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キヤノン販売、中期経営計画を策定

2004年実績は営業利益、経常利益で過去最高を記録

 キヤノン販売株式会社は、2007年度を最終年度とする中期経営計画を発表した。

 同社は、毎年3カ年の中期計画をローリング方式で策定しており、今回の中期計画は、キヤノンが推進している2005年を最終年度とする第2次グローバル優良グループ構想のガイドラインをもとに、グループ会社としての方向性を示したものとなる。

 また、2004年の連結決算で、過去最高の営業利益、経常利益を達成したこと、昨年11月30日付で、社債残高250億円をオフバランス化し、完全無借金経営となったことを受けた成長戦略となっている点も特徴だといえよう。


2007年までの増収増益計画打ち出す

中期事業計画

利益率目標は5.0%
 事業計画では、2007年に連結売上高9200億円、営業利益330億円、経常利益320億円、純利益182億円と、増収増益基調での事業拡大を目指す。

 営業利益、経常利益では2004年に過去最高を記録したが、売上高では、97年の8205億円をわずかに下回った。しかし、「当時はパソコン販売が大きなウエイトを占めていたが、2004年は収益性が低いパソコンの比重を縮小させ、筋肉質な体質に転換した上での実績。97年の実績を超えた中身だと解釈している」(キヤノン販売・村瀬治男社長)としているのに加え、新たに策定した中期計画では、2005年には、8250億円の売上高を目指しており、名実ともに過去最高の実績を目指す考えだ。

 また、2003年に1.9%、2004年に3.0%となった経常利益率を、2010年には5.0%にまで引き上げる計画を掲げ、その布石として、2007年には3.5%を目指すとした。

 収益性の向上に向けては、オフィス向けMFP、LBPにおけるカラーシフトの推進、および保守サービス、カラーカートリッジの売り上げの拡大、パソコン単体や汎用PPC用紙などの低収益性事業の縮小、ITサービス事業の強化・拡充、デジタルフォト関連商品およびホームプリントビジネスの強化、プロ用機材の拡販などを掲げた。

 「汎用PPC用紙などの低収益事業は、これまで以上に積極的に縮小する。一方、中期的な課題としては、ITサービスをいかに強化するかに尽きると考えている。デジタルフォトでは、今後需要の拡大が期待されるデジタル一眼レフカメラに力を注ぎ、潜在市場が大きいホームプリンティングの市場開拓に取り組む」とした。


業務プロセス改革の内容
 一方、業務プロセスの改革も中期計画では重要なポイントだ。

 グループ統合情報システムを2003年5月から導入。これを2005年2月14日からキヤノンシステム&サポート(キヤノンS&S)にも導入を開始し、「グループ展開によって、顧客情報の共有化、グループ統合コールセンターの確立、キヤノンビジネスオンラインによる電子受注率の向上を図りたい」としている。同システムは、2005年10月にはキヤノンビーエム東京に、2006年5月にはキヤノンビーエム神奈川、キヤノンビーエム大阪にも導入する予定。

 また、キヤノンとの連携による部品在庫の削減にも取り組んでおり、6カ所の地域パーツセンターと中央パーツセンターを撤廃。キヤノンのつくばパーツセンターから全国4拠点のパーツエクスプレスセンターと、S&Sの169拠点のストックデポへの部品直送体制を確立。販売店に対しては、パーツセンターと、ストックデポの双方からの供給体制を整えた。

 「ITインフラ投資を加速させ、在庫の一本化やSCMの簡素化にも取り組みたい」と、村瀬社長は語っている。


主要製品分野におけるトップシェアに意欲

 さらに、主要製品分野におけるトップシェア獲得にも意欲を見せる。

 すでに、PPC、LBP、デジタルカメラ、スキャナ、ステッパー、放送テレビレンズに加えて、8年ぶりにトップシェアを獲得したインクジェットプリンタで首位となっているが、「今後はカラーMFP、カラーLBP、デジタルビデオカメラでもトップシェアを狙いたい」とする。

 また、「カメラ、スキャナ、プリンタ、プロジェクターと、インプットからアウトプットまでの一連の機器を揃えているのは当社だけ。これらの分野で一気通貫でトップシェアを狙う」と宣言した。


