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日本IBMのサーバー・ストレージ事業はPOWER5と仮想化エンジンが差別化のキー


 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は11月8日、サーバー、ストレージ事業の2004年第3四半期までの推移と今後の事業展開に関するプレスセミナーを開催した。


第3四半期までのサーバー・ストレージ事業は新製品ラッシュで好調に推移

日本IBM 常務執行役員 システム製品事業担当 橋本孝之氏
 日本IBMの2004年は、常務執行役員 システム製品事業担当の橋本孝之氏が「ここ10年来の投資の成果が製品として投入され、これほど新製品が出た年は近年ないほど」と述べたように、サーバー、ストレージの製品ラインアップが大幅に変更された。

 IAサーバーのxSeriesは、これまでの中心だったパートナー経由での販売から、5日間の納期を保証する価格競争力を備えた中堅中小企業向けの「Expressポートフォリオ」などの製品により、Web直販が2桁成長を記録した。

 ブレードサーバーの好調については、橋本氏が「IAビジネスのリード役」と位置づけるほど。ホスティングサービスなどの基幹システムに導入されるケースも増えており、今後も日本IBMではEM64T対応Xeon搭載サーバーにフォーカスしていくという。さらにIBMでは、Intelと共同でブレードサーバーの仕様を公開し、「クロスライセンス契約が必要となるものの、無料で特許が使える」ようになった。すでに世界で80から賛同を得ているという。こうした動きについては「ブレードサーバーの仕様は各社各様なのが現状。IBMの標準を、クライアントでのPC-AT規格と同様に広めたい」とした。

 zSeriesは、2003年から5期連続で好調が継続しており、前年比では100%増となっている。一昨年までは20~30%だった「ニューワークロード」が総出荷のうち50%を占め、うち70%、全体では35%がLinux関連の導入となっている。一方、5月に発表された「z890」についても下げ止まり、成長に転じているが、全体からは大きな割合ではないという。橋本氏は「JavaやWebSphereなどのWeb系インフラへの適用を強化し、今後もニューワークロードの比率を一層高めていく」とした。

 iSeriesは、POWER5を搭載した「i5シリーズ」が5月に発売されて以来、出荷は順調に推移している。全体の70%はAS400からの移行で、新規導入の30%のうち10%は国産メインフレームからのダウンサイジングだという。橋本氏は、「特にローエンド、ミッドエンドのメインフレームの受け皿として強固な位置付けになっている」とした。

 UNIXベースのpSeriesは、来週より出荷予定の64Wayモデルが、旧帝大系の基幹系システムへIBMのサーバーとして初めて導入されるなど、受注状況はすでに2ケタに達した。また計算業務のアウトソースやJavaシステム開発を手がけるアルバス株式会社では、オープンCOBOL言語であるACUCOBOLにより、国産メインフレームからpSeries 630へと移行し、運用コストを1億円から半分の5000万円へと削減、計算業務の処理時間も60分から4分へと短縮できたとの事例を取り上げ、ハイエンドUNIXとしての位置付けも強固なものとする一方、POWER5を使った性能の高さとコストパフォーマンスはレガシーシステムの受け皿になる」と述べた。

 ストレージ製品に関しては、ミッドレンジを含め、ブランドを統一。従来はzSeries、pSeriesとあわせて導入される大型ストレージが日本IBMの強みだったが、SANスイッチや、テープなども伸びているという。さらにPOWER5をサーバー以外に初めて投入し、ロジカルパーティションの機能もあわせて提供するなど、「価格性能比も他社の3倍」と豪語。現時点では出荷前ながら「顧客からの問い合わせや引き合いも多い」と述べ、「今後もっとも大きな成長が期待できる領域」とした。


他社に差をつけるPOWERアーキテクチャと仮想化エンジン

 これらの製品を支えるキーとなる技術については、POWERアーキテクチャとVirtualization Engine(VE:仮想化エンジン)の2つを挙げた。

 POWERアーキテクチャについて、SAP APベンチマークでの比較では、64Wayシステムで富士通の128Wayシステムと比べ1.5倍、サン・マイクロシステムズの128Wayシステムとは2倍の差をつけている例をあげ、高い性能とコストパフォーマンスをアピール。「サーバー、ストレージに限らず、PS3やGameCube、XBOX、Apple製品などへのOEMを含め、事業拡大によりコストダウンを図っていく」と語った。

 そしてCPUに関する技術的なトレンドとして、プロセスの微細化は発熱の問題もあり限界に近づいている」とし、「IBMはもともとチップ単体の技術だけでなく、これを並べてパッケージするインテグレーションが優れており、これは業界の方向性にもなりつつある。POWER5のトータルスループットの速さは他社に比べて特徴がある」と述べた。

 次に橋本氏は、「国内企業では、ERPやCRMといったアプリケーション単位のバーティカルな投資がほとんどで、多様なサーバーが企業に導入されている」との現状を指摘。増加する管理コストを削減し、新規ソリューションへの投資を促したいとした、また稼動時のCPU利用率が、UNIXサーバーでは1997年の45~47%から現在では15~20%へ、IAサーバーでは同じく35~65%から7~15%へと低下しているとのフォレスターリサーチとIDCの調査を示し、「ソフトウェアライセンスのコストも増加している」と述べ、複数サーバーをひとつに見せて運用する仮想化技術の必要性を指摘した。

 仮想化は流行語となっているが、「IBMでは1980年代からzSeriesでロジカルパーティションを手がけてきた。またダイナミックLPARは2001年に確立しており、仮想化技術に関わる歴史は長い」と先行の利があることを強調。「VEでは、1万台をひとつのシステムとし、小さなサーバーでも集まれば大きなパワーを発揮できることが将来的な目的」とした。9月に発表したミドルウェアである「VEスイート」は、「モニタリングが現段階で目的になっているが、IBMとサン、WIndsowsマシンを1つのサーバープールとして運用できる。最終的にはダイナミックなワークロード管理に持っていきたい」と見通しを語った。

 こうしたVEを用いたサーバー統合については、「国内に数千から1万台ある」他社メインフレームからの移行ニーズをターゲットに、システム移行センターを営業・技術サポートあわせて10名体制で新設する。さらに年内は10社程度のパイロット移行と見積もり査定を無償で提供する。この見積もりでは、他社製品を含むサーバー・ストレージの情報を蓄積したデータベースにより、現在のシステムを入力することで、移行の候補となるIBMサーバーと、具体的な削減効果を提示するもの。16社のSIパートナーとも協業して事業展開を図っていくという。



URL
  日本アイ・ビー・エム株式会社
  http://www.ibm.com/jp/
  お客様事例:アルバス株式会社
  http://www-6.ibm.com/jp/solutions/casestudies/20040521albus.html

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( 岩崎 宰守 )
2004/11/08 16:42

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