Enterprise Watch
最新ニュース

マイクロソフト、“正しいライセンス”を確認するプログラムの試験運用を開始


Windows本部 コンシューマWindows製品部 シニアプロダクトマネージャ、菅伸吾氏
 マイクロソフト株式会社は3月15日、違法コピーを取り締まる試みの一環としてワールドワイドで展開されている「Windows Genuine Advantage Program」(以下、WGA)の試験運用を、同日より国内でも開始すると発表した。同プログラムは、Windows XPのライセンスが正規版であるかどうかを確認するもので、ただ確認を求めるだけでなく、正規版のユーザーに対して特典を提供することで、正規版の価値を高め、プロダクトID偽造や違法コピーによる不正規版の流通を抑制する狙いがある。

 WGAは、オンラインツールを用いて、利用しているWindowsが正規版であるかどうかを確認するプログラム。具体的には、パッチやアドオンツールなどをダウンロードする際に、ActiveXによるチェック、プロダクトキーの入力(PCベンダから提供されるプリインストール版(SLP版)のみ)を求め、正規版・不正規版を判定。不正規版と判明した場合はユーザーに対して注意を促す。また将来的には、不正規版ユーザーに対しては、パッチ(一部の重要なものを除く)、アドオンを提供しないようにする。

 ただし日本では、不正規版そのものがほとんどないとマイクロソフト側で認識しているため、不正規版の抑制よりも「ユーザーへ価値を提供することに、より重きを置いている」(Windows製品本部のジェイ・ジェミソン本部長)という。無償提供される特典は、現時点ではスライドショー作成ツール「Photo Story 3 for Windows」、Office OneNote 2003の180日間限定評価版と、4月から追加される、LZH形式に対応した圧縮フォルダ機能(LZH形式へのファイル圧縮機能はない、日本独自)の3種類だけだが、評価期間中も含めて随時追加されていく予定。

 WGA試験運用の対象となるOSは、現段階ではWindows XPのみ。チェックは1度実施されれば、OSのクリーンインストールなどをしない限り、再度行う必要はないという。マイクロソフト側で確認する情報は、OEMプロダクトキー、PCの製造元、プロダクトID、BIOS情報(製造元、バージョン、日付)などで、同社では、ユーザーを特定できるような情報は一切収集しないとしている。

 また適用されるダウンロード方法もダウンロードセンターだけで、Windows Updateや自動更新は対象外であることから、ほとんどのユーザーは影響を受けない上、「セキュリティ関連のパッチはできるだけ単純な方法で提供するべきと考えているので、これらのパッチも対象外」(Windows本部 コンシューマWindows製品部 シニアプロダクトマネージャ、菅伸吾氏)となる。さらに、チェックを受けるかどうかも任意なので、一般ユーザーが利用する機会は少ないと思われる。


日本でのWGAのロードマップ
 ただし、中国など一部地域ではすでにWGAによるライセンス確認が義務化されているように、全世界的には義務化、対象製品拡大の方向にあるようだ。日本でも2005年後半より義務化、Window Updateへの適用、Windows 2000 Professionalへの適用などが予定されているとのことだが、菅氏は「ユーザーに負担を強いるのは本意でない。運用にまずい点があれば見直すし、それでも改善されないようであれば、国内での導入が見送られることもありうる」と述べ、今後の見通しは試験運用の結果次第だとした。

 また根本的な問題として、現状では特典が少なく、ユーザーにとっては負担が増えるだけではないかという指摘に対しても、菅氏は「あくまでもWGAは、日本では正規版ユーザーへの特典供与だと考えていただきたい」との姿勢を再三強調。海外では提供されていない試験運用中のサポートを日本独自で行うとしたほか、「特典も随時追加し、メリットを感じてもらえるようにしていきたい」と述べた。なお現在のロードマップでは、WGAが義務化された後もセキュリティ関連のパッチは対象外となるほか、自動更新も引き続き対象外になる予定である。


アクティべーションポリシー一部変更も、ユーザーへの影響は「なし」

ライセンス形態ごとのアクティべーション方式一覧。通常SLP版では認証を受ける必要はないが、運用法によってはまれに必要になるケースがあるため、電話による認証は例外的として残された
 また今回マイクロソフトでは、Windows XPのアクティベーションポリシーが変更された点に関しても説明を行った。それによると、今回変更が加えられたのは、たとえばNECや日立といったOEM経由で、PCにプリインストールしてユーザーに提供される、SLP版と呼ばれるライセンス形態。SLP版のユーザーはアクティベーションを行う必要がないにもかかわらず、これまではSLP版のプロダクトキーを使ったインターネット経由のアクティベーションが可能だったため、3月1日からは受け付けないようにした。

 これは、SLP版のプロダクトキーをオークションで取引したり、店頭のPCからプロダクトキーが記載されたシールをはがして持ち去ったりするなど、不正利用が存在するため。前述したように、正規のSLP版ユーザーはアクティベーションなしで利用できるので、ユーザーへの影響はないという。

 なお、パッケージ版や、秋葉原などのパーツショップで入手できるOEM版(DSP版)では、これまで通りインターネット経由でのアクティベーションも利用可能。また、Open Businessなどで提供されるボリュームライセンス版はアクティベーション自体が不要な仕組みのため、これらのユーザーにも影響はない。




URL
  マイクロソフト株式会社
  http://www.microsoft.com/japan/
  プレスリリース
  http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=2223
  Windows Genuine Advantage Program
  http://www.microsoft.com/genuine/


( 石井 一志 )
2005/03/15 19:15

Enterprise Watch ホームページ
Copyright (c) 2005 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.