ITサービス事業の強化が重点課題に

ITサービス事業のビジョンと基本戦略

グループITサービスドメイン

ITサービスの事業計画
 新たに策定した中期経営計画のグループビジョンは、「人の創造力を支援するソリューションプロデューサー、キヤノングループ」。ここには、同社がここ数年進めてきた卸売り体質からの脱皮と、情報サービス企業への脱却、そしてコンサルティング機能の強化を目指す姿勢が込められている。

 それを実現するための重点課題が、やはり、ITサービス事業の拡大であろう。

 村瀬社長は、「ITサービス市場におけるキヤノンブランドの確立」をITサービス事業におけるビジョンとし、この分野への取り組みを最優先課題とする方針を示した。

 基本戦略として、1)ITサービスグループ関連会社のリソース最適化と連携強化により、グループとしてのITサービス総合力を発揮する、2)キヤノン製品を軸とした情報系、基盤系、プロフェッショナルサービスビジネスを展開するとともに、基幹系ビジネスを強化する、3)2007年のITサービス売上高3000億円強をめざし、高付加価値、高収益体質を構築する-の3点をあげる。

 「構築から運用までをサポートするプロフェッショナルサービスを強化し、S&Sの181拠点から24時間365日でサポートできる体制を確立したい。また、コンサルティング力、提案力といったITサービスの上流部分で強みを発揮できるようにしたい。そのためには、コンサルティング要員の育成や、有効なM&Aも必要だと考えている」と今後の方向性を示す。

 M&Aに関しては、「現時点で具体的な案件があるわけではない。だが、すでに、住友金属グループから買収した住友金属ソリューションズは、キヤノンシステムソリューションズとして、基幹系ITサービスビジネスにおいて、キヤノングループの中核企業となっているというM&Aの実績もある。足りない部分を補完できる案件があれば、前向きに検討する」としている。

 ITサービス事業に関しては、2005年に2520億円、2006年に2800億円、2007年には3050億円の売上高を目指している。

 そのほか、同社では、新人事制度の導入により、これまで管理職を対象に導入してきた役割給制度を一般社員にも適用するほか、セールスパーソンからコンサルタントへのスキルアップを目指す人材育成プログラムなどを推進する計画だ。


2005年は過去最高の売上高を目指す

 なお、同社が発表した2004年度連結決算は、売上高が7.7%増の8155億円、営業利益は72.3%増の292億円、経常利益は、72.7%増の234億円、当期純利益は75.6%増の123億円となった。

 セグメント別の売上高は、ビジネスソリューションが2%増の4734億円、コンスーマ機器が9%増の2391億円、産業機器が43%増の1030億円。

 ビジネスソリューションでは、国内向けカラーMFPが伸張し、オフィス向けMFPにおけるカラー化比率は3割を占めたほか、保守サービスの「キヤノンサービスパック」の取り扱い拡大、同社が推進するMEAPに対応するアプリケーションソフトの市場投入効果、キヤノンS&Sの独自開発ソフト「GUARDIAN WALL」などのパッケージ製品の事業拡大などが貢献した。

 また、コンスーマ機器では、16機種におよぶコンパクトデジカメの投入やアテネオリンピックで日本人プロカメラマンが使用したカメラの9割をキヤノン製が占めるなどの一眼レフ分野での高い支持などを背景に、デジカメが台数で17%増、金額で16%増と伸張。インクジェットプリンタもフルモデルチェンジにより、台数で5%増、金額で8%増になったという。

 また、2004年は、全子会社が黒字化を達成したという。

 一方、2005年の計画は、売上高で8250億円、営業利益で250億円、経常利益が245億円、当期純利益が125億円。営業利益は減益の見込みだが、「産業機器部門において、シリコンサイクルの合間が訪れることでの影響がある。産業機器では、2004年の79億円の営業利益が30億円にまで落ち込むと予測している」とした。

 ビジネスソリューションに関しては、売上高で5%増の4975億円、営業利益で4%増の100億円、コンスーマ機器では売上高で5%増の2506億円、営業利益で2%増の120億円と、いずれも増収増益の計画としている。



URL
  キヤノン販売株式会社
  http://canon.jp/


( 大河原 克行 )
2005/01/31 21:21

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