日本ヒューレット・パッカード株式会社(以下、日本HP)は1月11日、2005年のエンタープライズ向けサーバー・ストレージ事業に関する記者説明会を開催した。
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日本HP 代表取締役社長兼CEO 樋口泰行氏
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日本ヒューレット・パッカード株式会社 代表取締役社長兼CEO 樋口泰行氏は2005年へ向け「高度成長、ITバブルを経て、市場成長が望めない現在の市場環境の中では、不採算を切り捨てて企業体質を改善し、株価を上げることが、USを中心に企業価値を高める戦略となっている」と述べ、「競争の中では規模が非常に重要。コンパックとの合併から2年強が経過したが、同じ規模の企業の合併では多くの内部エネルギーを消費した。やっと攻めに転じられるのが実感」とした。
また2004年第4四半期には、特にサーバー事業が好調に推移し、合併後は5位だったIAサーバーも2位に上昇、さらにPC売上増加率も前年比で60%増で1位となったことを受け、「ようやくオープンを標榜するベンダーとしての下地ができた」と語った。また「某メーカーがPC事業から撤退したことで、棚からぼた餅といえる案件も多く頂いている」と述べ、「今後は顧客第一主義を徹底し、2005年は64ビットと仮想化を強力に推進して、市場で認められる存在になるよう、まい進していく」とした。
■ サーバーのオープン化から、ITの有効活用、運用管理の効率化へ
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日本HP テクノロジーソリューション統括 常務執行役員 石積尚幸氏
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64ビットと仮想化技術を柱に、運用管理の効率化、仮想化によるITの有効活用を実現
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日本HP テクノロジーソリューション統括 常務執行役員 石積尚幸氏は、「2004年に標榜したアダプティブ・エンタープライズは、他のITベンダーと似たコンセプトながら、ハードウェアを使うだけでなく、俊敏に変化へと対応できる企業そのものを指していた」とし、「現実にはこれに成功した企業ほど、オープン環境へと移行している」と語った。そして「次のステップとして、2005年にはITの活用と運用管理にフォーカスしていく」とし、そのために必要な技術としてSOAや仮想化を挙げた。
日本HPの2004年IAサーバー事業は、金額で2位、台数では3位ながら、「特に第4四半期、そして新年は好調な滑り出しとなった」という。またIBMのPC事業売却にも触れ、「IAサーバーはPCと一緒に売れるケースが多い。そこで声をかけてもらうケースが増えている。HPではPC、サーバーともに事業をやめることは考えていない。このためサーバーの数字も今後伸ばせると考えている」とし、出荷台数シェアでトップを目指すとした。
また2004年のHP-UXによるUNIXサーバーのシェアでは、日本HPが40%でトップとなり、金額でも年率17%増となった。「UNIX全体の伸びがフラットにもかかわらず、順調に伸びている」という。またLinuxサーバーについても「大手ベンダーでは初めての」24時間サポートも手がけるなど、充実したサービスの提供を柱とした拡販を図るとした。
またHPの撤退が報じられたItaniumサーバー事業については「今後3年間で3000億円以上の投資を続けていく」とその見方を否定。HPはIPFプラットフォームのチップアーキテクチャのデザインから関わったが、「あくまでもCPUとチップセットの開発技術者が米Intelに移籍しただけ。撤退ではなく計画本来の姿のすみ分けに戻ったととらえてほしい」とした。
そして2005年には「企業では、限られたIT投資のなかで運用管理を効率化し、仮想化で活用度を高めることでTCOを下げ、新戦略案件に予算を回すことが求められている」とし、「64ビットと仮想化技術により、これを実現していく」とした。
■ マルチOS環境の混在した仮想サーバーの一元管理を実現
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日本HP テクノロジーソリューション統括 エンタープライズストレージ・サーバ統括本部長 松本芳武氏
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ソフトウェア・サービスを包含するHP Blade Systemでは、2005年にItaniumサーバーも搭載予定
