Enterprise Watch
最新ニュース

日本のSANを変える?マクデータのGEDC構想


 ストレージネットワーキングソリューションのベンダとして知られるマクデータ・ジャパン株式会社(以下、マクデータ)は、このほど新製品「Intrepid i10K Director」と、「Eclipse SAN Router2640」の販売開始を明らかにしたが、この発表内容の柱となっているのが、新たに打ち出されたGEDC構想だ。今回はマクデータのアジア・パシフィック/ジャパン カントリーマネージャである石本龍太郎氏、同シニア・コンサルタント・システムエンジニアの山田祐輔氏らに、GEDC構想が出てきたSAN市場の実情と今後のマクデータの戦略などについて聞いた。


孤立したSANアイランドに悩む日本企業

マクデータのアジア・パシフィック/ジャパン カントリーマネージャ 石本龍太郎氏(左)と、シニア・コンサルタント・システムエンジニアの山田祐輔氏(右)
 マクデータの最近の話題は、なんといってもGEDC(Global Enterprise Data Center)構想を前面に打ち出した点だ。これまでのマクデータがめざすSANソリューションとは、多数ポートのダイレクタ(大型のSANスイッチ)をコアに据え、少数ポートのSANスイッチを、これを支えるエッジに使う、というのが基本理念だった。そして現在、マクデータではコアの上にさらにバックボーン層を設け、従来の2階層を3階層に拡張する、新たなGEDC構造を打ち出している。つまり、統一された大規模なSAN、すべてのリソースにアクセスできる環境の必要性を訴えているのだ。

 石本氏はこれに関して、「GEDCが、とくに日本の(企業内の)データセンターにおけるSANのあり方に一石を投ずることになった」と、自負する。というのも、これまでの日本のSANシステムは部門単位での導入が多く、ダイレクタを採用しているのは、銀行や通信会社、大手製造業など極めて限られた世界だからだ。石本氏は「これまで日本でつくられたSANは、意外に“場当たり的”だ。20ポート以下の小さなSANスイッチでSANアイランド、つまり独立した小さなSANを数多く構築してしまっている。それらSANアイランド同士が有機的に結びついていないので、今後の拡張やリダンダンシー(冗長性)の取り方などを考慮すると、ユーザーは扱いにくくなっているはず」と警告する。

 さらに山田氏も「ダイレクタが得意なマクデータがもっと早く登場していたら、このようなことにならなかったのでは」と悔やむ。「SANアイランドの多くは、ストレージに少数ポートのスイッチをつけ、そしてサーバーにつなげるといった構成。完全にネットワークになっているとは言えず、こうした形態は、SANというよりもむしろ“ポート拡張”と呼ぶにふさわしい。これでは将来の拡張に直面したとき、サーバーやストレージを増設できず困ってしまうだろう」という。現実にこうしたケースで悩むユーザーは数多いそうだ。


GECDを御旗にエンドユーザーへ直接伝道する

Intrepid i10K Director
 「マクデータの役割ははっきりしている。GEDC構想をもとに、これから、SANアイランドの孤立化に悩むユーザーの方たちに本当のSANのありかたを伝道して歩くこと」と、石本氏は日本のSAN文化そのものを変えたい意気込みを示す。このための強力な武器がこのたび投入したIntrepid i10K Directorであり、またEclipse SAN Router2640、そしてこれまで提供してきたSphereonスイッチほかの製品群だ。こうした武器を抱えてGEDC構想を定着させていくためには、マクデータ側でも販売活動のありかたを変えねばならないという。それが、同社が歴史上、初めて取り組むエンドユーザーへの直接コールである。

 「かといって、我々が直販を行うという意味では決してない。ビジネスではあくまでパートナーの方たちとの協力関係を堅持する」と、石本氏はこれまで蓄積してきたマーケット・販売戦略のフィロソフィーを崩さない旨、明言する。このために、まずは業界でキーとなるユーザーに会い、「これまでとは異なるベンダの製品を導入したい場合でも、現行システムをいじらず、マクデータのSAN Routerを使えば、スムーズなシステム変更が可能」といったようなはたらきかけをしていく。そして、その後の形態として「多ポートのダイレクタによる統合されたSANのメリットなどを説いていく」といった寸法だ。

