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富士通、日米間をつないだ2000ノード超のシミュレーショングリッドを運用


今回発表されたグリッドのイメージ

富士通研究所のITコア研究所、門岡良昌主管研究員
 株式会社富士通研究所と米Fujitsu Laboratories of America, Inc.は4月8日、グリッドによる大規模研究開発環境を構築し、運用を開始すると発表した。これは日米の研究拠点で稼働しているPCのCPUパワーを有効活用しようとする試みで、全体では2000ノード超の規模で運用される。

 富士通ではかねてからグリッド技術に着目しており、富士通の研究部門である富士通研究所では、データグリッドや、共同研究環境を構築するコラボレーショングリッドなど、さまざまなグリッドに関する研究開発を行ってきた。それらの中でも、余剰のCPUパワーを有効に活用して計算処理を実行させるコンピューティンググリッド分野においては、富士通はグリッドミドルウェア「CyberGRIP」を有しており、その有用性を証明するために、富士通と富士通研究所の社内にシミュレーショングリッド環境を構築し、積極的に活用してきたという。

 富士通研究所のITコア研究所 主幹研究員で、関西大学の特別任用教授でもある門岡良昌氏によれば、現在までにこのグリッドにおいて、基幹IAサーバー「PRIMEQUEST」用LSIのテストパターン検証、映像処理アルゴリズムの最適化、移動通信システムの設計シミュレーションといった用途で成果を残してきており、たとえば「映像処理アルゴリズムの処理では、ジョブのターンアラウンドタイムを1/6に、作業時間を1/4にできた」(門岡氏)という。

 もちろん、こうした計算を実行したコンピュータの中には大規模なシステムも含まれているが、一般の事務用Windows PCも組み込まれており、現在、富士通社内では700ノード程度のグリッドシステムが構築されている状況だ。今回はこれをグローバルに拡大し、太平洋をまたがって運用されるシステムへと発展させる。

 具体的には、現在富士通研究所でグリッド環境向けに運用されている230ノードを、1500ノートへ増強。米国側で新たに参加する54ノードとあわせ、現在の3倍の2000ノード超へと拡張する。今回のグローバル化にあたっては、ネットワークへかかる負荷の軽減と、計算機資源の効率的な利用ができるかどうかが課題となっていたが、それぞれ、「キャッシュの有効活用で解決した。また(後者は)ジョブ実行時間に応じて、最適な計算割付を行って対応する」(門岡氏)とのこと。

 なお、現在実現しているコンピューティンググリッドはあくまでも計算能力の分散であり、一般業務アプリケーションにすぐ適用できるわけではない。しかし富士通側でも、一般業務におけるグリッドのニーズが強いという点は認識しており、今後も、グリッドの適用範囲拡大に向けて、いっそう努力していくとしている。



URL
  株式会社富士通研究所
  http://www.labs.fujitsu.com/jp/
  プレスリリース
  http://pr.fujitsu.com/jp/news/2005/04/8.html


( 石井 一志 )
2005/04/08 19:15

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