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日本HPではWindows、Linux、UNIX、Nonstopカーネルによるスケーラブルサーバーと4つのプラットフォームを手がけているが、テクノロジーソリューション統括 エンタープライズストレージ・サーバ統括本部長の松本芳武氏は、具体的なROI改善策としてリソースの有効活用、運用管理の効率化を挙げ、「HPではこれに必要とされるすべての機能を、4つのプラットフォームすべてで提供していく」とした。
まずIAサーバーについては、2004年末までの短期間で出荷した2Wayサーバーの9割がx86-64対応製品に移行したことを挙げ「このスピードは他ベンダーにはないもの」とした。そして2005年にはIntel、AMDともにデュアルコアを搭載するCPUを提供するとの見通しを示しながら、「今春のリリースが予定される64ビット版Windowsのリリース直後にも多くのアプリケーションが利用できる環境を整える活動を、Microsoftをはじめとした主要ISV18社と協力して進めている」とし、ハードウェアだけでなくソフトウェア面も含む製品ポートフォリオ全体で64ビット対応を進めるとした。
またブレードサーバーについては、仮想化技術や運用管理などの幅広い技術を取り込んだ統合ソフトウェア、サービスを含む「BladeSystem」として提供するとした。「HP Systems Insigth Managerでは、VMwareやVirtual Serverなどの仮想サーバー環境を管理できる。ブレードシステムでは管理性が重要で、これが差別化のポイントになると考えている」と語った。
HPでは、これまでのPA-RISCプロセッサ上にHP-UXをOSとしたプロプライエタリな環境での仮想化技術を推し進め、現在ではIPFプラットフォーム上でWindows、Linux、HP-UXの混在が可能な仮想化技術を実現している。同氏は「IBMの仮想化技術は、Windowsは仮想化対象にならないなど、HPが以前に実現したプロプライエタリな技術の上に仮想化を実現しているところで停滞している」とし、HPでは2005年後半に、「マルチOSの統合化、リソース管理の統合機能を搭載していく」とした。
またIntegrityサーバーについては、RISCからItaniumへの移行が2004年第3四半期には3割を占めるなど順調とし、2005年下半期にはこれを過半数にする各種施策を進めていくとした。OS別に見た場合、HP-UXについてはUNIXサーバーのシェアで2005年に50%を目指すとした。またハイエンドWindowsのポジショニングは、サーバー統合や、従来Windowsを用いていなかった領域への適用などにより、UNIXのビジネスに上乗せされる形になっているという。またLinuxについては「国内では2004年は科学技術計算向けがほとんどだった。欧米ではエンタープライズへ広がっており、2005年は間違いなく国内でも拡大していく」とし、Linixサーバーについては売り上げの倍増を目指す。
Nonstopサーバーについては「Itaniumをサポートすることで、大幅な価格性能比の向上を実現する」とし、2005年には30%の成長を目指す。またストレージなどの周辺機器をサポートしていくことで、従来の投資も保護するとした。
ストレージ事業については「HPでは単にストレージを仮想化するだけでなく、さまざまな階層のストレージの製品を幅広く提供できる。また各種管理ソフトやインテグレーションサービス、サーバー技術も提供できることから、ILM実現のためのインフラを提供するために業界で一番よいポジションにあると考えている」と述べた。
仮想化ディスクは管理が難しく、これまで大企業でしか採用が進んでいなかったが、管理性を高めることでミッドレンジの新規需要を拡大し、さらにハイエンドストレージでは、既存ストレージを直接接続したデータ移行の機能により、他社からのリプレース需要を狙っていく」とした。これによりSANストレージの売り上げでもトップを目指していくという。
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ItaniumアーキテクチャでマルチOSを統合した仮想化環境を実現する
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OSを問わず稼動するItaniumサーバーにより、RISCリプレースを推し進める
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ミッドレンジは管理性の向上で、ハイエンドではデータ移行機能でシェア拡大を図る
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■ URL
日本ヒューレット・パッカード株式会社
http://www.hp.com/jp/
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( 岩崎 宰守 )
2005/01/11 20:20
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