米サンフランシスコにて開催された「Oracle OpenWorld」において、最終日となる12月9日(米国時間)、米EMC プレジデント兼CEOのジョー・トゥッチ氏が「オラクル環境における情報ライフサイクル管理」をテーマに基調講演を行った。
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米Oracle プレジデント サフラ・カッツ氏
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米EMC プレジデント兼CEO ジョー・トゥッチ氏
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講演に先立ち、米Oracle社内では開幕講演を行ったチャールズ・フィリップス氏と並ぶプレジデントとして、主に実務面を統括するサフラ・カッツ氏が珍しく壇上に登場し、10年来のパートナーシップを築くEMCのCEOであるトゥッチ氏を紹介した。
EMCはストレージベンダーとしてのイメージが強かったが、近年Documentum、Legatoなどコンテンツ管理ソフトベンダー、さらにVMwareを相次いで買収し、情報ライフサイクル管理(ILM)のポートフォリオを強化、2003年の売上比率ではソフトウェア・サービスが53%を占めるまでに事業内容を拡張している。まずトゥッチ氏は、「Oracle 10gの開発過程では、EMCのストレージでテストされている。両社のアライアンスは実証済みだ」とした。
企業に存在する情報は、「.comバブルまでは年率で100%増加していた」。その後若干勢いは落ちたものの、この8年間での平均は60%増であり、同氏は「2005年には70%程度になるだろう」とした。
一方、IT全体への投資は4%なため比重としては高いものの、これら情報の保管先となるストレージへの投資増加率は年率7%でしかない。こうした状況のもとでは低い予算でより多くのデータを格納する必要がある。トゥッチ氏は「ILMの考え方により、情報の生成から廃棄までをよりよく管理できる」と語った。
EMCの強みを「ストレージ製品の広範囲なポートフォリオにある」とした同氏。5000ドルのローエンドから100万ドルのハイエンドまで、ATA、SATA、SASI、FCといった物理ディスクの選択肢がラインアップされている。MBあたりの単価も、「2000年には1MBあたり25セントだったが、たった4年で2.5セント以下と、1/10にコストが低下している」とし、例えば「レプリケーションシステムなどにはMBあたり低コストなストレージにより情報を管理できる」とした。
そしてバックアップメディアには「現在は約90%がリカバリスピードの遅いテープが利用されているが、今後3年間のうちにより効率を向上できるディスクベースのバックアップが広まる」とした。
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企業におけるデータの増加率
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ローエンドからハイエンドまでをカバーするEMCストレージのラインアップ
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EMCがフォーカスするILMのアーキテクチャ
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適切な情報を適切なドライブの中に格納するILMの考え方は「今後数年で実用的になるだろう」とした。これを実現する技術のひとつが、Documentumより買収した「EMC DatabaseXtender」となる。
DatabaseXtenderは、ドキュメント、画像といった「企業情報の70%以上を占める」非構造化データを、ストレージに格納する際のチェックイン/アウトや世代管理といった機能を提供するソフトウェア。複数のストレージシステムによるレプリケーションやバックアップ、コンテンツ管理を、使いやすいツールで一元管理できる。また「規制への準拠が求められるデータは、低コストのリードオンリーストレージに保存できる」という。
12月8日(米国時間)には、EMC/Oracle 10g Acceleratorも発表された。これは「ファブリックスイッチ内部のインテリジェンスを利用して、ストレージを仮想化する」もので、「異機種混在環境でのデータの移動、プロビジョニングを簡素化できる」という。
EMCが買収したVMwareは、サーバーを仮想化するソフトウェアを提供している。その業績は年率100%以上の伸びとのことで、「すでに市場に広く受け入れられている技術」とした。IA32サーバーの平均的なCPU利用率は約15%だが、これにより稼働率を60~80%に向上できる。また開発テスト用の仮想環境を低コストで容易に構築でき、実稼働する物理環境へも移行することで、迅速な展開も可能になる。
これらの仮想化技術は「2005年のトレンド」になるとした同氏は「メタデータとポリシーをベースに情報を管理するILMに、今後はアプリケーションインテリジェンスも追加する」とした。また「ストレージの仮想化は、2005年はパイロットの段階にとどまるだろうが、2006年に本番稼働に移行していく」との見方を示した。
グリッドについても「今後展開が強化される」とし、2日前のマイケル・デル氏の基調講演で流れたビデオ映像に言及。Oracleを中心として、業界標準に基づいたエンタープライズグリッドのベストプラクティスを推進するEGAでの取り組みを今後も重視していくとした。
このほかのストレージ関連技術としては「iSCSIが離陸する。データセンターのエッジや、中小企業では標準的になっていくだろう」と予測した。
■ URL
米Oracle
http://www.oracle.com/
Oracle OpenWorld
http://www.oracle.com/openworld/
米EMC
http://www.emc.com/
( 岩崎 宰守 )
2004/12/13 18:08
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