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電子申請とセキュリティを訴求-アドビ2005年事業戦略


 アドビシステムズ株式会社は2月17日、米Adobe Systemsが2004年12月21日に発表した2004年度決算と、2005年度の経営方針や製品戦略に関する記者説明会を行った。


アドビシステムズ 代表取締役社長 石井幹氏
 ワールドワイドでの2004年度第4四半期決算は、昨年同期比20%増で、四半期単位では創業以来最高となる4億2950万ドル、さらに2004年通期でみても、昨年比29%増の16億7000万ドルの売上高で、純利益については69%も増加した。

 アドビシステムズ 代表取締役社長 石井幹氏は、この理由として、Photoshop、Illustrator、InDesignといったデザイン・出版分野のクリエイティブプロ向け製品を組み合わせ、2004年度初頭より販売を開始した「Adobe Creative Suite」、そして「Adobe Acrobat」ファミリーの2製品の販売拡大を特に取り上げた。

 また、従来は7割近かった店頭売りパッケージの比率が50%を切り、代わって企業や教育機関、官公庁などへ一括納入されるライセンス販売の比率上昇にも触れ、「部材コストがかからないため、利益率の向上に貢献し、高収益なビジネスモデルを実現している」と述べた。なお日本国内の売上比率については、アジア21%の大半を占めているとした。

 研究開発費の売上に対する比率は減少したものの、「これは売上が予測を超えて伸びたことが主な理由」とし、今後も引き続き売上の20%前後を投資し、「新技術により実現されるソリューションを提供していく」とした。

 2005年度には、18億5000万~19億ドルの売上を目標とするが、2月に期末を迎える2005年第1四半期については、すでに上方修正されていることから、石井氏は通年で目標以上の数字も期待できると示唆した。


販売形態別の売上比率。店頭パッケージが低下し、ライセンス販売が増加 事業別の売上比率。クリエイティブプロ向けが大幅に上昇、PDF関連も着実に増加

アドビシステムズ マーケティング本部長 沢昭彦氏

IDP製品は、デスクトップ向けのAcrobatとサーバー向けのLiveCycleで構成される
 アドビでは、2005年度にも引き続き、クリエイティブプロ、デジタルイメージ&ビデオ、PDFを中心としたエンタープライズの3つのプラットフォームを柱として事業を展開していく。

 フラッグシップの基幹製品を束ねたスイートの投入が成功したクリエイティブプロについては、「ワークフローの改善をキーワードとしていく」(アドビシステムズ マーケティング本部長 沢昭彦氏)とした。Creative Suiteでは、個別製品ごとの互換性の問題を解決したことで、無駄な作業を格段に減らしている。「製品を導入した株式会社トリムによる試算では制作時間で50%、コストで40%の経営効果が出ている」とのことだ。

 Photoshopファミリーを中心とするデジタルイメージでは、デジカメ普及率の高まりと、デジタル一眼レフをはじめとした高度化を背景に、「高機能製品による価値を希求していく」とした。

 デジタルビデオについては、商業映画などでも実績のある特殊効果ツール「After Effects」、HDベースのビデオ編集が可能な「Premiere」といった製品に加え、DVDオーサリングソフト「Encore DVD 1.5」、サウンド編集ツール「Audition 1.5」もラインアップに加え、拡販を図るという。

 そして、企業向けとなるPDFを中心としたAdobe Intelligent Document Platformの製品群については、基幹システムと連携して定型的なPDFを生成する「Adobe LiveCycle」のサーバー製品群と、定型化しにくい業務でのPDFを作成するデスクトップ向けの「Acrobat」ファミリーの双方ともに、「以前はスタティックなものだったPDFだが、情報を追加して戻すコミュニケーションのプラットフォームとして、改めて認識されている」とした。

 サーバー製品を組み合わせてIDPのソリューションを提供している官公庁の事例については、「世界的にみても、高度な利用がされており、住民サービスの向上と効率アップにつながっている」とし、今後も電子申請へのニーズを中心に訴求していくとのこと。また特に国内では、複雑なワークフローを持つ製造・建設業などでも多くの案件があるとした。さらに今後は、近々提供予定の「Adobe LiveCycle Policy Server」を中心としたセキュアな文書管理ソリューションを、金融業などに中心として提案していくという。



URL
  アドビシステムズ株式会社
  http://www.adobe.co.jp/
  プレスリリース(2004会計年度および第4四半期決算)
  http://www.adobe.co.jp/aboutadobe/pressroom/pressreleases/200412/20041221q4.html

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( 岩崎 宰守 )
2005/02/17 15:27

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