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ソフトバンクBB 法人営業部 本部長 安川新一郎氏
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Oracleとの連携分野
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コンピューティングリソースを水や電気のようにオンデマンドで利用でき、使った分だけ課金されるユーティリティ・コンピューティング構想。ほとんどの大手ITベンダーが自社の(時には買収によって手に入れた)ハードウェアやソフトウェアを駆使して目指す中、自社のネットワークインフラを生かして実現に向け取り組んでいるのがソフトバンクだ。ソフトバンクBB株式会社 法人営業部 本部長の安川新一郎氏は2月23日、Oracle 10g Worldの公演で、ソフトバンクによるその取り組みを語った。
ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏が「BBユーティリティ・コンピューティング(BBUC)構想」を発表したのは2003年11月。きっかけは2002年3月に米Oracle CEOのラリー・エリソン宅に招かれ、再会したことがきっかけだったという。かつてエリソン氏がかかげた「ネットワークコンピューティング構想」に孫氏は共感したものの、当時はまだインフラが未熟で、実現には至らなかった。しかし再会時にはYahoo!BBに200万人を超えるユーザーを集め、OracleもOracle 10gにつながる「Enterprise Grid」の実現に向け動き出していた。2人は「やっとこんな時代が来た、2社で何かできないか」と盛り上がったという。
その後Yahoo!BBは拡大を続け、累積ユーザー数は2005年1月に471万人、国内プロバイダー別トラフィック率は24%に達した。また、個人向けIP電話サービス「BBフォン」や、ソフトウェアのオンデマンド提供サービス「BBソフト」、映画などのオンデマンド配信サービス「BBTV」など、ADSLやFTTHの豊富なネットワークインフラを生かした数多くのコンテンツ事業を展開している。
そんなソフトバンクが、コンピューティングリソースのオンデマンド提供実現に向け取り組みを本格化している。2004年3月にOracle 10g Enterprise Gridを基盤とした機能検証をスタート、同年6月にはBBUCサービスプラットフォームプロトタイプの開発に着手した。そして同年12月より株式会社クリーク・アンド・リバーが提供するクリエイター向けポータルサイトで、ASPサービスをフィールドトライアル検証として展開中だ。
ソフトバンクが目指すユーティリティ・コンピューティングは、(1)物理的なリソース枠を超えた仮想化を行い、リソース共有・有効活用を図る「Grid」、(2)サーバー単位やCPU使用率単位でリソースを提供し使用分のみを従量課金する「Resource On Demand」、(3)リソースの需要と供給のバランスを自律的に調整する「Automation」、(4)ハード・ソフト・ネットワークなど必要なリソースを一括して提供できる「Platform Service」の4つが「構成概念」と安川氏は語る。そして料金は「まるで電気のような料金体系」で一括請求するシステムを検討しているという。
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BBUCの構成概念
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電気料金のような課金体系
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クリーク・アンド・リバーのクリエイター向けポータル事業“any”
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BBUCプラットフォームの事業モデル
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しかし、ユーティリティ・コンピューティングを事業として展開するには、まだいくつも課題が残っている。例えば、Webのアクセス集中による急激な需要が高まりや、高レベルのSLAに対し、安定したサービスの提供ができる体制が、特に法人向け事業では求められる。その上で、ユーザーを集め、収益を確保できるよう、料金と設備投資を最適化しなければならない。また、大規模なサービスに拡大する場合、ヘテロジニアスな環境でのハードウェア環境を構築する必要性も出てくる。
同社では、同じユーティリティ・コンピューティング構想を持つベンダーらと協力し、BBUCデータセンターの構想を掲げている。この分野では競合関係が少ない同社は、豊富なネットワークリソースもあってベンダーの協力も得やすく、意外と商用のユーティリティ・コンピューティング実現に近い位置に立っているのかもしれない。
■ URL
ソフトバンク株式会社
http://www.softbank.co.jp/
関連記事:「ユーティリティコンピューティングを目指す」~孫正義ソフトバンク社長(INTERNET Watch)
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/event/2004/02/19/2158.html
( 朝夷 剛士 )
2005/02/25 11:44
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