IDC Japan株式会社は1月13日、「IDC Predictions 2005 ~2005年のIT投資を予測する~」と題したセミナーを開催し、2005年のIT投資予測について同社アナリストの見解を集めた「Japan Prediction 2005」を発表した。
■ 2004年の国内IT投資は前年比2.2%増の成長、2005年は2.3%増に
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IT Spending リサーチマネージャーの塚本卓郎氏
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リサーチバイスプレジデント シニアITアナリスト 佐伯純一氏
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同社の調査によると、2004年の国内IT投資の総額は前年比2.2%増の11兆242億円で、2000年以来4年ぶりのプラス成長を記録した。この要因について同社IT Spending リサーチマネージャーの塚本卓郎氏は「景気の回復感が定着し、企業において不況時に先延ばしされていたシステムの更新や強化が行われた。2003年まで行われなかったものがシフトしてきたといえる」と分析する。
世界市場に目を向けると成長率は6%、その約半分を占めるという米国でも5%を維持しており、また日本のGDPは米国の約2分の1なのに対しIT投資規模は約4分の1と低水準さが際だっている。しかし、今後世界的にもハードの標準化による価格の下落や、ユーザーがより投資効果を追求する動きが広まることが予想されることから「日本が特別低いわけではなく、ワールドワイドが日本の水準まで下がってくる可能性もある」と同社リサーチバイスプレジデント シニアITアナリストの佐伯純一氏は話す。
同社では2005年から2008年以降も1.6%~2.6%の「穏やかな成長」が続くとしている。このうち2005年は2.3%増の11兆5010億円と予想。2004年10月の発表より0.5%上方修正した。この理由について佐伯氏は「PCの平均価格下落率が予想より鈍化している」ことを挙げた。サービスなど付加価値が含まれたものがユーザーに受け入れられつつあることが要因だ。ただし「まだ流れが変わったとはいえない」と付け加えた。また、塚本氏も「楽観的な見方としては」と前置きした上で「企業の設備投資意欲は継続し、IT投資もプラス成長を維持する」と述べた。
さらに2006年については、システム更新需要が2004年~2005年に集中することで需要の端境期になるとの見方から、いったん成長率が低下し前年比1.6%増にとどまるものの、2007年以降はシステムの標準化が進みIPネットワークの本格的な普及や、IT投資の有効活用への方法が全産業で理解されてくることなどから、2.5%程度の安定した成長を続けるとの見方が示された。
■ ハードウェアとITサービスのシェアが逆転
ハードウェア、ITサービス、ソフトウェアの3つに分けた製品別の国内市場シェアについて同社は、2004年はハードウェアが41.8%、ITサービスが40.7%、ソフトウェアが17.5%であったが、ハードウェアの減少とITサービスの増加というこれまでの傾向が続き、2005年にはハードウェアとITサービスが41.2%で並び、以降は順位が逆転すると予想する。ハードウェア縮小の要因については「官公庁や金融システムなどをはじめとした(低価格な)オープンシステムへの移行の加速」、ITサービスの伸長は「コスト削減によるアウトソーシング系サービスの需要拡大」などが挙げられた。
一方、ワールドワイドにおける2004年のシェアは、ハードウェアが37.8%、ITサービスが41.4%、ソフトウェアが20.7%で、今後もほとんど変わりがなく「安定した形のシェアが続く」(塚本氏)という。日本とワールドワイドの間で特にソフトウェアのシェアの違いが目立つが、これは日本が更新頻度の低いカスタムメイドのソフトウェアを使う傾向が依然強いことが要因に挙げられる。今後パッケージソフトウェアも一定の成長率で市場拡大していくものの、カスタムメイドソフトウェアも「それほど減ってはいかない」(塚本氏)ため、シェアの急激な変化はないという。
産業分野別では、運輸・通信・メディアなどの「社会基盤」、および流通・サービスが3%程度の成長を示し、今後もこれらが高い成長を続けるという。これに対し官公庁・教育・医療などの公共はe-Japan計画の推進などプラス要因はあるものの、財源の縮小や地方自治体のIT担当者不足、オープンシステムへの移行が進むなどのマイナス材料もあり、2%以下の低水準な成長にとどまるという。
■ 製品の連携・融合が進む
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連携・融合が進むIT
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佐伯氏は今後のIT市場動向について、(1)単機能製品が組み合わされての統合化やソリューションとしての提供が進み、(2)ITがビジネスプロセスにより密接に結びつき、目標達成と効率化を同時に実現する自動化を推進していくと予想している。
(1)は携帯電話にさまざまな機能が集約されていくように、これまで企業や事業部間で独立していたシステムが連携・融合することで、新たな価値の創造や業務の効率化・迅速化が求められていくというもの。(2)はITに求められる要求がコスト削減だけでなく、複雑化した業務プロセスを整理・変革するツールとして、競争力強化につなげる役割を担うというものだ。佐伯氏は「これまでも実現に向けた技術や製品が提供されてきたが、今後より具体的な展開が進む」との見方を示した。
■ URL
IDC Japan株式会社
http://www.idcjapan.co.jp/
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( 朝夷 剛士 )
2005/01/14 10:48
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