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富士通のサーバーの生産拠点、富士通ITプロダクツを行く

徹底した品質へのこだわりが身上

石川県かほく市にある富士通ITプロダクツ
 富士通株式会社は11月29日、同社のサーバーおよびストレージの生産拠点である株式会社富士通ITプロダクツ(以下、FJIT)の内部の様子を報道関係者に公開した。

 FJITで生産しているのは、UNIXサーバーの「PRIMEPOWER」、グローバルサーバー(メインフレーム)の「GSシリーズ」、マルチサーバーの「PRIMEFORCE」、ストレージの「ETERNUS」、ネットワークサーバーの「IPCOM」といった製品群。同工場から約5分の木津工場では、イメージスキャナーやプリンタの生産も行われている。

 つまり、FJITは、福島の富士通アイソテックで生産しているIAサーバー以外のサーバー製品の生産を、一手に担当しているほか、生産している製品はすべて海外にも輸出する、いわばエンタープライズプラットフォーム製品のグローバル戦略を担う生産拠点ということになる。

 もともとFJITは、かつてのオフコンであるKシリーズなどの生産を行っていたPFUの笠島工場の地に、2002年4月に、富士通沼津工場の上位サーバー製品の製造部門、富士通熊谷工場のプリント板ユニット製造部門、富士通長野工場のストレージの製造部門を、それぞれ移管して設立した企業だ。

 資本金4億5000万円のうち、55%を富士通が、45%をPFUが出資しており、社員数は544人、外部の協力会社7社の社員をあわせると955人の体制となる。

 2002年度の売上高は820億円、2003年度および2004年度はそれぞれ800億円弱の売上高になるという。

 来年度にも投入される予定の次世代IA基幹サーバーもFJITで生産されるほか、今年6月に発表したサン・マイクロシステムズとの提携によって、2006年度以降、一本化されるUNIXサーバーに関しても、同拠点で生産されたプリント板ユニットが、サンの生産拠点へと供給されることになるという。


富士通ITプロダクツの廣澤泰隆社長 富士通ITプロダクツにおけるものづくりフロー

試験、検査を徹底する製造拠点

 FJITにおける生産体制を見てみよう。

 FJITの社屋は、第1棟から第5棟まであるが、主に、第4棟および第5棟で生産が行われており、双方の棟が連結している。

 6階では、MCM(Multi Chip Module)およびSCM(Single Chip Module)の生産が行われており、10種類のMCMで月産1000枚体制、SCMでは40種類が月産1万4000枚体制となっている。

 実装工程、試験工程の2つが、6階フロアだけで完結する形となっており、実装工程ではクリーンルーム化が図られるとともに、試験工程のなかでは初期不良を検出するためのエージング検査が24時間以上行われる。

 5階、4階は、マザーボードの生産ライン。5階では、PRIMEPOWER 2500やGSシリーズなどの多層が必要となるマザーボードを生産し、4階では「汎用」と呼ばれる中型、小型のマザーボードの生産が行われる。

 SMT(Surface Mount Technology)ラインを導入し、自動化試験ラインの導入を図るとともに、目視による検査ラインを導入し、徹底的なチェックを図っている。そのほか、最適なパフォーマンスが出るように、クロックチューニングを行うといった作業もここで実施される。

 同工場内で生産されるプリント基板は、約1500種類。4層から40層までの基板が生産され、月産能力は15万枚に達するという。

 3階フロアは、サーバーの生産ライン。ここではPRIMEPOWERやIPCOMなどが生産されている。サーバーの生産ではI字型のセル生産方式を採用しており、一定の作業をひとりが行い、それが完了すると次の作業者へと移行する。作業者と作業者の間にバッファというスペースを置き、作業者の手待ちがないようにしている。

 「仕掛かり品が発生するというマイナスはあるが、手待ちとどちらが効果があるかといった判断の上で、この手法を採用している。次の作業の仕掛品が待っていることで、作業を早く進めるという効果も狙った」(富士通ITプロダクツ・廣澤泰隆社長)という。

 従来は部品倉庫を外部に置いていたが、省スペース化への取り組みなどによってラインの横に部品ストアを配置し、これにより、必要な量だけを必要な時にタイムリーにラインに供給することが可能になった。

 同フロアでは同時にOSのインストールやカスタムメイドセンタでユーザーごとのソフトウェアのインストールなどを行うほか、出荷前の検査も行われる。PRIMEPOWERの小型サーバーは月1500台、IPCOMは月50台の生産が可能だという。


MCMの製造ライン。クリーンルームの形態となっている MCMの試験ライン。24時間以上のエージング検査を行い、この時点で初期不良を検出する トヨタ式のカイゼンと、ジャストインタイム方式を採用した生産革新に挑む

富士通ITプロダクツで生産しているPRIMEPOWER 2500のマザーボード。最大128個のCPUが実装される 基板製造装置。このフロアでは最大40層の基板まで生産できる 検査は機械だけでなく、目視でも行われる

中型の基板についても、目視で検査は欠かさない CPUまわりの検査ではクリーンルームを活用。フロア内に設置している

3階のアセンブリフロア。I型のセル方式を採用している 生産工程とバッファ工程を区分けし、手待ちをなくす工夫を取り入れた

 2階フロアは、ストレージのETERNUSシリーズおよび大型サーバーのPRIMEPOWER 2500やGSシリーズ、PRIMEFORCEなどの試験を行う。

 とくに、ストレージの検査に関しては、徹底した検査が行われる。まずストレージを受け入れた時点で、5度から37度のエージング検査を全量で実施。その後、4コーナーマージン試験と呼ばれる電圧/温度組み合わせ試験、オン・オフ繰り返し試験、電圧マージン、温度マージン試験を行ったのちに48時間の高温検査を行う。さらに、インターフェイスなどを含めたユーザー構成としたのちに、さらに4コーナーマージン試験を繰り返し行うという入念な検査を行う。

