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iSeries生みの親が語る、POWERプロセッサがまだまだ進化できる理由


 iSeries生みの親といわれる米IBMのフランク・ソルティス氏が先ごろ来日し、「iSeriesは顧客の投資を保護しながら、さらに発展を続けることになる」と、今後も現在のアーキテクチャをベースとした進化を続けることを示すとともに、来年以降搭載される予定のPOWER5+あるいはPOWER6への進化についても言及した。

 これは報道関係者を対象にしたラウンドテーブルで話したもので、ソルティス博士は、「iSeriesのユーザーは、テクノロジーの進化よりも、いかにビジネスに生かすことができるのか、といった点に興味を持っている。だが、その点を踏まえても、技術の進化を知ることでiSeriesの将来に理解を深めてもらうことが必要だ」として、まずはCPUの進化について切り出した。


POWERはこれからもスピードを上げられる

米IBMのフランク・ソルティス氏
 ソルティス氏は、CPUの速度向上はもはや限界の域に達している、という議論を引き合いに出し、「CPUの速度は、電子が移動する距離を縮めることで、速度をあげてきた。つまり、チップサイズを小さくすることを目指してきたのもそのためだ。だが、ここまでのサイズになつてくると、トランジスタの電流をオンにしたり、オフにしたりといったスイッチ動作が限界に近づき、オフの状態でも余分な電流が流れるという状況になっている。そのため、発熱しやすいといった問題が発生している」と説明した。

 さらに、「これは多くのCPUメーカーが取り組んできた道で、その技術が限界に達しているために起こっている問題である。チップを小さくすることで、速度をあげるということが限界になり、以前のような大幅な性能向上が図りにくくなっている」とした。

 そして、「IBMは、性能向上のためにチップを小さくするということは行ってこなかった。それがPOWER5になり大きな差となって表れている。そこにIBMならではのイノベーションがあり、世界最大の特許件数を誇るという強みがある。だからこそ、POWERは、これからもスピードをあげることができる」と続けた。

 ソルティス氏によると、再来年にも投入が見込まれるPOWER6は、研究所では、5~6GHzのクロック周波数を実現するという。

 また、こんな比喩もして見せる。

 「POWER5は、優れた冷却モジュールを持っているが、さらに、効率的な動作を行うような工夫が凝らされていることで、低消費電力などのメリットにつながっている。例えば、メモリの速度が、CPUの処理速度に追いつかなくなったことで、CPU側はどこで待ち時間が発生するのかを理解できるようになった。これを利用して、待ち状態をうまく制御することができるようにした。仮に、自分が自動車を運転していて先の信号が赤だった場合に、高速で走っていって、急ブレーキで止まるのと、速度をスローダウンしていって徐行しながら赤信号で止まるのとはどっちが効率的かというと、明らかに後者である。POWERチップでは、待ち状態を感知したときには、スローダウンして処理することで、電圧を下げ、熱を下げ、効率的に動作させることができる。これもIBMならではのイノベーションが発揮されている一例だ」


並列処理に優れたPOWERだから「サーバーに適している」

 もうひとつ、POWERチップには、並列処理に優れた点が、他のCPUとは異なると説明する。

 「サーバーでの用途を考えれば、どれだけ多くの命令を実行させることができるかが問題となる。iSeriesやpSeriesでは、200命令を同時に処理し、さらにこれを2つのプロセッサによって処理することで、400命令が同時に実行できる。IntelやSun Microsystemsは、1ユーザーがひとつのアプリケーションを利用することを前提としているため、並列処理には限界がある。Intelチップでは、1プロセッサで20~30命令が限界だろう。これが、200命令できるPOWERとは、どちらがサーバーに適しているかは、おのずとわかるだろう。IBMでは、4つのアプリケーションを同時に動かすベンチマークテストを実施しているが、これをやっているのは当社だけだ。他のCPUでは、並列処理ができないため、このベンチマークテストそのものを実行することができない」などと話した。


 IBMが、最新の技術を投入したPOWER5を最大64基搭載することができる「IBM eServer i5 595」では、マイクロパーティショニング技術およびIXS、IXA技術の採用により、i5/OS、Linux、AIXに加え、Windowsサーバーの環境統合も可能としている点が特徴だ。

 日本IBMのシステム製品事業iSeries事業部・花井貢事業部長は、「より高度なコンソリデーションを顧客に提供できるようになる。本格的なインテグレーションをやりたいというユーザーに対して、もっとも真価を発揮する製品だといえる」とする一方、「レガシーマイグレーションのための最適な製品とも位置づけられ、すべてのレガシー環境から移行できるコンバージョンツールを用意している」と話す。

 ソルティス博士も、「i5/OS上のアプリケーション、AIXのアプリケーション、そしてLinuxのアプリケーションをひとつのプラットフォームの上で動作させることを将来にわたって保証できるのはIBMだけだ。だからこそ、他社プラットフォームからIBMプラットフォームへの移行を検討しているユーザーが多い」と胸を張る。


SunへPOWERを供給する準備はできている

 一方で、POWERの開発に対しては巨額の投資を行っているが、POWERチップを搭載したiSeriesやpSeriesの出荷数量などから逆算すると過剰投資ではないかとの指摘もある。

 だが、これに対してソルティス博士は、「昨年1年間で、約3000万個ものPOWERチップが市場に出荷されている。任天堂のほか、ソニー・コンピュータエンタテインメント、MicrosoftのXboxにも搭載されることになる。投資に出荷実績が追いついていないということはない」と反論。「最先端の技術が求められるゲーム機の分野において、相次ぎPOWERが採用されるのは、当然のことだといえる」と話した。

 さらに、「POWERは、Hewlett-Packardなどにも出荷されており、Sun Microsystemsにも供給する準備がある。今後2年でさらに多くの企業が、POWERを採用することになるだろう」と予測した。

 Sun Microsystemsとの話し合いについては、具体的な進展があるわけではない、としながらも、個人的な意見ではあるがとして「Sunの特徴は、Solarisとそのアプリケーション、および関連ツールを持っている点にある。CPUをPOWERにすれば、Sunの特徴がさらに発揮でき、品質の高いサーバーを提供できるようになる」などと語った。

 最後にソルティス博士は、「現在のPOWER5では、80Wの消費電力だが、これをPOWER6では性能をはるかに進化させながら70Wに下げることを目標にしている。今後も継続的に投資を行っていくことには変わりがなく、将来にわたって顧客の投資が保護されることが明確に示されている」と繰り返し強調した。



URL
  日本アイ・ビー・エム株式会社
  http://www.ibm.com/jp/

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( 大河原 克行 )
2004/11/08 10:54

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