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ビジネスブログ製作会社が語る成功の秘けつとは?


 株式会社ライトアップは、顧客への情報発信やサイトの集客数を目的にブログを利用する「ビジネスブログ」の特徴や活用事例を紹介するセミナーを12月20日に都内で開催した。

 個人の情報発信ツールとして世界で400万人、国内でも30万人以上がサイトを開設しているというブログは、単なる日記だけではなくビジネスやコミュニケーションのサポートツールとしても利用が広まっている。

 例えば、米国では大手新聞社サイトを上回るアクセスを記録するブログサイトがいくつも登場しそこからの収益で生活をしている人がおり、すでにメディアの1つとして認知されている。また変わったところでは、スウェーデンで国会議員全員に市民とのコミュニケーションツールとしてブログ作成環境を配布する法案が提出されているといった事例もある。


Webサイトの運用コスト削減に有効

ライトアップ 代表取締役 白石崇氏
 国内でも企業のWebサイトの一部、または全部にブログを採用する例が増加している。ライトアップ代表取締役の白石崇氏は、企業でブログが採用される理由として、まずサイト運用コストの削減を挙げる。例えばサイト運用をアウトソーシングした場合、更新に1回あたり1~2万円のコストが発生する場合がある。しかしサイト構築にあたり運用費を捻出(ねんしゅつ)できないことから「“更新する必要のないサイトを作ってほしい”という、サイト本来の意義である情報発信と矛盾した依頼まである」という。

 これに対しブログは、基本的には専用フォームに記載したい内容を入力するだけで誰でも簡単に更新ができるため、コストをかけずサイト本来の意義を実現できるということだ。


ブログの特徴「SEO対策、コミュニケーション、RSS」を生かす

ライトアップ ブログ・コミュニティコンサルタント 斎藤哲氏
 また、ブログには検索エンジンにおいて上位に表示されやすいSEO(検索エンジン最適化)対策や、トラックバック・コメントなどによる書き手と読者間のコミュニケーションの活性化・親密化、RSSの活用などの特徴を持つ。

 ブログがSEO対策に効果的とされる理由はいくつもある。まず、フォームに入力した記事がページに反映される際に見出し、小見出し、本文などが分別され自動変換されるため、ページの強調すべきキーワードが検索エンジンに認識され、検索された際に上位に表示されやすい。また、ブログで生成されたぺージは静的なページであるため、PHPなど動的に生成されるページに比べて検索エンジンに認識されやすい。さらに、ブログ内のページはそれぞれ網の目状にリンクされているため検索エンジンがほとんどのページデータを収集してくれる。

 これらにより、一時は検索結果の上位をブログが独占してしまう時期があった。現在、GoogleやYahoo!では、METAタグなどからページがブログだと認識した場合、順位を意図的に低くする対策をとっているようだ。ライトアップが提供するブログサイトは、これらにより順位が落ちないような、さらなる対策を施しているという。

 通常のページにはない機能としてトラックバックやコメントを利用したユーザー(読者)とのコミュニケーション、口コミ効果も期待できる。しかしこれは掲載する内容によってまったく反応がなかったり、反応があったとしても良くも悪くもはたらく可能性がある。例えば社長日記ブログにおいて、明確なコンセプトがなく、毎日の出来事を書き続けても、その会社や社長が世間でよほど注目されてでもいない限り読者は集まらない。

 トラックバックは、特に関心度の高いユーザーの連鎖を生み、SEO対策と相まって集客率の向上につなげることができる一方で、企業の思惑とは違うネガティブな反応を生む可能性もある。しかし、これを嫌って、いわゆる“やらせ”を行い、かえってユーザーの反感を買った事例もあり「ユーザーには思ったことを書かせ、自社のページに誘導させる仕組みと考える」(ブログ・コミュニティコンサルタント 斎藤哲氏)割り切ることも必要だという。


 そしてブログの更新状況をリアルタイムで通知するRSSの利用が活発化すると、さらにブログを利用する意義が強まる。

 RSSはブログの見出しや内容のサマリーなどをXML形式で管理し、サイトと同期して更新される。読者は「RSSリーダー」というソフトウェアから定期的にRSSを取得し、更新状況をほぼリアルタイムで知ることができる。

 現在サイトの更新状況を伝える手段としてメールマガジンが広く利用されているが、スパムの増加による実質読者の低下や収集したメールアドレスのより強固な管理の必要性によるコスト増大など、新たな問題も生まれている。

 これに対しRSSはこれらの問題にまったく影響がなく、メールマガジンよりタイムリーな情報配信が可能なツールとして注目されつつある。また、情報配信の頻度に制約がないことや、内容にミスがみつかってもすぐに修正が可能という優位性もある。

 現在のところRSSリーダーの利用率は約4%(CNET調べ)と低いが、WindowsやMac OSの次期バージョンに搭載されるWebブラウザにRSSリーダー機能が標準搭載される予定のため、これらのリリース後に爆発的に利用が広まるとも予想されている。RSS配信を開始するニュースサイトも徐々に増加しており、「2005年の今ごろには大手新聞社サイトのほとんどが対応する」(白石氏)ともいわれている。


内定辞退を防ぐためにブログを活用する事例も

 このような特徴を持つブログは、ビジネス用途においてどのように利用されているのだろうか。ライトアップにおいては「問い合わせのほとんどが社外向けの“BtoC”用途」(斎藤氏)だという。同社は構築に携わったサイトなどの例として、既存のWebサイトの見た目をほとんど変えず、更新作業を簡素化することを目的とした「CMS(コンテンツマネジメントシステム)ブログ」、企業内個人からの情報発信メディアとしての「社長・広報ブログ」、商品認知や集客を目的とした「アドブログ」、ユーザーの疑問に答えるFAQツールとしての「カスタマーサポートブログ」、運営するECサイトにある商品情報と連携した「ECブログ」などを挙げた。

 また、イントラネット内で社員同士の情報共有ツールとしてのブログ利用も「提案している」(斎藤氏)という。変わった利用例として社員採用の際に内定辞退を防止するため、採用担当者や内定者同士のコミュニケーションツールとしてブログを提供している企業もあるという。

 同社ではビジネスブログを有効活用する秘けつとして、ブログが持つ本質的な機能を理解し、いかに自社のビジネスやWebサイトの運営につなげられるかの企画力にかかっているとしている。

 2004年はコンシューマを中心にブログが大流行しサイトが急増したが、その半分は1~2カ月で更新が途絶えているという。また、各ISPがブログサービスの提供を開始し新規ユーザーの獲得に乗り出しているが、実はすでにブログを利用しているユーザーの乗り換えが多く、ユーザー自体の増加は鈍化しているという話もある。ビジネス用途においてもブログを始めることを目的とするのではなく、あらかじめコンセプトを明確にしビジネス展開における1つのツールとして継続して活用していくべきだろう。



URL
  株式会社ライトアップ
  http://www.writeup.jp/
  ライトアップ社長日記(道玄坂日記)
  http://ir-writeup.jp/shiraishi/
  BUSINESS BLOG
  http://bizblog.jp/

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( 朝夷 剛士 )
2004/12/21 16:02

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