 「完成した段階で品質を検査するのではなく、部品の受け入れ段階から品質を高めることを目指している。いわば、作り込み品質を追求している。この取り組みこそが品質を高めながら、全体コストを引き下げることに直結する」と廣澤社長は語る。

 GSシリーズなどの大型サーバーでは、試験段階で、その当該機種の上に納入先のユーザー名を明確に示している。これはかつての沼津工場などでも行われていた富士通ならではの手法。試験担当者が、どの顧客に納入するのかという意識を持って作業することを狙いとしているが、この富士通の伝統的なやり方がFJITでも採用されていた。

 なお、1階は配送口となっており、生産設備は置かれていない。


2階のRAID試験工程。全量のエージング検査をはじめ、徹底的な検査を行う。製造手番の8割が検査工程といわれるほどの徹底ぶり これもRAIDの検査。48時間の高温試験。すべての検査が終わるのに12日間かかるという GSシリーズの最終検査工程。この検査を経て、ユーザーに納品される

FJITに見る3つの特徴

 FJITには、いくつかの特徴がある。

 ひとつは、徹底した品質へのこだわりだ。

 ストレージや大型サーバーでの生産手法でもわかるが、手番の約8割が試験工程といってもいいぐらいに試験を徹底させている。

 廣澤社長が先に触れたように、「作り込み品質の徹底が、生産コスト全体の引き下げにつながる」との意識が工場内に浸透しているほか、MCMからプリント基板、装置組立、試験までの一貫生産体制が、品質の向上に寄与している。40層にものぼる大型サイズ基板への特殊実装技術、チューニング技術、解析技術力も、富士通グループとして培った長年のノウハウの蓄積によるものだという。

 余談になるが、FJITでは、品質面でのISO9001、環境のISO14001、労働安全衛生のOHS-MSの3つの認定を2003年1月に同時に取得。さらに、2004年12月には認定継続を得る予定だ。

 この3つの活動を同時に推進している工場は、日本では他にはないという。

 「この3つのバランスが必要。そのため、工場の方針を掲げる際にも、この3つの取り組み、方針を同じ紙のなかに書くことで、すべての取り組みが必要だという意識づけをしている」と廣澤社長は話す。

 また、提案活動を積極化するために、意見を提出しやすい仕組みを構築。工場内の随所に設置された「Idea POST」を利用して手書きで記入した専用シートをスキャナーで読み込ませると、それがそのままデータベース化され、担当者にわたる。さらにこれに回答した人にも報償制度を設けることで、活性化を図っている。結果として、今年度上期だけで1万5909件の提案実績があったという。これも、FJITの隠れた原動力となっている。


 2つめの特徴が、環境への取り組みだ。富士通グループでは沼津工場の先進事例があるため、環境面ではFJITはやや遅れが感じられるが、それでも、今年11月に、100%ゼロエミッションを達成し、生ゴミや混合物のリサイクル、浄化槽汚泥の消滅などを実現した。

 また、雨水回収システムにより、夏季の屋上散水による冷却効果、冬季の構内融雪のための散水などに利用している。

 今後もこうした環境活動には積極的に取り組んでいく考えだという。

 そして、3つめが、今年4月から取り組んでいるトヨタの生産方式の導入による生産革新だ。

 2005年度末までに、品質2倍、製造手番2分の1、棚卸し資産2分の1、スペース2分の1という目標を掲げるとともに、生産ラインだけでなく、事務部門などの改善にも取り組む。

 今年4月から指導者を招いて、2週間に1回のペースでコンサルティングを受けており、まずは現状の姿とこれをどう整流化するかといった点に取り組んでいる。

 現在は、現場の社員が、手書きで「物と情報の流れ図」を書き、工場内のあちこちに貼り出しているのが目につく。どこに無駄があるのか、どこを改善できるのかといった点を一目でわかるようにしているのだ。

 実際、この効果は出始めている。

 MCMの生産ラインでは、この「流れ図」をベースに改善を加えたところ、これまですべての工程を完了するのに1kmもの距離が必要だったものが、乾燥機の複数導入や1階にあった試験工程を6フロアに移行することで、余計なルートを通らないようになり、わずか150mに短縮できたという。

 「生産の基本は、当たり前のことを当たり前にやるということだが、トヨタ生産方式は、当たり前のことをしつこく当たり前に行う、という点が違う。まだ、始まったばかりだが、毎日のように工場の中が変化している」と廣澤社長は語る。

 FJITは、これからも変化を続けることになるだろう。


トヨタの生産革新を導入。すべて手書きで「物と情報の流れ図」を書く。これで生産の問題点を洗い出す 富士通ITプロダクツの方針を示したものを随所に張り出している。品質、環境、労働安全衛生方針の3つに同時に取り組むのは例がないという 手前が導電床、奥が通常の床。導電床の採用で作業効率が高まったと社員には好評だという

工場内で使われるものはすべて静電防止を施している。このプラスチックのケースも静電防止処理をしたものを使用 従業員が簡単に意見を出せるように設置したスキャナー「Idea POST」 この紙に書き込んで、スキャナーを通せば受付が完了する


URL
  富士通株式会社
  http://jp.fujitsu.com/
  株式会社富士通ITプロダクツ
  http://jp.fujitsu.com/group/fjit/


( 大河原 克行 )
2004/12/01 00:18

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