OSDLジャパンは11月12日、米OSDL マーケティングディレクター ネルソン・プラット氏の来日に伴い、活動内容に関するプレス向けの説明会を開催した。
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OSDLジャパン ディレクターの菊地健太郎氏
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OSDLジャパン ディレクターの菊地健太郎氏は、「2000年のOSDL設立当時は、Linuxの開発・テストのファシリティ提供でプロモーションを図ることをメインの活動としてきた」と述べた。しかし現在では、60社に達した会員企業とのコミュニケーションや、政府主導の「OSS推進フォーラム」をはじめとした他団体との連携に軸足が移っているとした。
菊地氏自身がOSDLジャパンに参加したのも、こうした動きの一端であり、近々オフィスも移転してこうした変化に対応していくという。そして「今後も米OSDLと一体となって活動を展開し、Linuxの浸透を図りたい」とした。
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米OSDL マーケティングディレクター ネルソン・プラット氏
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米OSDL マーケティングディレクター ネルソン・プラット氏は、「Linuxプラットフォームは、OracleやMicrosoft、SAPのような1社提供ではない。さまざまなインダストリ、複数のディストリビューションといったパーツで構成される」と述べ、OSDLでは一般ユーザーや開発コミュニティ、導入企業、ISV、SIなどLinuxに関わるすべての人々の「Center-of-Gravity(重力の中心)としての存在」を目指しているとした。
参加する企業団体の数は現在のところ65で、これは2003年から倍増している。うち日本企業は16社で、中国の2社をあわせ、全体の32%がアジア太平洋の参加ということになる。2003年からは日本国内ローカルのワーキンググループも立ち上がっている。プラット氏は「2005年には100以上になるだろう」と見通しを語った。
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ODSL参加企業・団体数の推移
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参加企業・団体の一覧。青が国内企業、赤が中国企業
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Linuxカーネルの開発プロセスでは、数多くのコントリビューターが開発したコードを、50人のサブシステムメンテナーが取りまとめ、開発版メンテナーのリーナス・トーバルス氏と、安定版メンテナーであるアンドリュー・モートン氏がそれぞれのカーネルに取り入れていく。プラット氏は「各プロセスではコードがレビューされ、ブラックボックスがない点が最も重要」とした。
そのLinuxのサーバーOSとしてのシェアは拡大を続けている。IDCによる2003年調査では約15%で、2006年ごろには「WindowsとLinuxに集約されていくだろう」と予想した。
OSDLには現在、キャリアグレードLinux(CGL)、データセンターLinux(DCL)、デスクトップLinux(DTL)と3つのワーキンググループ(WG)があり、「それぞれで必要となるテクノロジーにフォーカスし、スペックの策定が進められている」。
こうしたWGの特徴としてプラット氏は「カスタマーやNTTや日立などの大企業の参加を通じて、必要となるLinuxへの要求を集めてスペックを決定し、これをコミュニティに投げかける」仕組みを挙げた。こうして決定したスペックについては「ディストリビューションにも採用してもらえるように働きかけている」とのこと。
さらに「市場の要求を本当に知っているのはエンドユーザー」としたプラット氏。OSDLでは、技術者の参加するテクニカルWG、「メーカーのマーケティングピープル」が参加するマーケティングWGのほか、Linuxの大規模ユーザーから、直接要求を聞くカスタマーユーザーワーキンググループを組織しているという。こうした試みはすでに国内でも行われているとのことだ。
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Linuxカーネルの開発プロセス
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サーバーOSの出荷金額シェア。「無償のディストリビューションを考えれば、さらにLinuxのシェアは高い」
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WGにおけるスペック策定へのプロセス
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3つのWGのうち、DTLは、2004年2月に立ち上がった新しいWGだ。プラット氏は「すべてのデスクトップをLinuxにすることが目的と誤解されているが、Microsoftはすばらしい会社で、Windowsはよい技術と考えている」とし、「Windowsからの置き換えは重要でない」と語った。
しかし「Windowsがいかに優れていても、すべての場面で正しい選択肢とはいえない」と述べ、Linuxデスクトップが適する領域へ向けて活動を進めていくとした。またDTL WGでは、現在クライアントPCのみをターゲットとしているが、PDAや携帯電話といった組み込み機器も今後は視野に入れるとした。
なおOSDLでは、2005年1月31日から2月2日まで、第1回のテクニカルカンファレンス「OSDL Linux Summit」をアメリカ・サンフランシスコで開催する。2人のメンテナーのほか、Apacheを開発したブライアン・ベレンドルフ氏も講演を行うという。
■ URL
OSDLジャパン
http://www.osdl.jp/
OSDL Linux Summit
http://www.osdllinuxsummit.org/
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( 岩崎 宰守 )
2004/11/12 18:18
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