米サンフランシスコにて12月6日から9日まで開催されている「Oracle OpenWorld」において12月8日(米国時間)、米Oracle CEOのラリー・エリソン氏が、「インフォメーションエイジのビジネスとは」をテーマに基調講演を行った。
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米Oracle CEO ラリー・エリソン氏
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Oracle OpenWorldで打ち出されたビジョン“The Information Company”を、「中央で集中管理された一貫性のあるコアの情報で意志決定する。これが情報化時代における正しい企業のあり方」としたエリソン氏。
「企業では何百もの異なるシステムに、データが細分化されていることが大きな問題になっている」とした同氏。例えばグローバル企業では、世界中のデータベースに情報が散らばり、どこにあるかわからないような状況になっている。「こうしたデータのあり方は間違っている。どんなBIツールを利用しても、こうした状況が改善されない限り、経営上の問題を解決できるとは限らない」と語った。
こうした問題は「すべてのアプリケーションを単一のデータベース上で動かすことで解消でき、よりよい情報にアクセスできるようになる」。またサーバーの台数が増えるほど、増加するOSのパッチ管理などのコストも節約できるとした。
Oracle E-Business Suiteは、こうしたビジョンに基づいて開発された製品だ。しかしデータベースをシングルインスタンスに集約することは「インフォメーションを管理することではナンバーワン企業のOracleでさえ5年を要した」ほどで、すでに何らかのシステムが稼動している企業では、現実的に難しい面が多い。
同社のデータハブは、そうした多くの企業に存在している何百何千のデータベースを集約できるソリューションだ。「もしグローバルなクレジットデータベースが存在するなら、クレジットカード発行の際に支払能力のない人や、多額の負債を抱える人にまで与信してしまう危険性はなくなる。車や住宅ローンでも同様だ。5000ドルの時計をクレジットで買うときに、販売員が単一のデータベースにアクセスして、地球上の何十億人の支払能力を数秒で判断できれば理想的といえる」と同氏は例を挙げ、「こうしたグローバルなデータハブは、経済理念そのものを大きく変える」とした。また9.11のテロ事件にも言及し、「犯人はすでに入国管理局の監視リストに載っていた。データハブがあれば事件は起きなかったかもしれない」とした。
このときデータハブは、SiebelやSAP、レガシーシステムのカスタムアプリケーションなどから、リアルタイムに必要な顧客の情報だけを抽出して、支払能力を判断する。つまり単一のグローバルインスタンスを用いずに「情報を必要なユーザーの手に持たせることができ、そのプロセスも自動化できる」ものといえる。
「CRMでは、遅れた情報はロジスティックスで後から把握するため、そこまで情報をデリバリできなかった」とした同氏は「全方位的に状態を見るには、すべてを網羅する必要がある。カスタマーハブは、CRMやERP、マーケティング、サービスなどすべてのシステムとの接続コネクタを持っている。情報は1カ所に保存されるため、全面的に顧客の状態を見極められる」とした。また「企業の意志決定に必要な情報は、EBSとデータハブ、そのどちらも単一のデータベースに格納できる」と述べた。
「情報こそ組織の骨格になるもので、壊れてはいけない」がゆえに、高い可用性も同時に求められる。さらに「これまでなら数百人しかアクセスしなかったデータベースが統合されれば、従業員全員がアクセスするようになる」ため、高い処理能力も要求される。
これに対する答えがグリッドだ。グリッドでは数多くのサーバーを複数連結することで、高い処理能力と可用性を同時に実現し、運用管理も効率化できる。例えばIAサーバーをメインフレームと比べた場合、プロセッサあたりのコストは1/5、処理能力は5~10倍になるとした同氏は「グリッドはメインフレームと比べはるかに高速で、コストパフォーマンスは非常にいい」と語った。
また製品の提供形態について同氏は「ソフトウェアを同時に使われなければならない。これまで日本語版はマルチバイトのテストなどの必要から発売が6カ月遅れていたが、こうしたずれはグローバル企業では大きな問題になる」とし、今後はOracle Databaseについて「テストは上流工程で片づけ、同時に製品を提供していく」と語った。
さらにPeopleSoftの買収について同氏は、「現時点では買収金額で合意がとれていないが、PeopleSoft株主の68.9%が買収を望んでいる。買収が成功すれば、PeopleSoft 9の開発は継続させる。その次のバージョンでは開発チームを統合し、Oracleと合体させたシステムを作ることになる」とし、「PeopleSoftの既存顧客に対しては、過剰ともいえるサポートを徹底させて行うことを考えている」と語った。
■ URL
米Oracle
http://www.oracle.com/
Oracle OpenWorld
http://www.oracle.com/openworld/
( 岩崎 宰守 )
2004/12/09 12:59
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