyncMLのクライアントは、パナソニックやNECから海外向けに発売されている携帯電話端末には、現在でもすでにOEMとして搭載されているという。


インテリシンク株式会社 代表取締役社長 米Intellisync 副社長兼アジア担当ゼネラルマネージャー 荒井真成氏
 インテリシンク株式会社 代表取締役社長 米Intellisync 副社長兼アジア担当ゼネラルマネージャー 荒井真成氏によれば、このIntellisync SyncML Serverは「数千万台のクライアントを対象に、PIMやアドレス帳などの限定したデータ同期をスケーラブルに展開できる製品」であり、一方、同社がこのほどリリースしたのが「Intellisync Mobile Suite(以下、IMS)」となる。

 IMSはSyncMLをベースにより高機能化し、NotesやExchangeとのデータ同期の機能を備えた企業向けの製品だ。IMSの活用ではクライアントへのソフトウェア導入が必要なため、国内と比べPDAの市場が大きいアメリカで、多くの需要を受けて普及している。また欧米ではより高機能なスマートフォンを利用することで、IMSを活用できる環境が整っている。

 海外ではNokiaやEricssonなどの端末メーカーが携帯電話の仕様策定を主導し、通信キャリアはSIM販売などに特化している。これを国内向けに展開するにあたっては、世界でも独特といえる携帯電話市場の広がりと、これに伴うPDA市場の小ささから「携帯電話をデータシンクできるデバイスにする」ための独自の市場戦略が必要になったという。

 携帯電話キャリアの側でも、NTTでは企業向けのFOMA端末である「N900iL」を発売する動きがあり、またボーダフォンでは、携帯電話端末を世界的に統一する戦略を打ち出し、「Nokia 6630」がボーダフォン端末「Vodafone 702NK」として年末までに発売するなどの変化が起きている。Nokia 6630はSymbian OSを搭載しているが、ソニー・エリクソンもSymbian OS搭載端末を開発している。

 インテリシンクでは携帯電話キャリアと交渉を進める一方で、携帯電話向けに、iアプリとして動作するクライアントソフトの開発を進めており、すでに稼動可能な状態にこぎつけているという。こうした製品開発は、国内のチームが独自の機能拡張を行っており、10月28日に発表された「Intellisync Mobile Suite」のWebブラウザを利用する機能などもこれにあたるという。

 アメリカでは、米VerizonWirelessが企業内個人向けに3万ユーザーへASPサービスを提供しているデータ同期プラットフォームにも採用されているが、「国内ではこうしたASPで企業に採用されるには、予算承認などで難しい面がある」という。また問題点として「社員の持つ端末キャリアが統一されていない」点も挙げ、国内企業への導入では経営層の合意が前提になるとの考えを示した。そして今後は「企業とのビジネス経験を持ち、営業力のあるパートナーとの提携を模索していく」と述べた。


IMSを中心としたプラットフォームはデータ同期のデファクトに
 携帯電話からのWebアクセスでグループウェアを利用できる製品は数多く市場に投入されている。しかしスケジュールを確認するには、ユーザー認証後にメニューを選び、特定日時を選択していく必要がある。Webブラウザ動作速度の制約もあるため、「スケジュールを確認するのに45秒程度かかる」場合が多いとのことだ。さらに通話のできない地下などでは利用できない点もデメリットとなる。

 一方で、現在発売されているほとんどの携帯電話端末には、独自のスケジューラ機能が搭載されている。しかし「携帯電話の入力インターフェイスでは、本格的に活用するのは難しい」ため、プライベートな予定はともかく、ビジネス向けとしてはあまり使われていないのが現状だ。

 荒井氏は「モバイルでは、即座にリアクションできる環境が求められる。Palmの成功もこの点が大きかった」とした。現在は仕様上の制約により難しいが、将来的にIMSが携帯電話内のメモリデータまでの同期に対応し、ローカルに保存できるようになればこうした点は解消され、使い勝手も格段に上がることが考えられる。

 IMSは欧米で1年以上前から製品として提供されており、稼動対応サービスも200を超えている。さらにNotesやExchangeといったサーバー製品との接続アダプタはXMLをベースとしたもので、開発は比較的容易とした荒井氏は「国内グループウェアとの接続も可能となる」とした。さらに携帯電話などのクライアント側対応機器も、今後は順調に増加していく予定だという。荒井氏は「いろいろな仕組みは現実的になりつつあり、2005年の春ごろには、モバイル同期プラットフォームのデファクトになる」と自信を見せた。

 さらに将来的にはISMとSync Serverを統合し、Yahoo!などの豊富なオンライン機能と同期可能とすることで、「Intellisyncを中心としたプラットフォームの上で、一般ユーザー向けにも新たなサービスが提供できるようになる」と今後の製品展開の見通しも語った。



URL
  インテリシンク株式会社
  http://www.intellisync.co.jp/

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( 岩崎 宰守 )
2004/11/05 10:57

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