RSS/Atomフィード(以下、フィード)のビジネス活用を推進する企業連合「Feed Business Syndication(FBS)」は8月5日、ネット広告などの関係者らを集めて「第1回フィードビジネス・カンファレンス」を開催した。会合ではFBSに加盟する企業の代表者らがフィードを使ったビジネスの現状と将来性を解説した。
昨今の個人・ビジネスを含めたブログの利用拡大とともに、サイトの更新情報を伝えるフィードへの認知が、比較的ネット経験の長いユーザーを中心に広まっており、Webサイトや雑誌などのメディアでも取り上げられる機会が増えつつある。株式会社ネットエイジグループ代表取締役社長の西川潔氏は「これまでのインターネット技術の中でも、RSSはかなり大きな波になるのではないかと見ている」と話す。しかし、一般ユーザーを含めた視点で見ると、まだまだ普及したとは言い難い。
株式会社テクノラティジャパンの佐藤匡彦氏は、マイクロソフトの次期OS「Windows Vista」に搭載されるInternet Explorer 7(IE7)にRSSリーダーが搭載されることを挙げ、OSの切り替え時期を経て、フィードの利用率や関連ビジネスも拡大し、「あくまで仮説であるが」と前置きしながらも「2009年には280万ユーザーがフィードを利用し、市場は約2000億円程度になるのでは」と予想する。佐藤氏によると、現在約8000万人のインターネットユーザーが月間平均で約15時間インターネットを利用しており、年間約5.6兆円のB2Cコマース消費を作り出しているとのことで、これらの拡大とともに、この中からユーザーがフィードに費やす時間や金銭の増加が見込めるとのことだ。
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株式会社ネットエイジグループ 代表取締役社長 西川潔氏
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株式会社テクノラティジャパン 佐藤匡彦氏
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FBSが仮説として挙げるフィード市場の規模
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■ 3レイヤー構造のフィードビジネス
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株式会社RSS広告社 代表取締役社長 田中弦氏
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3層に分けられるフィードビジネスプレイヤー
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それでは、どんなビジネスが見込めるのか。株式会社RSS広告社代表取締役社長の田中弦氏は、まず現状のフィードビジネスについて、(1)配信レイヤー、(2)付加価値レイヤー、(3)受信レイヤーの3層のプレイヤーが存在すると説明する。配信レイヤーは、例えば企業のWebサイトにおいて新着情報のフィード生成を代行して配信するといったものだ。FBSに加盟するルート・コミュニケーションズの「RSS Suite」は、こうしたサービスを情報の到達度を示す効果測定と合わせてASPで提供している。また、エンドユーザーに対してフィードを配信していないサイトのフィードの生成し提供する「MyRSS」もこのレイヤーに属する。
次の付加価値レイヤーは、配信するフィードを分類し、ユーザーごとにパーソナライズした形で提供したり、内容に即した広告をプラスするといったビジネスだ。ネットエイジの「BLOGNAVI」というサイトは、さまざまなブログの情報を収集し、カテゴライズしたり、ブログ自体だけでなくなくそこで取り上げられている話題をランキングし公開している。ネット上での話題において非常に速報性が高く「検索エンジンが図書館の蔵書検索に例えれば、BLOGNAVIは今日の朝刊」にあたるという。この種のサービスは、言語解析が容易な英語を母国語とする米国などで先行しており、比較的難しい日本では、この技術革新が今後のキーになると見られている。
最後の受信レイヤーは、主にRSSリーダー機能の提供だ。現在、RSSリーダーは専用アプリケーション(あるいはプラグイン)をインストールするか、Web上で提供されているサービスを利用することになっているが、上記のとおりIE7によってWebブラウザへの標準搭載される見込みだ。また、サイボウズがグループウェアに企業内情報共有ツールとして搭載したような動きも徐々に起こっている。
田中氏は「今後、各ベンダーがレイヤーをまたがる製品やサービスを提供し始める可能性も高く、1,2年後にはこうした区分けの意味がなくなるのではないかと思っている」と述べた。
■ フィードがもたらす変化と、今後の課題とは?
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ブランド軸から目的軸に変化するインターネット利用
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サイボウズ株式会社 ネットサービス部ジェネラルマネージャー 小川浩氏
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では、フィードの利用者が増え、ビジネスが活発化すると、どのような変化が起こるのか。佐藤氏はまず、ユーザーのWebサイトの利用形態に変化が起こると予想する。従来、多くのユーザーがヤフーなど一部の人気ポータルサイトを経由するため、こうしたサイトのページビュー(PV)が突出して高かった。しかし、フィードを利用するとこうしたポータルを利用せず、直接目的の情報が掲載されたサイトを閲覧する「ブランド軸から目的軸」への変化が起き、PVが分散するという。「もうすでに分散が起き始めている」(佐藤氏)
また、サイボウズ株式会社 ネットサービス部ジェネラルマネージャーの小川浩氏は、企業内の情報共有手段にも変化が起こるという。これまでの掲示板やメールといった手段に加え、それらのツールでは、やや情報発信がしにくい「電車で小耳にはさんだような、何となく知らせたい、知っておきたい情報の伝達」手段として社内ブログ(イントラブログ)が有効だと説明する。また、社内にRSSリーダー機能を置くことで、社内と社外からの情報収集手段の統合が図れるという。
こうした既存のネット利用法に革新を起こすツールとして期待されるフィードだが、複数のRSSのバージョンやAtomといった異なる形式のメタデータを持つフィードが混在し、また一部で独自拡張をもつフィードを配信するサイトがあるなどの理由で、サービスが持つ機能を利用できずその有用性を阻害することが一部であるという。
このような課題の克服や、配信側とユーザー双方における有用性の認知などが、今後FBSに求められる。
■ URL
Feed Business Syndication
http://www.feedsphere.com/
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( 朝夷 剛士 )
2005/08/05 18:22
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