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「ITSSは人材育成の仕組みであり人事評価の尺度ではない」ITSSユーザー協会


 ITSSユーザー協会と株式会社クイックは11月26日、ITSS(ITスキル標準)導入・運用するためのスキル管理システム「SSI-ITSS」(スタンダード・スキル・インベントリー・フォーITSS)と「スキル・アクティベーションコンサルティングサービス」についての説明会を開催した。

 ITSSユーザー協会は、経済産業省がIT国際競争力の向上を目的として2003年12月に発行したITスキル標準を「民間でどう活用できるかという観点で」2003年12月に31社の企業によりスタートしたNPO法人。会員企業はこれまで1年弱のうちに142社へと伸びているという。


ITSSユーザー協会 専務理事 事務局長 高橋秀典氏
 この背景には中国やインド、ベトナムの優秀なエンジニアが、安い単価で雇用できることがある。ITSSユーザー協会 専務理事/事務局長 高橋秀典氏によれば、「例えば外資企業のほとんどは、インドに開発部門を持っている。アメリカでは海外に仕事が奪われることからIT系大学の学生が少なくなっている」現状があるという。エンジニアの9割がITSSのレベル1~3に分類されるともいわれる日本でも状況は変わらず、こうした「アジア諸国の驚異は、そもそも経済産業省がITSSを発行した理由」ともなっている。

 ITスキル標準そのものは、「経産省の出している文書は700ページもあり理解が難しい」としながら、結局のところは「データベース設計、ネットワークチューニングなど、対象職種が細分化されたスキル領域と、過去の経験からこれに関するスキル熟達度を計るという2点からなるもの」だという。そしてエンジニア個人にとっては有用であるとする一方、「企業での業務の実情には沿っていない」とした。

 「ITSSは人材育成の仕組みであって、人事評価の尺度ではない」とした高橋氏。企業でITSSを活用するためには、「例えば売上目標を達成するために、どういうスキルを持った人がどのくらい必要なのか。ビジネス上必要な人材を雇用したり、不足するスキルを的確に教育するためには、必要なスキルの詳細をカスタム指標として定義する必要がある」とした。またこの際にITSSそのものは「必要な人材像を定義するうえでの辞書としての位置づけとなる」とした。


ITSSそのものの構成要素は「スキル領域とスキル熟達度」の2つのみ 職種ごとに必要なスキル領域ごとのレベルが定義されている ITSSユーザー協会では、企業でのITSS普及を目指す

 高橋氏は、ファイザー製薬のアジア太平洋地域を担当するIT部門600人を対象として、このスキル定義を支援するコンサルティングを行っている。「このうち日本には30人がおり、アウトソース先のベンダーから120人強が出向している。ファイザーでは手段としての技術は外注するという方針を打ち出しているが、単なる外注管理ではなく、EAの業務分析やファンクションモデリングなどにより、たとえばデータベース設計がデータモデルに適するかどうか、また機器選定の際などにベンダーの提案を判断できる、全体を大きく見る力が求められている」という。

 この事例から高橋氏は、「エンドユーザー企業はITSSを調達に使う。導入の状況を見てもITベンダーは立ち後れており、アウトソーサーはこれを突きつけられる形になっている」と現状の危機感を訴えた。

 ITSSユーザー協会では、民間でのITSS活用を促す目的で、ITSSの定義を実情に沿って分解した2500項目からなるスキルデータ「SSI-ITSS」を公開している。株式会社クイックは、このデータをASPサービスとして無償で提供するとともに、企業ごとに独自のカスタムスキルを定義する作業を支援する有償のコンサルティングサービスもあわせて提供している。



URL
  ITSSユーザー協会
  http://www.itssug.org/
  株式会社クイック
  http://www.919.jp/


( 岩崎 宰守 )
2004/11/29 16:47

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