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トレンドマイクロ、2004年第4四半期は過去最高の売上を計上

マイクロソフトのセキュリティ市場進出に対し「準備できている」

2004年度第4四半期の製品別売上高
 トレンドマイクロ株式会社は2月4日、2004年度第4四半期(10月~12月)および通期の連結決算を発表した。

 2004年度第4四半期の売上高は、前年同期比32%増の177億3500万円、営業利益は50%増の78億8000万円、税引前利益は44%増の76億3200万円、当期純利益は31%増の47億3800万円となった(いずれも米国会計基準)。地域別売上高は、日本が68億6700万円で全体の39%を占め、以下ヨーロッパ(29%)、北米(19%)、アジア・オセアニア(10%)と続く。

 同社代表取締役CFOのマヘンドラ・ネギ氏は、「過去最高の売上高と営業利益率を記録した。2005年も大いに期待できる」と評価し、この理由として、法人市場においてマーケットシェアを拡大していること、北米や欧州において成長を続けていることを挙げた。一方、新製品に関して、さらに多くの売上達成が可能だったこと、500人以上の新規従業員を採用したのに対し、売上高が同程度の割合の伸びにとどまったことを課題とした。

 また、2004年度通期の売上高は、前年比29%増の620億4900万円、営業利益は72%増の260億7800万円、税引前利益は72%増の263億2500万円、当期純利益は72%増の158億7500万円となった(いずれも米国会計基準)。

 ネギ氏は2005年度第1四半期の見込みとして、「日本での継続的な成長は見込まれるものの、ほかの地域と比べると伸び率は緩やかになるだろう」とし、さらに「デジタル家電の市場拡大の影響によりコンシューマ製品の成長の鈍化が見込まれる」との考えを示した。


NAC対応ソリューションを中心に企業向けサービスを強化

代表取締役社長兼CEO エバ・チェン氏
 代表取締役社長兼CEOのエバ・チェン氏は、この業績結果を評価しながらも「2004年は準備の年であり、2005年は実行の年となる」と、さらなる成長に自信を示した。その2005年の戦略を、「予測不可能な脅威に対するタイムリーなアップデートと管理サービスの提供」という同社のコアコンピタンスへの集中とし、競合となるシマンテックの買収などによって事業領域を拡大する戦略との違いを強調した。

 チェン氏が2004年を準備の年と位置づけたのは、2004年6月に発表したシスコシステムズとの提携により、2005年度中にNAC(Cisco Network Admission Control)対応ソリューションを本格的に展開する予定による部分が大きい。また、顧客のセグメントごとに最適なソリューションを提供するために組織を再編し、各セグメントのスペシャリストを育成している成果が現れる見込みも含まれている。さらに2005年度中には805名もの新規採用を行う予定だという。

 同社のエンタープライズセグメントへの戦略としてチェン氏は、NAC対応ソリューションのほか、スパイウェア対策ソリューションの新製品「InterScan Web Security Suite」の発売、各種セキュリティ製品の導入・サポートなどのサービス事業を挙げた。また、中小企業に対しては、より容易に扱えるアプライアンス製品の発売や、販売チャネルの拡大する方針を示した。

 さらに、新規事業として、ATMやPOS、モバイル端末など、PCやサーバー以外のデバイスの保護に向けたソリューションを発表する方針だ。執行役員日本代表の大三川彰彦氏は、「日本では、POS端末の80%はWindowsで動作しているほか、駅にある券売機や金融機関にある端末の多くもWindowsが利用されており、世界でも突出している」という。これらはミッションクリティカルな動作が求められるのに対し、PCのようにWindows Updateを実行することができないため、予測不可能な脅威に対しての保護が不可欠ということだ。


執行役員 日本代表 大三川彰彦氏 2005年の製品ロードマップ

マイクロソフトには「サービスの価値」で対抗

セキュリティやOSお市場構造。「OSから離れるほどマイクロソフトの脅威からも離れる」(チェン氏)
 チェン氏は、現在競合しているベンダーよりも、マイクロソフトのセキュリティ市場進出に対し強い意識を示した。米Microsoftは、1月上旬にアンチスパイウェアツールのベータ版と、ウイルス除去ツールを発表し、事実上デスクトップセキュリティ市場に参入したことになる。これに対しチェン氏は「確かに脅威ではあるが、3年前から予測してきたこと。準備はできている」と強調する。

 チェン氏は、マイクロソフトの進出により「特にコンシューマ向け製品の価格が下がるだろう」との見解を示した。同社としては、価格の変動には対応するものの、予測不可能な脅威に対応する管理体制が整っており、サービス価値の違いから顧客はトレンドマイクロを選ぶとしている。「マイクロソフトはアンチウイルスをツールとしているが、これはあくまで基礎的なもの。我々はこの上にあるサービスを価値としてとらえており、それらを提供する方法を熟知している」(チェン氏)。

 また、大三川氏は「マイクロソフトの進出により、まず大きな影響を受けるのはPCにバンドルするアンチウイルス製品。当社ではほとんどバンドル事業は行っていない」と付け加えた。



URL
  トレンドマイクロ株式会社
  http://www.trendmicro.com/jp/

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( 朝夷 剛士 )
2005/02/04 17:26

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