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富士通と米Cisco、ルータ・スイッチ分野で提携、IOS-XRを共同開発


左から富士通の伊東専務、黒川社長、シスコシステムズの黒澤社長、米Ciscoのスタインヒルバー副社長の4氏

IOS-XRを搭載しているコアルータ「CRS-1」
 富士通株式会社と米Cisco Systems(以下、Cisco)は12月6日、ルータ・スイッチ分野で戦略的提携を行うと発表した。この提携を受け両社は、ハイエンドルータ製品を今後共同で開発する。

 両社では、Ciscoのハイエンドルータ用OS「IOS-XR」を共同で開発していく。Ciscoがルータ向けOSをほかの通信機器ベンダと共同開発するのは、今回が初めてという。IOS-XRは、Ciscoが6月に発表した新コアルータ「CRS-1」にのみ採用されているOS。従来から同社製品が搭載してきたIOSと異なり、モジュラー型の構造を採用するなど新機軸が多数盛り込まれているが、提供されはじめたばかりということもあり、まだ「若い」(Ciscoの上級副社長兼ルーティングテクノロジーグループジェネラルマネージャ、マイク・ボルピ氏)のが現状だ。

 このためCiscoでは、富士通がメインフレームなどで培ったミッションクリティカル系技術や、ブロードバンド先進国である日本独特のニーズなどを取り込み、よりいっそうの機能強化を図る考え。米国より衛星中継で登場したボルピ氏は「両社が持つ強みをあわせると、1番強いソリューションを提供できるようになる」と述べ、期待を表明していた。

 Ciscoでは今後、新OSの強化によってキャリア向けビジネス分野での売上拡大を目指す。また、シスコシステムズ株式会社の代表取締役社長で、米Ciscoの上級副社長も務める黒澤保樹氏は「ブロードバンドの展開はアジア、特に日本が速い。日本を見てブロードバンドに必要な機能を拡充していけば、将来ほかの国へ導入できる」と述べ、世界的展開に向けての先行投資としての意味合いも大きいとした。

 一方富士通では現在、400億円の規模でIPネットワーク関連事業を行っているが、この規模では独自の大規模投資は難しく、Ciscoとの提携によって、競争力の維持を図る狙いがある。同社の取締役専務、伊東千秋氏は「この提携によって3年後には売り上げを5割伸ばしたい。販路拡大と経費節減によって早期の黒字化も目指す」と述べた。

 今後、このIOS-XR搭載機器については「Fujitsu-Ciscoブランド」として、日本では富士通が通信サービス事業者へ販売を行う。詳細は明らかにされていないが、2005年春より順次、提供が開始される見込み。また富士通では、現在販売しているGeoStream R900シリーズなどのハイエンドルータやミドルレンジのルータを、次期以降の製品では、共同開発製品やCiscoの製品に入れ替えて展開していくとしている。

 もっとも、富士通側では全面的な提携をするつもりはなく、あくまでもルータ・スイッチ分野に限った提携にとどめる考え。「全面的な提携、競合は最近ではありえない。資本提携などは考えておらず、今回の提携以外の分野では、よきライバルとして切磋琢磨(せっさたくま)していく」(伊東氏)。

 なおこの分野では10月に、日立製作所とNECによる合弁会社「アラクサラネットワークス株式会社」が設立されており、国内の他企業へも参加を呼びかけていくとしていたが、富士通側ではこの件に関してはコメントを控えた。また日立製作所、NECとも、合弁会社設立後もCiscoの販売パートナーとして大きなウエイトを占めているが、黒澤氏は今後もそれは変わらないという認識を示していた。



URL
  富士通株式会社
  http://jp.fujitsu.com/
  米Cisco Systems
  http://www.cisco.com/
  シスコシステムズ株式会社
  http://www.cisco.com/jp/
  プレスリリース
  http://pr.fujitsu.com/jp/news/2004/12/6.html

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( 石井 一志 )
2004/12/06 16:42

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