日本電気株式会社(以下、NEC)は、2005年6月をめどに、東証一部に上場しているNECソフト株式会社およびNECシステムテクノロジー株式会社の2社の株式を、公開買付けにより取得し、100%子会社化するとともに、ソフト・サービス事業を再編する。
NECの金杉明信社長は、「NECグループとしての全体最適を目指した上での判断。NECグループのSI力、ソフトウェア開発力を最大限に発揮する事業体制を構築するのが狙い」と今回の再編の狙いを話す。
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左からNECシステムテクノロジーの高橋利彦社長、NECの金杉明信社長、NECソフトの池原憲二社長
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子会社化される2社の概要
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第1ステップとして、2005年6月に、2社を100%子会社化するとともに、同時にNECグループのビジネスユニットのひとつと位置づけ、NECのシステムサービスビジネスユニット、MCシステムユニット、ソフトウェアビジネスユニットなどと同列とする。NECソフトおよびNECシステムテクノロジーの2人の社長は、NEC執行役員を兼務する。
この時点で、NEC本体から、NECソフトなどに開発委託をしていたというような従来の上下関係はなくなり、事業分担を明確化する。
さらに、来年度下期(2005年10月以降)は、第2ステップとして、NECソフトを中心に、地域ソフト会社などを取り込んだSIサービス子会社と、NECシステムテクノロジーやNEC通信システムを母体としたソフトウェア開発子会社の2社を新会社として発足させ、再編を図る。
NEC本体では、大規模プロジェクトにも対応できるSEを700人規模で増強し、プロジェクト対応機能を持つとともに、ソフトウェア開発では基盤ソフトウェアの開発要員の強化により、OMCS(オープンミッションクリティカルシステム)基盤およびミドルウェアの開発体制を強化する。一方、SIサービス子会社は全国の顧客への対応力強化、サポート効率の向上、ソフト開発子会社は、ITとネットワーク技術の融合、組み込みソフトウェア事業を担当することになる。
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事業体制再編の流れ
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SI/サービス事業の体制強化の方向性
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NECの金杉明信社長
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ソフトウェア事業の成長戦略
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今回のソフト・サービス事業の再編は、今年9月から検討を開始したものだが、中間期連結決算の発表にあわせて、通期見通しで営業利益を700億円下方修正したことを受けて、最終的に意志決定したものであったことを、金杉社長は明かした。
「あれだけの下方修正をしなくてはならないということが、直前まで経営判断がつかなかった。要因分析を行った結果、ソフト事業の最適配分をする必要があると考えた。私自身、ソフト・サービス事業を担当してきた長年の経験があり、早く体制を立て直す必要があると感じた」という。
金杉社長は、中間期連結決算で予想以上の低迷を見せたモバイルターミナル事業の早期回復およびIT・NW(ネットワーク)統合ソリューション事業の成長戦略の加速を命題に掲げる。
「モバイルターミナル事業やネットワーク事業においても、ソフト事業が重要になっている。次世代ネットワーク基盤や新サービス基盤、VoIPやRFIDなどの企業における新たなネットワークニーズなど、すべてにおいて、ソフトの占める重要性が高まっているからだ。サービスという点では、IT・NW統合ソリューション事業の拡大によって、今後3年間で5~10%の成長率を見せるほか、ソフトウェアもネットワークソリューション分野でのソフト開発力の強化、活用で15~20%の成長率を見せると予測できる。ソフト、サービスを伸ばすための成長戦略が必要であり、今回の再編は、激しい市場変化にあわせて、個別最適から、全体最適化を優先する方針転換だといえる」と説明した。
すでに、同社では、ソフト・サービス事業の強化策として、アビームコンサルティングとの資本提携によって、2000人規模のコンサルタントの増強、および中国・アジアを起点としたグローバル展開の足がかりを掴み、中華圏のソリューション要員を700人から1400人へと倍増させる考えを示している。
今回の再編はそれに続くソフト・サービス体制の強化策と位置づけられている。
NECグループとして分散した開発体制を集結し、責任体制を明確化するとともに、課題となっているネットワーク系ソフトの開発力の強化、開発リソースの流動化による最適配置および内製率の向上によるコスト削減効果などを見込む。
また、NECシステムテクノロジーを中心に、Linuxなどの新技術への対応、カーナビなどの車載システム、デジタル家電などの組み込みソフトの開発体制の強化を進める。
完全子会社化による直接効果は30億円。統合、再編による営業利益は約150億円増を見込むという。
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ソフトウェア開発体制強化の狙い
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NECソフトの池原憲二社長は、「上場の経験によって、事業推進力、経営体質が高まっている。この体質をもとに、NEC本体と一緒になって、一段高い収益会社を目指していくことができる」と語り、NECシステムテクノロジーの高橋利彦社長は、「IT基盤開発の強化に力を注いできたが、今回の再編によって、社員は活躍の場が広がり、技術力を発揮できるようになる。新たな事業にも取り組んでいくことができる」と、再編でもたされる効果への期待を語った。
金杉社長は、今後のグループ戦略について、「コア事業を分担する子会社を見た場合、今回のソフト・サービス事業のように、NECのコア事業と重複するような部分が多い企業に関しては全体最適を目指す。一方、保守を担当するNECフィールディングや、半導体事業のNECエレクトロニクスのように、NEC本体がやらずに、NECとのバリューチェーンでコア事業を推進する子会社は現在のような上場の体制をとる」と説明。さらに、「コア事業ではないが、今後の大きな成長が見込めたり、資本政策による資金調達が必要な場合は、子会社の上場という選択もある」とした。
今回のソフト・サービス事業の再編は、NECのグループ戦略の転換にもつながっていることは明らかだといえる。
■ URL
日本電気株式会社
http://www.nec.co.jp/
NECソフト株式会社
http://www.necsoft.co.jp/
NECシステムテクノロジー株式会社
http://www.necst.co.jp/
プレスリリース
http://www.nec.co.jp/press/ja/0412/0202.html
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