通信サービスの共通API(Application Programming Interface)を規定するThe Parlay Group(以下、パーレイグループ)に、より多くの日本企業からの参加を募るため、さきごろプレジデントのジグマント・ロジンスキー氏とマーケティング上級委員のジェームス・エイケン氏が来日した。パーレイグループとはどのような組織なのか、通信サービスの共通APIはなぜ必要なのか、今後の展望などを両氏に聞いた。
■ テレコム業界の課題にオープンスタンダードで応えるパーレイグループ
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プレジデントのジグマント・ロジンスキー氏(左)とマーケティング上級委員のジェームス・エイケン氏(右)
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パーレイグループ。この組織名には、まだそれほどのなじみがないかもしれない。しかし、非営利のマルチベンダコンソーシアムであるこの組織が目指すところは、テレコムとITコミュニティを結びつけ、オープンスタンダードなAPIにより新サービスの作成を可能にすることにある、ということから、日本でも最近関心を示す企業が増えつつある、という。
パーレイグループは、もともと英British Telecomをはじめ米Microsoft、加Nortel Networks、独Siemensそして米Ulticom(旧DGM&S Telecom)などの企業が集結することによって結成されたが、1999年5月には米AT&T、仏Cegetel、米Cisco Systems、米IBM、米Lucent Technologiesなども加わり75社にまで膨らんだ。日本でもこれまでに、NTT、富士通、マクニカネットワークスなどが参加している。
「テレコム業界のすべての事業者たちがいま、新しい収益の確保をどうするか、これを生み出すための新サービスと迅速な提供をどうするかを共通課題として抱えている。このためのキーポイントがオープンスタンダードなAPI」と、ロジンスキー氏は、パーレイグループの目標を強調する。
■ 特定の技術に依存しない“オープンスタンダード”なAPI開発の狙い
パーレイグループが規定するオープンスタンダードなAPIは、複数ネットワークプラットフォーム環境で、特定の技術によらずアプリケーションの開発を行うというものだ。簡単に言うと、パーレイグループのAPIでは、アプリケーションと通信ネットワークのいわば“ゲートウェイ”を用意することで、ネットワークプラットフォームに依存しないアプリケーション開発が可能になるという。
このAPIには、「Parlay/OSA(Open Service Access、Architecture)」と「Parlay-X Web Services」があるが、前者はCORBA(C/C++)とJava用のライブラリで、たとえばプリペイドアプリケーションの開発などに利用される。また後者はWebサービス環境での使用を目的としたライブラリセットで、こちらはWebページから電話をかける際の「コールミーボタン」の開発などに利用できる。
ロジンスキー氏は「ParlayのAPIは標準である。したがってこのAPIによって開発されたアプリケーションであれば、ネットワークが2Gから3Gに変わろうとも、あるいは固定網、移動網などを問わず利用可能となる。このようにさまざまなネットワーク間での移植が可能な“アプリケーションポータビリティ”が保証されているので、オペレータは、コスト削減を可能にするなど、大きなメリットを得られるはず」という。エイケン氏はまた「開発ツールとして、JavaやWebサービスなどのIT技術でアプリケーション開発ができることも重要。これによりオペレータは、サービスやアプリケーション開発の迅速化をはかれるし、IT開発コミュニティ側からもアプリケーションを取得できる」とアピールする。
例としてロジンスキー氏は、米Sprintの例を挙げて説明した。Sprintは、固定網、移動網、IP網の各ネットワークを持つ巨大キャリアだが、同社ではParlay-XのWebサービスインターフェイスを、Webサイト上で公開しているという。「これは、ソフト開発者がSprintのネットワークにアクセスするため。こうしたインターフェイスで開発されたアプリケーションは、ネットワークの違いを意識せずに利用できるため、(キャリア側、利用者側の)双方にメリットがある」(同氏)。
■ パーレイのAPIはどのように採用されているか
これまでにParlay/OSAのデプロイメントおよびトライアルは着実に増え続けており、2003年以降は年率44%増の勢いである、という。自社ネットワークへのParlay/OSA APIデプロイメントを公にしているオペレータは、先に触れた米Sprint以外にも、伊Telecom ItaliaやBritsh Telecom、韓Korea Telecomなど、これまでに20社あり、トライアル段階のオペレータや、状況を非公開のところも含めると、累計では70社を超えたという。
さらに、Parlay/OSAを実装した製品も2003年の100製品以上から増加が顕著になり、2005年時点では250製品にまで達している。その内訳をみると、Parlay/OSAアプリケーションが全体の40%を以上を占め、100製品以上である。それ以外には、Parlay/OSAのアプライアンス製品やアプリケーションサーバー、開発環境などがラインアップされているほか、Parlay-Xプラットフォームの製品も10製品以上提供されてきた。
こうした流れを受けロジンスキー氏は「今後、Parlay/OSAはテレコム業界とITを結びつけて1つのバリューチェーン化するための最適なオープンスタンダードであること、またParlay-X Web Servicesは、通信ネットワーク外の開発者やパートナーに公開されたアプリケーションインターフェイスであること、を基軸に業界への働きかけをより強化していく」と意欲をみせる。
その一環としてパーレイグループでは、取組み内容等を業界のより多くにアピールすべく、たとえばICIN(International Conference on Intelligence in service delivery Networks)をはじめFutureCom、Communic Asiaなどのイベントに、積極的に参加するようにしている。日本でもイベント講演をしているというが、特に、2005年5月には大阪でParlayミーティングを開催する予定だ。ここでは、ParlayのAPIでアプリケーション開発したベンダたちのショーケースが行われたり、NTTを含めこの技術を使ったオペレータたちの基調講演も予定されている。また仕様の作成方法に関してのビジネス/テクニカルなワーキンググループも行われる予定で、精力的なミーティングが展開されるはずだ。さらに、ParlayのAPI使用法についてもっと学べるよう、日本語によるトレーニングセッションも用意されている。
いまのところ、日本ではトライアルはあるものの、実際に市場に出回っている製品はないので、今後の取組みの中で、ベンダに積極的な参加をはたらきかけるかまえだ。「いずれにしても2005年は、ワールドワイドでパーレイグループのオープンスタンダードなAPIが本格的に立ち上がる年になりそう」とエイケン氏は、大きな自信をみせている。
■ URL
パーレイグループ
http://www.parlay.org/
( 真実井 宣崇 )
2005/04/07 10:39
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