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データコアのテクニカルアカウントマネージャー、徳能克也氏
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アダプテックのジャパンセールス フィールドアプリケーション エンジニアの池田義通氏
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本紙でも既報の通り、アダプテックジャパン株式会社(以下、アダプテック)とデータコア・ソフトウェア株式会社(以下、データコア)は、iSCSI分野、低価格ストレージ分野で提携を行い、その一環として、両社の製品を統合したソリューションの提供を開始した。今回はこれに関して両社に取材する機会が得られたので、あらためてお伝えする。
アダプテックはご存じの通り、SCSIインターフェイスカードや中小システム向けのディスクアレイなどを提供しているハードウェア中心のストレージベンダ。データコアは逆に、ハードウェアのソリューションを持たないソフト専門のストレージベンダで、仮想ストレージの管理ソフト「SANsymphony」「SANmelody」を主力製品として販売している。
今回、この両社がこの提携に至ったキーポイントは、安価でありながらも、高い機能・信頼性を持つシステムをエンドユーザーに提供することだ。アダプテックのジャパンセールス フィールドアプリケーション エンジニアの池田義通氏によれば、「顧客から要望はシビアになりつつあり、ストレージ機器ベンダである当社単体では実現できないことが多かった。しかし、データコアのソフトウェアを用いれば、顧客側のニーズにぴったりとはまってくる」という。
一方データコア側では、同社のソフトウェアが持つ機能には強い自信を持っているものの、ソフトウェアベンダである同社は自社ですべてをそろえることはできないため、ハードウェアのストレージ製品を持つベンダと組む必要がある。そこでパートナーを探した結果「信頼性の高い、コスト性に優れた製品を持つアダプテックが浮上した」(データコアのテクニカルアカウントマネージャー、徳能克也氏)のである。
今回の提携はこうした両社の思惑が一致した結果だが、具体的な施策としては、販売パートナーの支援を共同で行っていくという。その最たるものが、動作保証だ。オープンシステムの場合、さまざまな製品を個々に組み合わせて安くシステムを構築することが可能になるが、どうしてもサポート面で不安が出てしまう。そこで、「ベンダ側がテスト済みの組み合わせを提供することで、この負担を軽減する」(アダプテックのマーケティング部マネジャー、若山卓也氏)。
今回のソリューションの場合は、SANmelodyがインストールされたIAサーバーをコントローラとして利用し、この配下に接続されたアダプテック製のストレージサブシステム「SANbloc」や「FS4500」を制御させる仕組みで、この間の動作を両社が保証することになる。提供される2モデルはそれぞれ、SANmelodyが持つスナップショット機能、ストレージレプリケーション機能が核となっているが、これに関してデータコアでは「本来ハイエンドクラスのストレージが備える機能と同等レベルのものだ」(徳能氏)と自信を隠さない。また、アダプテックでも「ストレージの安定性には胸を張れる」(池田氏)という。
このため、両モデルとも500万円から、700万円から、と中堅・中小企業レベルでも導入が行える範囲で最低導入価格が設定されているが、「従来と同等の機能を求めながら価格を削減したい」という“下向き”のエンタープライズユーザーにも、「増えるストレージ容量を効率的に管理できるソリューションを探していた」の“上向き”のユーザーにも、幅広く対応できるとしている。
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今回のソリューションで利用されている「FS4500」
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同じく、「SANblocシリーズ」
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■ 今後の成熟に向け、iSCSI関連でも協力する
この提携でもう一つキーとなっているが、iSCSIの存在だ。SANmelodyではiSCSIのターゲットモード(ディスク側)のドライバを持っており、またアダプテックでもHBAやiSCSI対応のディスクアレイを発売するなど、両社ともiSCSIには取り組んできている。今回のソリューションでもすでにサポートできており、iSCSI SAN経由のOSブートも可能だという。
しかし一般のストレージにおいて、iSCSIは早くから注目されてきたにもかかわらず、普及した、とはいえない状況が続いている。この理由としては、FC(ファイバチャネル)を利用する既存のSANシステムと比べて、信頼性、性能などに不安を抱くユーザーが多いことがある。「ネットワークインターフェイス自体やTCP/IPは枯れているが、iSCSIではそこにSCSIプロトコルが入ってきて、デバイスを直接扱うようになる。このため、本当に大丈夫か、というユーザーは多く、そうして足踏みしている間にFCに対して出遅れてしまった」(池田氏)。またターゲットモード対応デバイスが不足していたり、FC/iSCSI共用デバイスの場合は結局価格が安くならなかったりするため、コスト面での優位性がまだ見えにくいことも挙げられるという。
これに対して財前氏は「当社が行った(トランザクション性能を計測する)SPC-1ベンチマークテストでは、FCにひけを取らないという結果が出ているように、性能面での不安はなくなった」とし、SCSIとTCP/IPを変換する際のオーバーヘッドも、パフォーマンスに大きな影響を与えないところまできているとした。また価格面でも「1トランザクションあたりの費用も、(FCの4ドルに近い)約4.8ドルだ」と述べ、影響は少なくなっているとする。
一方、信頼性の面では「たとえばiSCSIブートの場合では、二重化ができないなど可用性に問題がある」(徳能氏)とし、まだ取り組みが遅れている部分があることは、データコア側でも認めている。しかし、「アダプテックとも協力し、FCで培った技術をiSCSIに注力して、iSCSI関連は今後さらに充実させていく予定。iSCSIを利用したSANブートも注目されている分野だけに、(可用性強化などの)準備はしておく」と述べたほか、若山氏も「(iSCSIに関して)最初はバラ色で話していたが、よりマーケットに近づいて来ているのではないか。当社でも、現在のHBAに変わる第2世代のiSCSI HBAを近々リリースするなど、順次対応を進めていく」とし、両社ともに今後、さらなる対応を進めていくとした。
■ URL
アダプテックジャパン株式会社
http://www.adaptec.co.jp/
データコア・ソフトウェア株式会社
http://japan.datacore.com/
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( 石井 一志 )
2004/12/21 10:05
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