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マイクロソフトが語る「オープンソースとの関係と将来」

Internet Week 2004 講演

マイクロソフト株式会社 執行役 法務・政策企画本部統括本部長 平野高志氏
 マイクロソフト株式会社 執行役 法務・政策企画本部統括本部長の平野高志氏は12月1日、Internet Week 2004の中で開催されたOPEN SOURCE WAY 2004で講演し、マイクロソフトにおける知的財産権への取り組みとオープンソースやGPLに対する同社の見方を示した。

 商用ソフトベンダーの代表ともいえるマイクロソフトとオープンソースというと、常に対決している犬猿の仲のようなイメージを持つ人も多い。しかし平野氏によると「ここ2年の間に双方とも変わってきた」という。かつてマイクロソフトはソフトウェアのソースコードは門外不出を原則としてきたが、現在では一部ソフトウェアのオープンソース化やシェアードソースとしてソースコードの開示を始めている。一方オープンソース側も「お金儲けはタブー」から「ビジネスと相対するものではない」へと考え方の主流が移っている。マイクロソフトでは「商用ソフトとオープンソースソフトは共存するものとの考え方で一致している」という。

 しかし両者の間には知的財産権に対する考え方の違いがある。商用ソフト側は知的財産権を、ソフトウェアを構成するコードやドキュメント、サービスと並ぶ重要なコンポーネントと位置づけている。「ソフトを販売した利益から新しいソフトを研究開発する費用を捻出(ねんしゅつ)するため、コピーが横行するとビジネスにならない。そのため、一定の法的保護が必要となる」(平野氏)


知的財産権における補償の比較

商用ソフトとオープンソースの間の課題
 一方、オープンソースは「大学が起源となっている」ことから「特許などにお金を払う習慣がない」と平野氏は指摘する。大学での研究開発費は学費や国の経済援助などによってまかなわれているため、商用ソフトのビジネスモデルに基づいていないということだ。これにより「多くのオープンソースソフトは知的財産権の検討を経ずに開発されている」というのがマイクロソフトの見解だ。このギャップを埋め、いかに新しいビジネスモデルを創造するかが両者が共存する鍵となる。

 マイクロソフトでは知的財産権において、特に「特許に重点を置きはじめている」という。この背景として、米国において同社のソフトウェアが特許を侵害しているとする訴訟が増加しており、特に「マイクロソフトからはお金をとりやすい」とターゲットにされていることが大きいという。このため同社は2003年12月に公表した新方針のもと、約3,800の特許を取得し、顧客に対する補償を強化するとともに「標準的な条件とロイヤリティ」で他者に許諾しているという。特に顧客に対する補償において上限金額を撤廃するなど「他社と差別化できている」とのことだ。

 オープンソースソフトの開発において、すでに特許として認められている技術を利用したり改変してしまうと、開発者が気づかなくても侵害していることになる。平野氏が見るところ「あぶないものが多数ある」状態だ。

 また、GPLが特許に対して否定的な取り決めをしているのも問題となっている。例えばオープンソースに対して改変を行う場合、特許を取得している者がその技術を盛り込むと、そのソースに対してほかの者に手を加えられることを認めるか、あるいは頒布を中止するしかない」とGPLで規定されている。つまり「特許が侵害されることを予想しておかなくてはならないということ」(平野氏)となる。平野氏はこのようなことを中心に「今後コミュニティと協業して検討していく必要がある」とした。



URL
  マイクロソフト株式会社
  http://www.microsoft.com/japan/
  OSDNジャパン
  http://osdn.jp/
  Internet Week 2004
  http://internetweek.jp/

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( 朝夷 剛士 )
2004/12/01 18:06

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