 またマクデータでは既存ユーザーに対しても、昨年秋から実際に、伝道活動を重ねている。山田氏は「先日当社のダイレクタのユーザーにお会いした。その方はスイッチを用いたSANの情報が耳に入るにつけ、ダイレクタによるSANのほうがポート単価が高くつくのではないか、など不安を隠せない様子だった。これは、多分に小規模スイッチのユーザーからの情報のみに影響されたものらしい。しかし『ダイレクタは多ポートを持っており、必ずやってくる将来の拡張のことを思えば、少ないポート数のスイッチで構築するよりも、最終的にはコストが安く済む。もちろん、パフォーマンスもはるかによい』、とアドバイスすると納得していただけた」など、上々の成果に目をほそめる。

 石本氏も「あるユーザーは当社のダイレクタとスイッチでSANを構築していたが、どうしても他ベンダの機器を導入しなくてはならないことになった。はてどうしたものかと頭をかかえていたが、SAN Routerを紹介したら一挙に問題が解決した」とやはり、その成果を語る。現在、同社はユーザー先に赴く専門担当者1人に対しSE数名を組ませて対応しているが、年内にはこの体制をさらに拡大させるかまえだ。


オープンにこだわり、顧客にメリットを提供する

 なおSAN Routerは、FCだけでなくIPネットワーク経由でもSANアイランド間の接続をサポートしている。マクデータでは現在、IP-SANでは主にiFCPプロトコルを用いているが、山田氏は「iSCSIには反対なのではなく、これが本格的に台頭してくれば歓迎する。現にSAN Routerではすでに、iSCSIに対応している」という。また、「(もう1つのIP-SANプロトコルである)FCIPは、複数ベンダが対応していて、iFCPはマクデータのみといわれる向きもある。しかし実際、FCIPをサポートする異ベンダ製品は、ファイバチャネルのトンネリング技術を用いる関係上、必ずしもインターオペラビリティがない。逆にiFCPは独立したSAN環境をルーティングさせる技術なので、今後これをサポートするベンダが出てきたとしたら、シームレスに接続できるのではないか」とiFCPを推奨する理由を説明した。

 さらに、「本来SANはオープンでなければならないのに、業界的にはクローズに推移しているように思える。当社では、Intrepid6000シリーズやSphereonシリーズは他社製品と接続可能なモードで出荷している。また、どうしてもそのままでは接続できないときのためにSAN Routerというソリューションを用意した。リソースがバラバラで、管理までバラバラだとユーザーは、たまったものではなかろう。ユーザーの方たちを裏切ってしまったら、我々ベンダの存在価値はない」と山田氏は気をひきしめる。

 それから、ダイレクタばかりを強調していると誤解されがちだが、もちろんマクデータでは、ダイレクタばかりに目を向けているわけではない。石本氏も「『ある日気が付いたら、GEDC戦略の下位層を支えるスイッチ製品が、競合製品でいっぱいだった』では困る。こうした下位層をつかさどるスイッチなどの戦略は、パートナーとの協業ですすめていく」という。さらに今後、2005年末までにSAN Routerをダイレクタ用のモジュールとしてリリースするほか、仮想化スイッチも単独の筐体もしくはモジュールとして投入したいと考えている。また次にリリースするピザボックスタイプのSphereon Switchは、1/2/4/10Gbpsに対応する。そうなると、Intrepid i10kの10Gbps対応を含めて10Gbpsのラインアップが強化され、これで各階層間の接続はますますフレキシブルになりそうだ。



URL
  米McDATA(英語)
  http://www.mcdata.com/

関連記事
  ・ マクデータ、階層型SAN構想を補強する大規模向けスイッチなど(2005/01/20)


( 真実井 宣崇 )
2005/02/03 10:39

Enterprise Watch ホームページ
Copyright (c) 2005 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.