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「セキュアなIPアプリケーションをエンドトゥエンドで保証」する、ラドウェアの戦略


 企業ネットワークを構築する上で、ユーザー、ベンダ、SIerともに配慮すべきキーポイントとしてよくあげられるのが、アベイラビリティ(可用性)、パフォーマンス、セキュリティだ。たとえば、アベイラビリティを向上させるためには、負荷分散や帯域制御、二重化ほかの技術を用いるが、これら技術を部分的に導入するだけでは将来、限界がやってくるかもしれない。パフォーマンス向上やセキュリティ確保の場合もしかりである。そのために、企業では本社から各拠点まで、キャリアではデータセンターからエンドユーザーまで、エンドトゥエンドでこれらキーポイントを盛り込んだトータルソリューションが必要になってくる。イスラエルのRadware Ltd.(以下、ラドウェア)もこうしたソリューション提供をビジネスの柱に据えたベンダだ。今回は、このほど来日した同社の社長兼CEOであるロイ・ジサペル氏に、そのあたりの戦略を聞いた。


アベイラビリティ、パフォーマンス、セキュリティの3本柱がもたらすソリューション

ラドウェアの社長兼CEO、ロイ・ジサペル氏
 ラドウェアは、企業やキャリアのネットワーク環境でIPアプリケーションを展開する際、可用性、パフォーマンス、セキュリティの3本柱を保証することを目標にしている。それを実現させるための具体的な製品として第1にあげられるのが、3Gbpsというハイスピードにおける侵入防御装置「DefensePro」だ。この製品は、同社の昨今における好調な業績を支える主役であり、アプリケーションレベルにおける攻撃から高速で隔離、防御、回避するとともに、ウイルス、悪質な侵入、DoS攻撃からの防御を可能とする。

 また今年の夏に投入した「LinkProof Branch」はISP回線/VPN用のマルチホーミング用ロードバランサ(負荷分散装置)で、フォールトトレラント(二重化構造などによる耐障害性)などで信頼性の高い分散型アプリケーションをブランチオフィスにもたらす。そして、「Web Server Director」(WSD)は、サーバー向けのアベイラビリティ、パフォーマンス、セキュリティを確保可能なロードバランサである。

 これらのほかにも、大企業向けからブランチオフィス向けまで数々の製品があるが、これらの製品群は、「SynApps」と同社が呼ぶアーキテクチャによって、アドバンスドヘルスモニタリングをはじめ負荷分散、帯域制御、侵入防御、DoSプロテクションなどのサービスを提供し、レイヤ4~7にわたるアプリケーションニーズを満たしてくれる。こうしたことからジサペル氏は「ラドウェアはいま、アベイラビリティ、パフォーマンス、セキュリティを、各拠点から本社、あるいはエンドユーザーからデータセンターまで一環して提供できる唯一のベンダだ」と言い切る。


中小規模ユーザーに向けて新たなソリューションを投入

 これを裏付けるかのように、同社の製品を実際に利用している顧客には、米国のキャリアであるVerizonやヨーロッパのキャリアであるFrance TelecomをはじめPCのGateway、不動産関係のFannieMae、投資信託関係のVanguardなど、有名どころがズラリ顔をならべている。これらユーザー企業はそれぞれ異なる業種であるが、いずれも世界最大級だ。ジサペル氏は「通常、最初の購入規模は小さい。この理由は、ラドウェア提供の技術が多くのユーザーにとって最新だから。そのためほとんどのユーザーは、まずeメール防御のようなテスト的な使い方からはじめる。そして活用していくうちに、セキュリティやパフォーマンス面で評価を得、VoIPなど他アプリケーションにどんどん広がっていく」と、ユーザーサイドで必ずみられる利用法の発展性を強調する。

 ラドウェアでは、さらに同社の優位性を高めるため、今後90日以内に2つの新基軸を投入する予定だ。第1がSSL通信における検査機能の追加である。現状では、SSL通信は安全と考えられているが、実際にはパケットは暗号化されていてもパケット自体が安全か否かはわからない。たとえば悪意のあるものを暗号化してしまった場合、悪意の中身はそのまま送られてしまう。そうした中身を調べるには、一般的には、それをターミネートして平文化した後読むが、ラドウェアでは、ターミネートや平文化なしで、途中で読みとれるようにしており、これを同社では「SSLスニファリング」と呼んでいる。ジサベル氏は、「これが他社と差別化しうる大きな特長」という。

 第2は、「DefensePro」ファミリの拡張である。現在同ファミリには200/1000/3000と3種類あり、それぞれ200Mbps、1Gps、3Gbpsのプロテクションを提供している。今後は低価格ニーズに応えるべく、50Mbpsのプロテクション機能をもたせた安価なDefensePro 50を投入する予定だ。これにより拠点にも侵入防御機能を提供できるほか、小規模系ユーザーでも非常にレベルの高いセキュリティ機能を実現できることになる。


第三者はその技術力をどう評価しているか

 こうして着実な歩みをみせるラドウェア製品の背後にあるのは、やはり技術力であろう。「ラドウェアはレイヤ4~7スイッチ(ポートベース)では米Cisco Systemsに次ぎ17%で第2位」と評価しているアナリストもいるという。

 一方、米Gartnerのベンダ評価である「マジック・クアドラント」でも、同社はWebイネーブルドアプリケーションデリバリというカテゴリにおいて、リーダー格であり、周知の大手ネットワークベンダでさえチャレンジャー格であると位置づけられているそうだ。またエンタープライズセキュリティのマジック・クアドラントでは、どのベンダもリーダー格とはいえないという。それでも同社はチャレンジャー格としての評価を得ているそうだ。

 しかし技術力が評価される一方、市場には「ラドウェア製品は技術レベルは高いが、ユーザーが果たして機能を使いこなせるのか」と懸念する声もあるという。このため、「ConfigwareInsite」という管理ツールを大幅改善し、各種コンフィギュレーションを自動化できるようにした。またこうしたユーザビリティの問題に対処するために、社内でキャンペーンを行ったり、「DefensePro」ではウィザードを用意したりすることを検討している。このウィザードを利用すれば、ユーザーはフラグをチェックするだけでセットアップできる、というわけである。また「エグゼクティブレポート」機能により、どのようなアタックを受けたのかを、自動的に経営層などにWebフォーマットで提供できるようにすることも予定している。


景気低迷どこ吹く風、連続25%成長を持続

 ラドウェアは1997年に設立され、1999年にはNASDAQに株式公開した。2004年の売上げ見込みは約70ミリオンドル(77億円)で昨年比25%増である。3年間Wall Streetの市場期待値を超え、現在約150ミリオンドル(165億円)のキャッシュを保有、季節による変動もなく、無借金経営という確固たる財務基盤を誇る。

 市場全体をみても、2002年から2003年まで約3%ずつの伸び率であるが、同社はこの間、毎年25%ずつというきわめて順調な伸びを記録し続けている。また2003年から2004年にかけては、市場全体の伸び率は7~12%と予測されているが、ラドウェアでは24~25%見込めるという。とくに第3四半期は27%、第4四半期も28~29%見込めると強気だ。この好調な背景についてジサペル氏は、同社のビジネス戦略では「ひたすらミッションクリティカルな領域ににらみをきかせているから」という。この領域であれば「難しい経営状況の中でも、ユーザーの予算削減はあるまい」というわけだ。「競合ベンダは来年も、厳しい1年を迫られることになるだろう」とさらなる自信を示していた。



URL
  Radware Ltd.
  http://www.radware.com/


( 真実井 宣崇 )
2004/12/10 11:25

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