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マイクロソフト平野氏「特許は新製品を生み出すドライビングフォースとして無視できない」


 マイクロソフト株式会社は1月13日、米Microsoftが2004年11月に発表した知的財産権の補償対象拡大を中心とした同社のIP(Intellectual Property、知的財産)ポリシーに関して、プレス向けの説明会を開催した。


知的財産への相互アクセスが、技術革新の促進と業界の発展につながる

マイクロソフト株式会社 法務・政策企画統括本部 法務本部長 水越尚子氏

マイクロソフト株式会社 執行役 法務・政策企画統括本部長 平野高志氏
 ソフトウェアの開発では、デザイン・仕様策定の段階で多くの発明が行われるが、Microsoftでは製品に関する知的財産を管理、保護するとともに、他社の知的財産を尊重することを基本原則としている。現在同社では、米国で4000弱の特許を取得しており、2004年7月から2005年6月までの1年間に3000の出願を目指している。これは昨年の約2000件、一昨年の1500件と比べて大きく増加している。

 こうした動きは、それまで研究開発に多額の投資をしてきたMicrosoftが、2003年12月3日の発表により、特許のライセンス方針を大きく転換したことによる。これは「相互に知的財産へのアクセスを行うことで技術革新を促進し、さらに業界の発展につながる」(マイクロソフト株式会社 法務・政策企画統括本部 法務本部長 水越尚子氏)という展望に基づいた戦略だ。

 Microsoftでは、商業上合理的かつ産業界の標準的レベルでのロイヤリティによるプログラムライセンス契約、また他社と特許技術を相互に公開するクロスライセンス契約の2つにより、「自社の持つ知財は基本的に他社に公開する方針」(マイクロソフト株式会社 執行役 法務・政策企画統括本部長 平野高志氏)だという。一方で第三者の保有する知的財産に対して、2004年の1年間にMicrosoftが支払った金額は約1400億円にもなる。しかし同社の特許について「必要と認められれば標準化団体などに無償で提供する場合もあり得る」とのこと。なお学術機関向けとソフトウェア開発におけるSDKについては、これまで通り無償で提供される。

 同社では現在、主なものとしてClearType、XMLスキーマ、Live Communication Server Protocol、FATといった技術についてのライセンスプログラムを提供している。またクロスライセンス契約に関しては、この7カ月で独SAPやSiemens、Cisco、Citrixなどと契約を締結しており、国内ベンダーとの交渉も継続しているとのことだ。


第三者への知財侵害に関しては訴訟費用と損害賠償請求の全額を補償

知的財産権の補償に関する他社との比較。損害賠償請求について上限を設けるベンダーが多い
 Microsoftによる知的財産権の補償は、例えばMicrosoft製品が、仮に第三者の知財を侵害していた場合に、訴訟費用と損害賠償請求について、上限を設けずに全額Microsoftが負担するもの。ここでの知財としては特許、著作権、商標、営業秘密を範囲としており、ボリュームライセンスユーザーには2003年より提供されていた。

 これが2004年11月の発表により、責任の切り分けが困難となる組込向け製品の一部を除き、購入経路に関係なくすべてのエンドユーザーへと補償の対象が拡大された。平野氏は「製品について責任を取るのは当たり前」とし、「これにより顧客を免責し、安全な立場を保証する安心感を提供する」とした。また補償の内容について、他社と比較した場合の違いについても触れた。


相互運用性の向上には一定のルールによる知財の尊重が不可欠

 平野氏は、オープンソースソフトと商用ソフトの差は「基本的には開発やライセンスの仕方の違い」としながら、「これらが相互にコネクトしないで動くことはあり得ない」とした。またソフトウェアには、権利と製品そのものの2つのコンポーネントがあるとし、「特許は新製品を生み出す根源、ドライビングフォースとして無視できない。これは商用ソフトの世界では中心的な考え方として確立されている」との考えを述べた。

 一方オープンソースは、大学での研究を起源としているため、こうした継続的に循環するビジネスモデルを必要とせず、特許やロイヤリティになじみがないとした平野氏は、「オープンソースの開発手法では、知的財産を検討する過程を経ない、あるいは甘いものがある。また他人の知的財産と連携するプロセスが念頭にないビジネスモデルが多い」と述べ、さらに「GPL第7条の背景にある基本思想は、特許と連携することを否定している」とした。

 一方で「オープンソースはある部分については見習うべき考え方でもあり、それがシェアードソースなどのソースコード開示につながっている」とした上で、「一定のルールで知的財産を尊重しないと、相互運用が実現できない。この点から長期的にはオープンソースの開発者にもメリットがあるだろう」とした。



URL
  マイクロソフト株式会社
  http://www.microsoft.com/japan/

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( 岩崎 宰守 )
2005/01/13 18:48

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