株式会社矢野経済研究所(以下、矢野研)は、637企業・団体の情報システム管理者を対象にしたユーザーアンケート調査と、サーバーハードウェアベンダーとLinux OSディストリビュータを対象とする市場調査を、2004年10月から2005年1月にかけて行った。
■ 6割以上がOSS導入に前向き、今後は基幹システムにも
ユーザー企業のうち、情報システムへオープンソースソフトウェア(OSS)を「すでに導入している」のは全体の32%、導入を「検討中」、もしくは「興味がある」との回答をあわせると63.2%となった。OSSへの意識が非常に高いことが裏付けられる結果だ。なかでも官公庁・自治体では、導入率は61.9%、検討中が1.9%、興味があるが17.5%で、あわせると80%以上と高い。
PostgreSQLやMySQLといったOSSのRDBMS導入では、10.2%がすでに利用中だ。検討中は1.9%、興味ありが25.4%。矢野研では、商用RDBMSと競争できるまでに高機能・高性能化しつつあるこれらOSSのRDBMS導入で、高額なライセンスコスト削減を図る企業が増えているとの見方を示している。
OSSのうち、Linux OSの導入率は27.6%、「検討中」と「興味がある」の合計では56.8%で最も高い。LinuxはWebサーバーをはじめとしたフロントエンドでの利用が拡大しているが、基幹系システムへの導入意向については、現在約6割が否定的だ。その理由としては「管理者・技術者の不足(49.3%)」、「既存システムで十分(44.1%)」、「サポートへの不安(39.7%)」が挙げられた。この点について矢野研では、Linuxのハイエンド向けサポート体制の整備、Linuxディストリビュータによる技術者育成メニューの拡充などを理由に、今後の導入拡大が見込まれるとしている。
■ Linuxサーバーは2007年に市場シェア20%超、出荷金額で83億円と予測
サーバー市場でのLinuxについての調査結果では、2004年出荷台数で前年比35.5%増の6万8420台、13.9%のシェアを占める見込みだ。矢野研では上記のサポート、技術者育成の強化に加え、無償サポート期間の終了したWindows NT 4.0からのリプレース需要なども背景として、今後も年間成長率も3割程度を維持し、出荷台数は2006年に10万台超、2007年には14万台を超え、シェアでも20%以上に達すると予測している。
2004年のサーバーベンダー別シェアでは、RISCサーバーやメインフレームにもLinuxを搭載する日本IBMが24.4%でトップ。次いでNEC(21.4%)、富士通(14.6%)、日本HP(14.4%)、デル(13.2%)、日立(9.9%)の順。各社ともにプリインストールモデルの発売や、サポート体制の整備などにより、出荷台数に占めるLinuxの比率が増加している。富士通ではインテルと共同で大規模基幹系サーバー投入を予定するなど、矢野研では今後、基幹系領域へもLinuxが普及すると見込んでいる。
またサーバーOS市場でも、Linux出荷本数は前年比49.9%増の6万3400本、金額では51.1%増の33億4000万円と伸びている。現状ではSolarisをはじめとしたローエンドUNIXからの移行が多いが、今後は基幹系へのハイエンドモデル出荷増などから、2007年には本数で約15万本、金額で83億円の市場規模になると矢野研では予測している。
2004年のLinux OSディストリビュータ別シェアでは、サーバーベンダーへのOEM出荷で強みを持つRed Hat Linuxが52.8%でトップ。以下、MIRACLE LINUXが22.1%、Turbolinuxが13.1%、Novell SUSE LINUXが3.3%で続いている。各社ともサーバーベンダーとのパートナーシップを強める戦略を進めているが、矢野研では、ヨーロッパで高いシェアを誇るSUSEを買収したNovellの成長に期待を示している。
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2004年のLinuxサーバー出荷台数シェア
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サーバー用Linux OS出荷本数別シェア
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2007年までのOS出荷本数と売り上げ金額の予測
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■ URL
株式会社矢野経済研究所
http://www.yano.co.jp/
プレスリリース
http://www.yano.co.jp/press/2005/050210.html
( 岩崎 宰守 )
2005/02/10 16:09
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