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UMLモデリング機能を統合したサンのJava統合開発環境「JSE7」

~Developers Summit 2005 講演


サン・マイクロシステムズ株式会社 クライアント・ソリューション統括本部 アーキテクト 藤井彰人氏

J2EEと連携するIT技術を統合した新しい開発/実行基盤
 2月3・4日に株式会社翔泳社の主催で開催された開発者向けイベント「Developers Summit 2005」において、サン・マイクロシステムズ株式会社 クライアント・ソリューション統括本部 アーキテクトの藤井彰人氏が、1月19日に発表された統合開発環境「Java Studio Enterprise 7」についての講演を行った。

 藤井氏は、選定されるハードウェアとOSに依存していたそれまでの開発は、「Javaの登場で、抽象化された層により言語依存がなくなり、効率開発の方法論へと変化してきた」と開発を取り巻く現状を述べた。そして「今ではJava VMの上に、いちから開発する人はいない。上層に位置するある意味でのフレームワークを想定して開発することが当たり前になっている」とした。

 こうしたJ2EE開発における次のステップとして、「Webサービスとも融合するLDAPディレクトリなど、各種のIT技術を抽象化してひとつの開発基盤としてとらえる必要が出てきている」と述べた藤井氏は、「例えばSOA Webサービスに基づいてJavaを.NETと融合したときにも、新しい開発基盤の有効性は増してくる」との見方を示した。

 サンでは、OSとベースとなるJavaプラットフォームからなる下層部分についてはオープンソースとし、「その上に新たな実行基盤をパッケージとする」との考え方に基づいて、認証やメッセージング、ポータル、Webサーバー、アプリケーションサーバー、クラスタなどから構成される「Sun Java Enterprise System(JES)」を提供している。実行基盤のライセンスとしては1ユーザーあたり11000円/年と安価なため、「ミドルウェアが高いからという理由はなくなり、システムの提供者は効率よくツールを使うことを考えて開発を行えるようになる」とした。

 藤井氏はJESについて「現在のLinux、Solarisだけでなく、将来的にはWindows、HP-UXへの提供も視野に入れている」とした。


オープンソースのJava統合開発環境「NetBeans」
 サンではオープンソースのJava統合開発環境「NetBeans」、商用のJava統合開発環境「Sun Java Studio」、C、C++、Fortran開発環境「Sun Studio」と、3つの開発環境を提供している。

 藤井氏は、「以前提供していた開発環境「Java Workshop」は遅くて有名で、サンでは以降、開発ツールにあまり注力してこなかった」と述べながら、NetBeansについては「競合となるEclipseと同等かそれ以上の製品」で、「J2SE 5.0にフル対応しているため、EJBやWebサービス開発も可能」とした。

 Sun Java StudioにはStandard、Enterprise、Creatorと3つのEditionがあり、それぞれNetBeans 3.6がベースとなっているため、配置変更や統合、ナビゲーションといったウィンドウ操作に関する機能や、ソースコード全体を参照しやすくする「Code Folding」、コード内にコメントとして書かれたメソッドから、未開発リストを抽出する「Todoタスク」といった機能も備えている。またJSFに対応しており、「データベーステーブルを表示するだけのWebアプリケーションであれば、コードを書く必要はない」とのことだ。

 Sun Java Studio Enterprise 7(JSE7)は、JSEの開発環境として位置づけられ、ポートレットやWebアプリケーションのフレームワークも統合されている。新機能としては、UMLモデリングツール、プロファイリングツール、負荷テストツール、コラボレーションツール、リファクタリング機能などが追加されている。

 藤井氏は、49%の開発者がIDEにUMLツールとの連携を求めており、うち76%、全体では42%のJava開発者が、すでにUMLツールをアプリケーションの設計に利用しているとの米Evan Dataによる調査結果を披露した。JSE7のUMLモデリングツールは、米Embarcaderoの「Describe」を統合したもので、UML 2.0に対応し、クラス図への変更がソースコードと同期するほか、Javaソースコードのリバースエンジニアリングによりクラス図を自動生成する機能も備えている。

 またJSE7には、「開発ツールの中に簡単なプロファイラと負荷テストツールを追加している。開発の早い段階に、サブチーム単位でコンポーネントやアプリケーションメソッドのレベルで、操作を記録した単体テストが行える」とした。このため「Loadrunnerのように大規模負荷テストに使えるものではないが、結合テストの状態で発見されても解消できないボトルネックの問題を解決できる」とした。

 コラボレーションツールは、いわば“開発者用のIM”。コードのボールド表示や、ソースコードの共有などが可能で、主に米国の開発現場のニーズが反映されているという。「通常、米国では個室やパーティションの中で黙々と開発が行われているため、ちょっとしたコミュニケーションがとりにくい。まして米Sunには自席がなく、誰がどこにいるかわからないといった状況もある」とのことで、こうした開発現場で特に有用といえる。


コードとクラス図が同期するUMLモデリングツール IDEにプロファイラを内蔵したことで、開発中の単体テストが容易に行える 開発者用のIMといえるコラボレーションツール

 またJSR-168に準拠したポートレット開発もサポートしており、Portal Serverによるワンタッチデプロイも可能だ。さらにEJBやJava BeansからWebサービスを生成できるウィザードも用意されている。

 JSE7の開発環境でもあるため、開発したWebアプリケーションと、Access ManagerやDirectory Serverを用いたシングルサインオン認証やユーザー権限管理との連携、またPortal Serverによる統合やパーソナライズも可能だ。このほか米Sun社内で利用されているWeb Application Frameworkも付属している。



URL
  Developers Summit 2005
  http://www.seshop.com/event/dev/
  サン・マイクロシステムズ株式会社
  http://jp.sun.com/

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( 岩崎 宰守 )
2005/02/07 14:27

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