富士通は、2004年度第3四半期連結決算を発表した。
売上高は前年同期比2.3%減の1兆436億円、営業利益は52.6%減の48億円、経常利益は23億円改善のマイナス142億円の赤字、当期純利益は172億円減少のマイナス95億円の赤字となった。
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富士通 取締役専務 小倉正道氏
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「再編の影響を除いた継続事業ベースではほぼ前年並みの売上高」(富士通・小倉正道取締役専務)としたが、「一部の有力企業などはIT投資意欲が旺盛だが、それを除くと、第3四半期は減速感が強い。国内のIT市場全体としては、3~4%程度の伸びを期待していたが、実際には1~2%程度に留まるのではないか。業種、規模、地域、個別企業のレベルごとに状況はまだら模様だが、全般としては力強さに欠けた状況が続いている」との見通しを示した。
海外では、欧州地区を中心に、アウトソーシング、UNIXサーバー、パソコン、光伝送システム、HDDなどの売り上げが上昇したものの、半導体やPDP、LCDが減少。さらに国内では金融端末装置やサーバーの減少も響いた。
「PDPは前年同期はプラスだったが、今期は約40億円のマイナス。LCDは昨年はなんとかプラスだったが、今期はやはりふた桁台のマイナス。一巡感とともに、長期的視点では踊り場的状況にある」と、プラズマ、液晶事業の苦戦ぶりを浮き彫りにした。しかし、「PDPの完全撤退は考えていない。ただ、ビジネスの構造をどうすべきかを考える段階にある」とした。
営業利益は48億円で、前年同期から53億円減少。海外でのソフトウェア・サービス事業やプラットフォーム事業の利益増があったものの、半導体やPDP、LCDなでの電子部品ビジネスにおける価格低下や生産数量の伸び悩みが影響した。
ソフトウェア・サービス事業は、売上高が前年同期比0.1%減の4359億円、営業利益は66億円増加の142億円となった。
国内の売上高は2.8%減の2992億円、海外は6.5%増の1366億円。分野別では、ソリューション/SIが3.6%減の1750億円、インフラサービスが2.5%増の2609億円となった。
国内では、一部製造業や通信事業者向けの売り上げが増加したものの、IT投資意欲の回復が遅れて苦戦。一方、海外では再編の影響を除くと12.2%の増収を記録。「英国の富士通サービスによる政府系大型アウトソーシング案件が寄与している」(小倉氏)とした。営業利益の拡大にも英国での大型案件が貢献している。
プラットフォーム事業では、売上高が0.4%増の3753億円、営業利益は17億円増加の18億円となった。
国内の売上高は5.6%減の2412億円、海外は13.2%増の1341億円。分野別では、サーバー関連が4.5%減の808億円、モバイル・IPネットワークが14.6%減の398億円、伝送システムが9.5%増の426億円、パソコンおよび携帯電話が0.7%増の1533億円、HDD関連が14.2%増の588億円となった。
「UNIXサーバーは、欧州および北米で販売が好調だったものの、国内ではいまひとつ伸び悩んだ。また、金融端末装置の新紙幣対応特需も一巡したことで、サーバーは減収となった」とした。
また、パソコン事業に関しては、国内では店頭向けの価格競争の激化を受けたものの、海外向けのノートPCが大幅に伸張した。第3四半期が黒字であったことから、第4四半期、通期も黒字と見ており、国内265万台、海外452万台、合計717万台の今年度計画には変更がない。
また、携帯電話は、第3四半期も引き続いて赤字であることを明らかにしたが、「第4四半期には大幅な伸びを見込み、黒字を予定している」とした。だが、通期では赤字になる見通しだ。年間出荷計画は323万台と、前年の337万台から減少すると見ている。
電子デバイス部門は、売上高が11.0%減の1701億円、営業利益は152億円減少し、3億円となった。国内は0.4%増の1008億円、海外は23.6%減の692億円と海外での落ち込みが目立つ。これにはフラッシュメモリの需要減、単価下落の影響のほか、PDPおよびLCDの価格競争の激化が大きく響いている。
一方、同社では今回の決算内容を受け、2004年度の通期業績見通しを下方修正した。
売上高は、当初予想に比べて1000億円減となる4兆8000億円、営業利益は300億円減の1700億円、経常利益は250億円減の950億円、当期純利益は150億円減の550億円とした。
「半導体、ディスプレイの減収影響や、国内販売の伸び悩みを織り込んだ。また、ソフトウェア・サービスビジネスでは、国内ソリューション/SIでのプロジェクトの採算性の悪化および期末集中型だった社会システムの商談が減少するといった影響もあるため、今回の下方修正となった」(小倉氏)とした。
黒川博昭社長は、社長就任以前には、業績の下方修正の連続や計画未達が繰り返されたことを自ら指摘し、「嘘をつかない」ことを明言してきたが、今回の下方修正は、残念ながら黒川社長の公約を撤回するものになったともいえる。
とくに、営業利益2000億円は、最大の目標としていただけに、今回の300億円の下方修正は、数値以上に社内外に大きなインパクトを与えることになるだろう。なお、営業利益300億円の下方修正のうち、ソフトウェア・サービスが150億円、電子デバイスが150億円と見込んでいる。
小倉取締役専務は、「利益重視、約束を守る、ということを打ち出し、2000億円の営業利益目標に対して経営層も従業員も取り組んできた。これからも収益体質を作っていくこと、将来に向けた施策を打っていくことが大切である。300億円の下方修正に関しては、現実を客観的に見て、富士通が置かれた立場、お客様の意思、交渉上うまくいかない案件などを目標のなかに取り込み、きめ細かな目標を立てた結果であり、その点をご理解いただきたい」とした。
営業利益の下方修正は、果たして社内にどんな影響を与えるのか。また、不採算事業の整理や、電子デバイス事業の不振など課題をどう早期に解決するか。ここをどう乗り切るかが富士通にとって正念場だといえる。
■ URL
富士通株式会社
http://jp.fujitsu.com/
2004年度(平成16年度) 第3四半期及び9ヶ月累計連結決算概要
http://pr.fujitsu.com/jp/ir/finance/2004q3/
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( 大河原 克行 )
2005/01/28 20:56
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