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米Mercuryバーサミアン氏、「ビジネスとITの壁は確実に壊れている」


 現在、企業におけるビジネスプロセスの90%は、なんらかのITシステムによって自動化されているという。「ITがビジネスにおいて極めて重要である」という事実は広く認知されるようになったが、同時にビジネスとITの間にギャップを感じている企業は多い。「投資に見合うだけの結果が得られていない」「何に投資しているのかが明確でない」「そもそもビジネスのニーズにあっていない」など抱える問題はさまざまであるが、ITに対する投資額は決して少なくないこと考えれば、多くの企業がITとビジネスとのギャップを埋めたいと考えるのは当然である。


マーキュリーのBTO対応ソリューション

「ITガバナンスは、ITでおきている問題の“真実のひとかけら”を見つけることができる」と語るバーサミアン氏
 実際に「ビジネスとITのギャップを埋める」といったフレーズは、ここ数年のIT業界の流行語のようになった。多くのITベンダーは、さまざまな方法によってビジネスニーズをITに反映させ、両者の関係を密にする必要があると訴える。今回、取材したマーキュリー・インタラクティブ(以下、マーキュリー)も、そうしたITベンダーのひとつだ。同社の展開するBTO(Business Technology Optimization)戦略は、ビジネスの視点からITをとらえITのビジネス価値を最適化することを目的としている。ITを支えるアプリケーションの「品質管理」「運用管理」を通じて、アプリケーションのライフサイクル全体を「ITガバナンス」によってビジネスの視点で把握することが可能になる。

 インタビューに応じた米Mercury Interactive マーケティング担当バイスプレジデントのスー バーサミアン(Sue Barsamian)氏は、現在米国および日本を含むアジア太平洋地域における、グローバル・マーケティング・ストラテジ、コーポレート・ブランディング、アライアンス・マーケティング、フィールド・マーケティングを統括している。米国をはじめとする多くの地域でBTO戦略を展開するにあたり、業界のトレンドを実際に肌で感じとっている人物だろう。

 「本当にここ1年から2年の変化は劇的で、米国ではビジネスとITの統合は急速に進んでいる。私の知っている日本語でいうなら“津波”といったところだ。ビジネスのバックグラウンドをもったCIOが多く起用され、ビジネスプロセスを素早くITに反映させることの重要性が広く認知されるようになった。すでにCIOの多くはITガバナンスを始めとする多くのテクノロジを知っている。私たちはITガバナンスをまだ啓蒙段階だと考えていたが、最近では“ITガバナンスが何かはわかってるから、どうしたらいいのか教えてくれ”といわれるユーザーが多くなった」と、バーサミアン氏は米国においてITへの関心が急速に変化したことを明らかにした。さらに「日本でも同様の大きな波が来ないはずはない。さまざまな調査結果を見るまでもなく、プロジェクトの多くは何らかの問題を抱えて失敗していることは明らか。これは米国でも日本でも同じように大きな問題だ」と、日本でも同様の変化がおきると明言する。

 ITをビジネスに最適化させるために重要なことは、ITを透過的に把握するということであるが、バーサミアン氏は「私どもは過去何年にもわたって、アプリケーションの品質管理、および運用管理を通じてITを透過的に把握することに努めてきた」と、この分野においてマーキュリーが大きなイニシアティブを持っていることを強調した。その上で「ITはユーザーの視点、ビジネスの視点、テクノロジーの視点がそれぞれ異なっている。しかしマーキュリーのBTO、特にITガバナンスを導入することによって、そのいずれの視点に対しても情報を提供することが可能となる」と述べた。


 ITガバナンス製品は単なるプロジェクト管理ツールではない。要求管理、変更管理、ポートフォリオ管理、ITの優先順位管理など、ビジネスに欠かせない多くの情報を、さまざまな視点でリアルタイムに提供することを目的としている。これまではテクノロジーの視点ですら、その目的によって分断され、他の人が何をやっているかを知らないということも多かったため、なんらかの問題に直面しても解決に時間がかかった。しかしITガバナンスの導入によって、「なんらかの問題が発生しているか」「問題の原因は何か」「問題はどのような影響を与えるか」「どうしたらその問題は解決するか」といった情報を的確に必要なユーザーに対して提供できるようになる。バーサミアン氏はこのことを「問題の“真実のひとかけら”を見つける」と表現する。

 ITガバナンスを導入するにあたり、マーキュリーでは段階的な導入を推奨している。バーサミアン氏は「いきなりすべてのライフサイクルを管理しなければならないわけではなく、大きなプロジェクトから少しずつシステムに載せていく。プロジェクトにかかわっているスタッフには詳細に管理されることを嫌がる人もいるが、いくつかのプロジェクトの成功によって、少しずつその重要性を理解してもらえるはず」と、段階的導入がプロジェクトにかかわるスタッフの認識をあらためていくことになると語る。

 バーサミアン氏は「今、ビジネスとITの壁は確実に壊れている。同じようにテクノロジーとテクノロジーの壁も壊れ、よりビジネスに最適化されていくだろう」と語り、今後急速にビジネスとITの距離が埋まることを示唆している。しかし、やみくもにITガバナンス製品を導入しても、ビジネスとITとのギャップを埋めることはできない。現在の日本の企業の多くはITシステムをSIerに丸投げする形で発注し、ビジネス部門はITのライフサイクルに積極的に関与しないケースが多い。ところがITガバナンスは、ビジネス部門がITに対する要求を明確に指示しなければ、ITをビジネスにあわせて最適化することができないため、ビジネス部門がITに対して怠惰であることを許さない。つまり、ユーザー自身がITに対して積極的な姿勢を持つように変化しなければ、この問題を解決することはできないのである。バーサミアン氏は「米国ではビジネスサイドでもITに関心を持ち、しっかりと勉強している」と述べ、ユーザーの意識変革が重要であることを強調している。



URL
  マーキュリー・インタラクティブ・ジャパン株式会社
  http://www.mercury.com/jp/

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( 北原 静香 )
2004/12/10 17:38

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