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「トヨタ方式を採用した」NECのコンピュータ機器生産拠点


 日本電気株式会社(以下、NEC)は、山梨県甲府市にある業務向けコンピュータ機器の生産拠点「NECコンピュータテクノ株式会社本社・甲府事業所」を報道関係者向けに公開した。

 NECコンピュータテクノは、主にNECの企業向けハードウェアを担当する「コンピュータプラットフォーム ビジネスユニット」直下に位置づけられ、スーパーコンピュータをはじめメインフレーム、各種サーバー、ワークステーション、ストレージなど、PCを除くほとんどの機器を生産するNECの100%子会社(PCはNECパーソナルプロダクツが担当)。茨城にも事業所を構えるが、一部を除くほとんどの機器が甲府で生産されるため、NECにとって甲府事業所は最重要拠点の1つに位置づけられる。


NECコンピュータテクノ株式会社本社・甲府事業所 NECコンピュータテクノ社長 那須賢治氏 NECのコンピュータ製品群とNECコンピュータテクノが生産する領域

 甲府事業所ではハイエンドからローエンドまで幅広い機器が出荷されているが、高い技術力を要するスーパーコンピュータやハイエンドサーバーなどは国内で生産されるのに対し、ローエンドサーバーなどコスト競争力が求められるものは、CPUやHDDなどの部材を海外で生産し、甲府ではこれらを各顧客の要望に応じた仕様に組み立てるBTO生産が行われている。

 現在、甲府事業所で全面的に取り組まれているのが、工程において無駄を徹底的に省き、品質の向上と納期の短縮化を目指す「生産革新」だ。PCサーバーにおいてトップシェアを争うデルに代表される海外ベンダーらの進出や製品環境のオープン化により市場の競争が激化し、それまでの方式では無駄が多く価格や納期などで大きく差をつけられてしまった。「このままでは生き残れないと判断した」(NECコンピュータテクノ社長 那須賢治氏)同社は、諮問委員を務めていたトヨタ自動車の張富士夫社長を通じてトヨタの生産方式を1998年ごろより段階的に導入し生産革新に着手した。現在ではNECグループすべてが採用しているという。


トヨタ生産方式の全体構想。サプライヤー間では「かんばん」によって必要な資材をほぼリアルタイムで調達し、生産ラインでは「みずすまし」と呼ばれる人が工場内で部品や完成品をの流通させる 従来は自動化されたベルトコンベア式生産ラインでの大ロット生産だったのに対し、現在は人間がラインを構成し小ロット生産を行っている 工場の生産工程

工場内の生産ライン。基本的に組み立て分解が容易な多数の台車を組み合わせて構成されている ボード生産ライン。チップの配置や導線の印刷を行うマシンが並び、手前から奥に行くにつれボードが出来上がっていく ボード生産マシン。ものすごい速さでチップの配置や導線の印刷を行っていく

組立・生産ライン。台車で構成されほとんどが人の手で行う。ラインは常に効率化が検討され年々短くなっているという 品質検査を行っているところ。 最後は目視で検査を行う。ここでNGが出る場合もある

スーパーコンピュータ「SX-8」も基本的には同じ流れで作られる 組立・梱包が完了した製品は顧客最寄りのターミナルに直接配送される

 現在ではローエンドサーバーにおいて注文日より6営業日、短納期モデルで2営業日で出荷可能とし「海外で生産を行うデルより納期の短縮化を実現した」(執行役員常務 近藤忠雄氏)。また「地球シミュレータを構成するスーパーコンピュータ数百台を3カ月ほどで納品した」(那須氏)という実績もある。

 生産革新により実績をあげている甲府事業所だが、那須氏は「6~7年間取り組んできたところで、まだ“トヨタ方式”になったとは言えない」と、生産ラインを中心にさらなる効率化と製品の高品質化を追求していく意欲を見せた。



URL
  NECコンピュータテクノ株式会社
  http://www.nec.co.jp/kofu/

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( 朝夷 剛士 )
2004/11/19 00:00

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