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日本HP、Linuxサポート拡充でハイエンドサーバーのマルチOS対応を強化


日本HPのテクノロジーソリューション事業統括 エンタープライズストレージ・サーバ統括本部 執行役員 統括本部長、松本芳武氏
 日本ヒューレット・パッカード株式会社(以下、日本HP)は4月5日、IPFサーバー「HP Integrity Superdome」(以下、Superdome)でのLinuxシステム構築体制を強化すると発表した。これは、オープンソースソフトであり、特定のベンダの影響力を受けにくいLinuxをエンタープライズ分野でも利用したいというニーズに応えたもの。今後同社では、Linux、Windows、HP-UXの3OSの同分野におけるソリューションやサポート体制を強化し、OSに関係なく、サーバーリソースを最適な形で利用できる統合システムの提供を推進する。

 日本HPのテクノロジーソリューション事業統括 エンタープライズストレージ・サーバ統括本部 執行役員 統括本部長、松本芳武氏は「HP-UXとPA RISC上で実現されている仮想化環境を、業界標準技術を用いたItaniumサーバー上で提供できるようにしていくことが、2005年の当社の重点目標」とする。そしてこれを達成するため、すでにIPFサーバーを用いたミッションクリティカルシステム構築の実績があるHP-UXとWindowsに加え、Linuxに対するサポート体制を充実させていく考えを示した。


レッドハットの新OSを6月からサポート、Linuxへの仮想化技術適用範囲も拡大

日本HPのエンタープライズLinux分野でのサポート体制
 具体的にはまず、SuperdomeにおけるRed Hat Enterprise Linux 4への対応と、同OSの24時間サポートを6月より開始する。またこれまでは、米国のRed Hatに常駐するHP専任スタッフとの連携によるサポートを提供してきたが、4月からは日本のレッドハット内に、日本HP専任のテクニカルスタッフが配置され、「タイムリーなサポートが提供できるようになる」(同氏)。さらに、最大64CPU規模の大規模システムへの「スケールアップ」であっても顧客がスムーズに導入できるよう、プリセールスの段階からHPのエンジニアが検証に参加する「Big Tuxプログラム」なども併せて提供される。今回正式に発表されたのはRed Hatのみだが、SUSE LINUXに関しても6月からサポートを提供できるよう、対応を整えている段階だという。

 また、HP-UX 11i上ですでに提供されている仮想化技術も、Linux向けに新たに提供される。たとえば「HP Global Workload Manager」では、提供するサービスの状況に応じてサーバーのリソースを適宜配分できるようになるほか、サーバーの稼働状況を監視して、異常検出後に迅速なフェイルオーバーを実施できるHAクラスタソフト「HP Serviceguard」のLinux版、アプリケーションやユーザーに対して、あらかじめ設定したセルボード(4CPUが含まれる構成単位)やプロセッサ・グループを割り当てる「nPars(nPartitions)」「pSets(processor sets)」といった物理パーティショニング技術によって、Linux上でもより有効にリソースを活用できるようになるという。

 こうしたミッションクリティカルLinuxを活用するメリットとして松本氏は「ミドルウェア、アプリケーション、そしてハードウェアの各分野で、ベンダによる拘束から離れられること」とする。事実、他社のハイエンドUNIX機をLinuxへリプレースした事例もあると述べた松本氏は、「ベンダフリーということは、(顧客が逃げる可能性があるため)場合によっては痛しかゆしだ」としながらも、業界標準を採用するメリットは大きいと主張。そして「Linuxシステムと一口に言っても、他社の中にはメインフレーム上やRISCのシステム上で構築しようとするところも存在する。当社の製品は業界標準に基づいているし、スケールアップ能力も十分ある」と述べ、自社の優位性を強調した。


メインフレームとオープンシステムのメリットを兼ね備えた、新統合基盤へ

Superdome上で、Itanium 2とPA-8800 RISCプロセッサの混在が可能になる
 一方で同社では、Superdome上におけるWindowsとHP-UXに関する取り組みも強化する。Windows向けの施策としては、マイクロソフトの技術スタッフが常駐している日本HPの「ジョイント・ミッションクリティカル・サポートセンター」に、専用のSuperdome環境を導入し、サポート品質の向上を図る。またHP-UXではすでに提供されている従量課金サービスのWindowsでの導入、Superdome上でのSQL Server 2005事前検証などの取り組みを通じて、エンタープライズ分野でのさらなる浸透を目指す。

 HP-UX向けには、Superdome上でのItanium 2とPA-8800 RISCプロセッサの混在を新たにサポートする。これには、UNIXサーバー「HP9000 Superdome」ユーザーのIPF環境へのマイグレーション難易度を下げるとともに、分散システムの統合の需要を促進する狙いがある。また松本氏は「10年サポートをコミットしているHP-UXとあわせて、ハードウェア分野でも日本HPは投資保護に力を注いでいる」点も強調していた。

 なお、こうした3OSによるミッションクリティカル分野での取り組みを進めている日本HPだが、残念ながら論理パーティショニングに対応しているのはHP-UXだけで、マルチOS環境を丸ごと仮想化することは、現時点ではできない。しかし日本HPでは2005年後半にも、プロセッサリソースを5%単位で最適化し、リソースの使用率を向上させる「Integrity Virtual Machine」技術などによって、異種OS間の仮想化にも対応する予定。日本HPではこうした取り組みにより、Superdomeを、メインフレームとオープンシステムのメリットを兼ね備えた「いいとこ取りの統合基盤」(松本氏)として位置付け、展開を進めていく意向だ。



URL
  日本ヒューレット・パッカード株式会社
  http://www.hp.com/jp/
  ニュースリリース
  http://www1.jpn.hp.com/info/newsroom/pr/fy2005/fy05-074.html

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( 石井 一志 )
2005/04/05 18:05

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